木箱の中身
さっそくふたりで部屋の調査を開始したけど、離れすぎて引力が発生し転びそうになった。
「暗くて危ないし俺の腕掴んでてもいいけど…」
外套は私が使ってるのでもうルーカスに直接触れるしかない。この格好、腕を組んでるみたいでドキドキしてしまう。部屋が暗くて良かった……
最初は燭台があったテーブルの周囲を調べてみた。
まるい形のテーブルで脚は1本。ダイニングチェアも座面がまるくて、脚が4本、アーチ状の背もたれがついている。どちらも板の側面に同じような模様が彫られている。ダイニングテーブルとチェアのセットなのかな?雰囲気からして外国製の家具かもしれない。
ルークがしゃがんでテーブルの下も確認していたけど、何もなかったと言っていた。また腕を組ま…持たせてもらう。
部屋の隅に何かあるのが見えたのでそちらに行ってみる。大きめの
近づいてよく見ると布製の寝具すべてに細かい模様が刺繍されていた。ベッドの木の部分にも同じような模様が彫ってある。ダイニングテーブルの模様と雰囲気が同じなので、この部屋にあるのは一式の家具なのかもしれないなと思った。
ヘッドボード部分に物が置けるようになっていて、右のほうに小さな木箱が置いてあった。
「これ、後で中身を見てみましょう。とりあえず私が持っておきますね。」
ルークはベッド脇のナイトテーブルのひきだしを開けた。
「こっちにも似たような箱がある」
ふた部分の彫刻が同じだけど、倍くらいの大きさがある。
小さい方は手のひらサイズで、大きい方は両手で持つとちょうどいいくらい。
大きい方の箱を下にして重ねて持った。
ベッドの足側の方の床にくずかごが置いてあったけど中身は空で、その隣には革張りのソファーとローテーブルがあり、下向きに置かれたグラスが2つと、茶菓子を載せるようなかわいい小皿がおいてあった。飲み物やお菓子の類は見つからない。
ひとまず、ここまでに見つけた小物をまとめてダイニングテーブルに置いておくことにした。
「ん…?」
調査を続けるべくダイニングテーブルから離れようとしたとき、ルークが何かに気付いて燭台を天井に向けた。
「あっ……!天井にも照明がありますね。」
そのあと壁際に沿って歩いてみたけれど、スイッチらしきものは見当たらない。壁紙にも家具と同じような模様が入っていて、雰囲気が統一されていると感じた。
「もしかしたらあれも魔法で灯すタイプの照明かもしれません……もうちょっと近くで見られたらわかるのですが。」
「肩車するか?」
「エッ!?いや、いいです、他の手がかり探しましょう!さっき通り過ぎた衝立のとこ見てみましょうよ!」
スイッチ探しを優先して後回しにしていた、衝立のあるスペースまでルークを引っ張ってきた。
「ミストフラワーですね。ここは…体を洗うスペースのようです。」
ミスとフラワーが壁の高い位置に生えていて、近くの棚にタオルが置いてあった。
スライムの粘液でべたべたする身体を拭きたかったけど、離れられない状態では衝立があっても意味ないよね……
「なんかこの部屋、ベッドとイスしかなくて、宿屋の個室みたいだなって思ったんですけど、宿屋にはこんなスペースないですよね。」
「そうだな…」
中央のテーブルまで戻り、燭台を元あった場所に置いて集めたアイテムを調べてみた。
グラスや小皿、タオルは何の変哲もない普通の道具のようだけれど、ベッド付近にあった木箱からは魔力を感じる。
「とりあえず中を見てみよう」
ルークがふたを外す。中には何も入っていなかったけど、底板に2つのくぼみがある。
「ベルトを外してここに入れろってことでしょうか?」
「そうか、確かに巻いたベルトの形だ。だけどベルトの外し方がわからないな…」
「こっちの箱も見てみましょう。」
今度は私が箱のふたを開け、中のものを取り出してみた。
「輪っかがたくさん。なんでしょうこれ?指輪にしては大きいし、腕輪にしては小さいし…」
「………」
「何かの魔法道具のようですけど、今は動作していないみたいです。」
「か、関係なさそうだな!部屋の外の探索が不十分だしもう出よう」
「どうしたんですか急に?!」
ルークが私の手を引いて部屋から出て行こうとするので、木箱を持ち出そうとしたら怒鳴られた。
なんだか様子がおかしい。とりあえず木箱をテーブルの上に戻した。
「…ごめん、とにかく出よう」
ルークがドアノブに手をかけた。
「……開かない。開かなくなってる」
「え…?」
私もドアを確認してみる。
「魔法がかかってます。この部屋の謎を解かないと開かないのかも…」
ルークが深刻な顔をしている。
「あの、やっぱりさっきの輪っかが手がかりになっているんじゃないでしょうか?もっとよく調べてみましょうよ。」
「あ、ああ……」
ふたりでテーブルの前まで戻り、木箱の中に入っていた輪っかを見せる。
「やっぱりこの輪っかが鍵なんじゃないでしょうか?これをはめる場所がこの部屋にあるんですよ。」
ルークは見ようとしない。これが何なのか判っていて目をそむけている…?
「リリィ……言いにくいんだがそれはな、避妊に使う魔装具だ」
「ええっ!?!」
びっくりして輪っかを放り投げてしまい、慌てて拾いに走った。
「バッ…離れるなって!」
勢いよく離れたせいなのか強い引力が発生し、追いかけてきたルークと思いっきりぶつかってしまい、ふたりしてベッドに倒れ込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます