第71話 第三の法則「追い風の法則」

 これまでに、二つの法則については何度も繰り返し書かせていただいています。

 ひとつは「類は友を呼ぶの法則」です。自分の思考の内容によって人やモノやコトが集まってくるので、集まってきてほしいものをつねに思考しておきましょう、という法則です。

 もうひとつはド定番の「引き寄せの法則」です。望むことがあるのであれば、すでに自分はそうであるという意図を持ち、そのように振る舞うことで、望むことが引き寄せられるという法則です。

 人生におけるほとんどのことは、この二つの法則で構築されています。気づいていようがいまいが、知ってようがいまいが、すべての人がこの法則の影響を受けています。おまじないではなく法則ですから、万有引力の法則や慣性の法則のように、万人がその影響下で生きています。逆に言えば、誰もこの法則の影響からは逃れられないとも言えます。

 そしてここでもうひとつ、法則を紹介します。

 それが「追い風の法則」です。

 先の二つの不足に比べると、補助的な役割ですが、この法則も誰もがその影響下にあります。もちろんこの法則も、すべての人に影響を与えていて、誰もその影響から逃げることはできません。間違いなくすべての人の人生に関わっています。

 「追い風の法則」は、巷のスピリチュアルでは法則とは呼ばれることはありませんが、ぼくの実験上、確実にあるものとして判断したので、法則と名付けて紹介させていただいています。そういう法則であることをお含みおきください。


 ネガティブな例で言うと、「ツイてないときはとことんツイていない」という体験はないでしょうか。運が悪いと言えばいいのか、上手くいかないときは、次々に上手くいかないことが重なったり、踏んだり蹴ったりになったり、心が折れるような体験ですが、誰でも一度くらいはあるのではないでしょうか。

 これはネガティブな例ですが、それとは正反対のポジティブな体験でも同じことが起こることがあります。ただ、ポジティブなことというのはたいてい次の嬉しい体験などで上書きされやすく、すぐに記憶から消えていきます。でも実際に、幸せなときに幸せなことが積み重なるように起こることもあります。

 実はこのとき、良くも悪くもですが思考がずっと同じ方を見ているような状態になっています。ポジティブなことであれば「めちゃくちゃ幸せじゃん」という思考が、途切れなかったり、「すっごい楽しい」という思考が深く長く続いているとき、その人の背後から、追い風が吹き抜けていくように背中を押してくれて、その思考にあった道へと導いてくれます。こうなると、もう何にも考えなくても勝手にポジティブ道まっしぐらになっていますから、どんどんポジティブな体験が目の前に現れて、次々に体験が積み重なっていきます。

 もちろんその逆もまた然りです。ネガティブな体験が目白押しということもありえます。そのとき口に出るのが「ツイてないときはとことんツイてない」です。

 元々をたどれば、「類は友を呼ぶの法則」や「引き寄せの法則」によって、引き寄せられた体験ありきですが、目的のモノさえ引き寄せてしまえば満足してしまい、思考に油断が生じてしまうことがあります。

 たとえば大学に入ることを目的に勉強しても、入ってしまえば目的を見失う、ということはないでしょうか。本来であれば、大学も人生の途中経過であり、チェックポイントのようなものですが、あまりにもそこに焦点を合わせすぎてしまった結果、入試で合格することが人生の目標になってしまい、そのあとは空白ということが起きることがあります。燃え尽き症候群というんでしょうか。

 何にせよ、思考の空白は油断と言わざるを得ません。

 それまで集中して固まっていたポジティブな思考が、一瞬にして瓦解してしまい、ポジティブでもネガティブでもない状態に陥ります。この瞬間、テーブルに自分の足の小指でもぶつけて痛さからイラっとしたりしたら、ネガティブ思考が立ち上がり、二つの法則によって、ネガティブな体験がすこしずつ集まってきたり、引き寄せられたりします。これでも思考の変化がなければ、「追い風の法則」によりネガティブな体験しかない道へ導かれてしまいます。

 「追い風の法則」に容赦はありません。あなたの思考に沿ってそれに類する道へと追い立てられることになります。

 これも法則ですから、例外はありません。すべての人が、その思考によって集めたり、引き寄せた結果を、延長させようとします。

 ポジティブな体験の連続であれば嬉しい悲鳴を上げるぐらいで済みますが、ネガティブな体験のときは大変です。極端な言いかたをすれば「悲劇の目白押し」ということになってしまいます。

 だからこそ、日常的にポジティブな思考であることが大切になってくるんです。

 これまでも、同じことを何度も書いていますが、日常の思考ほど大切なものはありません。


 「追い風の法則」はいわば、目に見えない存在によるものと言ってもいいかもしれません。

 「類は友を呼ぶの法則」や「引き寄せの法則」は思考の調整や思考の意図化など、自分でなければできないことばかりですが、「追い風の法則」だけは、自分の意思でどうにかできるものではありません。

 自然の流れに身を任せるという感覚がいちばん近いかもしれません。

 先の二つの法則で「今・ここ」を幸せにしたあとは、その思考や意図に変更がないかぎり、その幸せの状態のまま追い風が吹き、その回数なのか期間なのかは分かりませんが、その延長が勝手になされます。

 見方によっては、本当に自然の流れでそうなっているような気がするかもしれませんが、実際に思考を反対方向に切り替えると、追い風は一気に止んで、反対方向の思考に合わせたものが集まってきたり、体験することになります。

 自分の意思でどうにもできないからこそ、難しいとも言えますし、貴重とも言えます。先の二つの法則を信頼して、集めたり引き寄せたりしているからこそ、手を貸してくれる存在のようなものだと考えられます。

 そしてこれまでの法則と違う部分はまだあります。

 「引き寄せの法則」で言うと、たとえば、一戸建ての家が欲しいとあなたが望んだとします。引き寄せのルールに則ると、望むものをすでに手に入れていると決定します。この場合、一戸建ての家ですから、すでに持っていて、あとは引っ越すタイミングを待っているぐらいの感覚です。望む家の外観や間取り、周囲の環境などをイメージして、自分がすでにその家のオーナーであるイメージをリアルにしていきます。

 このとき、どこかのタイミングで「追い風の法則」が働くことがあります。それは望んでいる家の入手までの何かしらをお手軽にしてくれるというものです。「何かしら」というのは、これがこうなる、と断言できるものではなく、本当に何かしらが自分に優位に働きます。それが家の価格なのか、イメージしていたよりいい家なのか、不動産屋さんのサービスがいいのかは分かりません。その家を手に入れるということについて、あなたにとって優位な出来事が起こるということは間違いありません。

 これもまた「追い風の法則」です。

 このとき、この一戸建ての家を手に入れることが、あなたにとってポジティブな体験になるのであれば、「今・ここ」から手に入れるまでのあいだに、「兆し」を体験します。その家とほぼ同じ家をテレビや雑誌で見るとか、古い友達が、その家の近所に住んでいるとか、その家にまつわる嬉しいことや楽しくなるようなことが、予感のように起こります。これもまた「追い風の法則」です。

 その家で暮らすことがあなたにとって、「今・ここ」を充実させ、満足させ、楽しく幸せなことになることを、「兆し」としてチラ見せしているようなものです。兆しを受け取ることができると、ますますその家に住んでいることが自分の幸せであるというイメージが強くなります。その結果、「引き寄せの法則」の意図が強まるという段取りのための「追い風の法則」です。

 とくに「引き寄せの法則」は意図の強さが重要です。「すでに入手している」とか「すでにそうなっている」という意図は、物欲などが先行している場合、どうしてもくじけてしまい「持っていないから欲しい」とか「そうではないからそうなりたい」というネガティブな思考が勝ってしまいます。ぼくはそういうタイプです。

 「追い風の法則」による「兆し」のおかげで、引き寄せている最中でもくじけることなく、揺るぎない意図をキープできることもあります。そういう意味では、「引き寄せの法則」のための「追い風の法則」と言えます。


 「類は友を呼ぶの法則」、「引き寄せの法則」、それを補助する形の「追い風の法則」をうまく意図的に利用することができれば、人生は山あり谷ありではなく、望んだとおりの道を歩むことができます。

 これまでにも書いていますが、これらの法則は物理ルールではありませんから、物質的な体験を得るものではありません。あくまでも目には見えない「気分」です。その気分を体験するために必要な物質を集めたり、引き寄せたりするものです。

 気に入った一戸建ての家に住んでいる幸せな気分は、その家か、それに近いものでなければ味わうことができません。だから物質的に引き寄せられているだけです。

 そのあたりを誤解されませんように。

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