第78話 人生はもっと自由に出来ています

 「この世」に長く生きていると、「この世」のやりかたが普通になってしまい、そのせいで自分を苦しめてしまうことがあります。

 物理のルールは、まだしょうがないとしても、常識や決めつけなどは自分の可能性を狭めているだけで、何ひとつプラスに働きません。

 スピリチュアル界隈でもそれは同じで、「この世」でのやりかたを持ち込んでしまっているお話も見かけたりします。

 もちろんぼくが正しいとは思っていませんが、やはり「この世」のやりかたはスピリチュアルでは通用しないように思います。「この世」でのやりかたを通すならスピリチュアルな生きかたはやめたほうが、かえって楽に生きられるような気がします。

 スピリチュアル=霊的な生きかたというのは、「この世」の方法論ではなく、「霊的な世界」あるいは「この世界」ならではの方法論があります。その差はとても大きく、例えるなら、アナログのダイヤル式電話とスマートフォンぐらい違います。アナログ回線がスマートフォンでは使えないように、「この世」のルールは「この世界」では使えません。

 そもそも「この世界」は自由です。自由で出来ていると言っても過言ではありません。その中で「この世」的な、固定化したルールの効果は微々たるものです。

 「この世界」では考えていることがすぐに現実化します。ネコに触れたいと考えた瞬間に、ネコがあなたの腕の中にあらわれます。音楽を聴きたいと考えれば、すでに音楽が聞こえています。

 「この世」のルールでは、到底無理なことが、「この世界」や「霊的な世界」では当たり前に起こります。物質ではないのでどんなことも可能ですし、何でも手に入りますし、何者にでもなれます。それを「この世」に下ろしてきて物質化・現実化することが「引き寄せの法則」です。


 「この世」を生きていく上でも言えることになりますが、とくに霊的な意味では手放さなければならないことがあります。

 それは「○○すべき」や「やりかた」です。

 これらはどちらも自由である人生を固定化してしまう考えです。

 とくに「引き寄せの法則」を利用するとき、この二つが思考の中にあると、ほとんどの場合、引き寄せは失敗します。

 「引き寄せの法則」を例に挙げると、本来、手に入れたときの気分を引き寄せるものですから、その手段などは問うものではありません。ゴールとなる目的の結果だけを見ていればいいんです。その結果こそが「手に入って幸せ」とか「やりたい仕事に就けて嬉しい」などの気分です。その気分だけを引き寄せています。

 なのに、「やりたい仕事に就くためにはこうすべき」とか、「そのためにはこれをして、あれをして・・・」と考えていれば、「引き寄せの法則」のゴールがブレてしまいます。元々望んでいたゴールの手前にゴールを設置しているようなものです。

 ただでさえ、物質化・現実化にはタイムラグがあるのに、さらにひとつひとつ引き寄せていては、生きている時間がどれほどあっても足りなくなってしまいます。

 この「○○すべき」や「やりかた」は、物質世界でのルールです。

 何かにつけて固定したい、物理的な思考の流れとしては、ピラミッドは一段一段積み上げていくもの、と考えたいわけですが、霊的な視点で見ると、一瞬でドンとできてしまうわけです。考えたことが瞬間的に起こるわけですからね。

 「○○すべき」や「やりかた」は、余計な思考なだけで、引き寄せのじゃまをするだけですから、生きかたの幅を狭めてしまいます。


 「○○すべき」や「やりかた」という思考は、一種の決めつけです。

 人生も「この世界」も、本当はもっと自由にできています。それがこの二つの決めつけが足かせになり、固定されてしまいます。

 「この世界」は、もう何でもありの完全自由世界ですし、分からない人には分からない世界なので放っておいても問題ないと思います。

 問題なのは「この世」での人生です。

 人生はもっと自由に生きることができますし、自分の思ったとおりに振る舞うことが可能です。

 しかし、目に見えない存在や世界を否定する人たちがまだ大半を占めている中で、自由に生きたり、自由に振る舞ったりすることは、固定した気になっている常識に照らし合わせてみると、完全にはみ出し者です。

 はみ出すことに抵抗がない人は大丈夫でしょうけど、多くの人は難しいのではないでしょうか。

 幼いころから常識やモラルを詰め込まれてきた人たちは、当たり前のように「大学に行くべき」とか、「いい会社に勤めるべき」と考えてしまっているでしょう。そうなると「いい会社に入社するには、いい大学を出ておかないと。そうなると高校もいい高校に行かないと・・・」という人生設計を始めてしまいます。もちろんこれは意図化して「引き寄せの法則」が起動します。

 しかし途中で、たとえば大学に入ってしばらくしたころ、「カヌービルダーになりたい」と考えてしまったらどうなるでしょう。これまで歩んできたレールからはみ出してしまうことになります。

 世の中には、そういう場合に遠慮なくはみ出して、自分が生きたいと思う道を選択する方もたくさんいらっしゃいますが、はみ出す勇気がない人も多くいます。その人たちは「○○すべき」の呪縛にからめとられていて、後悔の人生を生きていくことになってしまいます。

 「○○すべき」と「やりかた」という概念を手放すことができれば、自由が見えてきます。ここで問題なのは、この概念を手放すこと自体が不安だということです。

 これまでの人生をこの概念を中心に生きてきたせいで、これ以外の考えかたや生きかたを学ぶ機会がなかった、あるいは学ばなかったことが原因です。

 たしかに、物理のルールの世界ではこの概念があれば、とりあえず生きていくことはできます。しかしこの生きかたでは、夢を見たり自由を感じたりすることはできません。夢や自由にはカタチがないので、物理のルールで手に入るものとしては存在しないからです。そんな考えが蔓延しているせいで「夢は見るもの」という言葉まで生まれます。

 物理のルールの中では、夢は見るだけであり、手にするものではありません。また自由もルールの枠の外にあるものです。きちんと整列して、番号が振られた人々の集まりから飛び出してこそ自由です。

 集団生活や集団行動に慣らされてきた日本人の頭の中には、夢を見たり自由を享受するということは、自分勝手であり、ワガママな行動と受け取られます。

 今度はその他人の視線が怖くて、はみだせなくなってきます。いつまでたってもムラ社会から抜け出すことができない日本人の本質が分かります。


 自由は自分勝手でもなければワガママでもありません。もしそう考えているなら、それは自由の意味をはき違えています。

 本来、自由は「自らの理由」と書くように、自分の信念を元にした言葉や行為、行動のことを言います。辞書などを見れば、「何にも縛られず」とか、「自分の思うままに」ということが書いてありますが、それも根本には信念があってこそです。「信念を元に何にも縛られず、思うままに行動する」という説明になると、意味が変わってきます。ただの身勝手な振る舞いではなく、信念を元にして、その責任を背負って行動していることが分かると思います。

 多くの人が、言葉の意味をきちんと理解しないまま、うろ覚えで使っているためにこういうことが起こります。本来の自由には責任がついてまわります。

 自由についてくる責任は、上手くいかなくても文句や愚痴を言わないことです。

 自由に行動するということは、自分の理由で、責任を持って動くわけですから、どこまでも誰のせいとは言えません。覚悟を決めて、腹をくくって行動する以上、上手くいこうが失敗しようが文句は言えません。文句や愚痴を言ったところで何も変わりませんしね。

 逆に言えば、しっかりと覚悟を決めて、腹をくくって自由な人生に船出をすれば、それが上手くいってもいかなくても、満足することはできます。

 その自由な人生は超個人的な体験になりますから、ほかの誰も体験できない気分を味わうことができます。物理のルールの中では味わえなかった、解放感や充実感は確実に得られます。物質世界という枠の中では見えなかった世界が広がっています。

 その世界は、今後の人生の幅を広げてくれます。幅が広がればさらにまだ見ぬ自由を体験することが出来るようになります。その行きつく先はおそらく「この世界」ということになると思います。

 「この世界」にがんじがらめのルールはありません。どこまでも自由です。もちろんその根本には個人個人の信念があってこそです。信念があれば、「この世」の狭い視野の世界でモヤモヤしながら生きるより、人生の幅を「この世界」にまで広げたほうが、その人だけが持つ力を発揮でいるのではないかと思います。

 「すべきこと」も「やりかた」も、すべて「この世」でだけ通用する物理のルールに基づいた全体主義的な考えかたです。信念を持っている人であれば、抑圧や圧迫されていることを、すでに感じているのではないでしょうか。

 今はまだそういう価値観で社会が構築されていますが、知ってか知らずか、すでに「この世界」の価値観で生きている人も多く出てきています。

 スピリチュアル的な意味もありますが、かたい頭をやわらかくして、「生きる」ということの懐の深さを見つめて、感じてみれば、「この世」の中であっても、人生はもっと自由で、もっと幸せなものであると分かると思います。

 「○○すべき」も「やりかた」も手放して、「今・ここ」に生きてみてください。そのためにスピリチュアルとか禅の思想などが「この世」に溢れているんです。

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