第7話 四時間目③「ヤツの名前は」

『アタマシラミ』

人に寄生して吸血することにより痒みを生じさせる厄介者だ。

数年前に我が子が幼稚園で頂いてきて大騒ぎとなった。

基本自然に淘汰されることはなく、薬と毎日の洗髪、更に毎日の寝具の洗濯を必要とする。

六十度以上のお湯に五分程度浸けなければいけない!

なんて事も言われた記憶がある。

毎日洗髪する時には、目の細かい櫛で卵が無いか調べて毎日戦々恐々としたものだ。

感染経路は接触…そう、接触なのだ!

私は先ほどまで頭を垂れていた。

あの最悪な降雪地帯のそばに………。

そう再び思考しただけで、震えが波紋のように身体中に広がっていく。

とたんに頭を払う仕草をするが、ハッとして手に付着いていないか確認をする。

降り積もったフケを吹き飛ばそうとするが、それが舞ったら…なんて思い直してみたり、正直パニック状態である。

私の隣では、初めての更新であろう二十代の男が、怪訝な表情を浮かべている。

これで講師のオジサンに目をつけられてはもう一度はじめからになってしまう。

そう思い直した私は、静かに目を閉じると自分の呼吸に意識を向けて二、三度静かに深呼吸をした。

マスクをしているから吸い込む心配は無いだろうという考えもよぎる。

気持ちが落ち着いた私はゆっくりと目を開けたが………。


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