ガールズトーク

夜遅くまでノーラと話し込んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。


「ウルランタだよ。開けて…」

ドアに近い位置にいたノーラが扉を開けると、ウルランタが弱弱しい足取りで部屋の中に入ってくる。

「あれ、元気ない?」

「うん。フラれたぁ……」


ウルランタは私の隣に腰掛けて、ぼそぼそと話し始めた。

「今度こそ運命のひとだと思ったんだけど…」

「いつも言ってるじゃんそれ。」

ノーラはイスをベッドに近づけ、背もたれに顔を載せてウルランタの話を聞いている。

「ウルの里の話しても引かなかったんだよ?」

「そんな男いるんだ!?なんで振られたの?!」

「ベロチューしたら引かれた……」

ベロチューってなんだろう。話を聞いてる感を出すためにとりあえず顔だけはウルランタの方を向けておく。

「初キスでいきなり舌入れたら大体の人は引くと思うよ…」

舌…!?確かにそれはびっくりする。

「今までの人は2人きりの時にしたらノってきてくれたもん。ちゃんとひとけがないか確認したけど、道の真ん中でやったのがマズかったのかなぁ?」

「なんでそんなことしてるのさ…乗ってくる男の方がどうかと思う。」

「だって、キスがうまいってことはあっちも上手だよね?初めては経験豊富な人にリードしてもらいたいの。」

ノーラが手のひらをこちらに向けた。

「待って、何の話?」

「子作りの話。ウルは里に戻ったら子供を授かるまでしないといけないから。上手な人がいいの。」

「……えーと、ウルラは経験は無いけど、その…大人のキスだけしてるってこと?」

舌を入れるのが大人のキス…?

「うん。キスで確かめてるの。初めての時って痛いんでしょ。そんな思いするのは婿様とするときだけがいい。」

「変わった貞操観念ね……や、でもアリといえばアリなのかしら……」

ノーラはわけがわからないという顔をしている。

私は別の部分に驚いていた。初めての時って痛いの……?!

あの魔装具の輪…あの太さが身体の中に入るとしたら確かに痛そう。それでルーカスはあんなに気遣ってくれてたの…?


「今までの人は、ウルとのベロチューでその気になっても『一緒に里に来てくれる?』って言ったらいなくなっちゃった。」

「あんた小悪魔ね……」

「ドミニクは里の話にも興味を持ってくれてたの。でもベロ入れたらびっくりしてて、『自分には経験がないので』って振られちゃった。」

「そのドミニクってのが振られた相手?誠実でいい男なのでは?」

「初めてじゃなくても下手な人とすると痛いんでしょ。ウルは上手なひとがいい。」

「うまいとかヘタとかより、相手を思いやれるかどうかだと思うけど…」

「そーなの?!」

「迫られても何もしない自制心がある男の方が結婚相手としては向いてると思うわ。」

「うぅ~。もう遅いよぉ…」

自制心……。ルークはどっちなんだろう。

「あの…こっちがしてもいいって言ってるのに何もしないのって、誠実だからなんですか?女として見られていない可能性は?」

「え?!リリィ、何!?彼氏いたの!?」

「ちが…!か、彼氏では……私が一方的に好きなだけで……」

「おおお…リリィちゃん、まっか。かわいい。」

「こら!からかわないの。で、リリィ。詳しく聞かせてよ?」


好きな人とそういう雰囲気になったけど、泣いてしまったせいで中断した…とノーラたちに話してしまった。

「素敵な彼氏じゃな~い。リリィが大事だから、まだ早いと思ってやめたんでしょ。愛されてるのね~~♡」

ノーラがうっとりしている。ぼかして話したせいで彼氏だと勘違いされてしまった。

一番気になるのはルークは私をどう思ってるかだから、彼氏だというのを否定した方がいいんだけど、恋人でもないのになぜそんなことになったのかを説明したら誰のことを言ってるのかバレちゃうよね……。

「大事とは言ってたんですけど、そういう関係ではないというか…。あ、あの…恥ずかしいので、他のメンバーには内緒にしてもらえますか……」

「おけおけ♡」

ルーカスの耳に入ったら勝手に彼氏扱いしている危ない女認定されてしまう。

「そのあと、やっぱりしようかという流れになって、私が…し…、してもいいと言ったらキスされたんですが、」

「べろちゅう?」

「普通のです!!……どういう意味のキスなんでしょうか?」

そういえば普通のキスってなんだろう?あれが初めてだったから普通なのかどうかわからない。とりあえず舌は入れられてなかったからべろちゅうではないと思うけど。

「ん?ん?それで、そのあと…したの?」

「ちょっと色々あって何もしてないです……」

「え!?リリィみたいな子とキスしておいて何もしなかったの?!」

「すごい精神力。ウルなら無理。」

「やー、拒否されるのって傷つくって聞くし、慎重になってるのかも…?」

うーん、やっぱりぼかして話すと肝心な部分が伝わらない。

ルーカスが脱出を試みてキスしてきた可能性もなくはない。あれがどういう意図だったのかが知りたいけど、詳細を説明しないと恋愛相談にならないな……。


でも、ずっと心に秘めてきた感情だから、外に出すのが怖い。

「ごめんなさい、今はまだちょっと恥ずかしくて……話せないことの方が多いんです。またいつか相談に乗ってもらえますか……?」

「うん、うん♡いつでも相談に乗るからね♡」

「リリィちゃんいいな。しあわせそう。ウルもがんばってみる。」



このあと、明け方まで恋の話で盛り上がった。私はほとんど聞く専門だったけど。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る