第44話 怒りは恐れの裏返し
以前のお話でも書かせていただきましたが、本来ネガティブな思考というのは、ポジティブを知るため、そのためだけに存在しています。
脳の機能として、比較することであれとこれを分けて理解しようとします。「白ではないから黒」であったり「影ではないから光」というように、どんなことでも二つにわけて対比して、その結果を理解して記憶します。
すべての人が「創造主」であるというお話も以前書かせていただきました。創造主は「愛」であり「魂」であり、ポジティブしか知らない存在です。
「愛」も「魂」もすべての人が持ち合わせていますから、すべての人が創造主ということになります。すべての人が創造主であるのなら、すべての人がポジティブしか知らない、という状態のはずですが、実際にはネガティブな思考があります。
それは先ほども書いたように、比較対象のために元々備わっている機能です。それがなければ、何が幸せか、何が楽しいかすら分からなくなります。すべてが楽しいだけでは、「つまらない」がどういうことは分かりようがありません。影あってこその光、ということです。
ただ、この比較対象のためだけに存在していたはずのネガティブな思考が、現代の人々にとってはメインになってしまっているようです。
生きるということにおいて、誰も「今・ここ」に生きなくなったのが原因だと思っています。つねに明日を見ていて、まだ何が起こるかも決まっていないのに不安という思考を生みだし、明日のために準備ばかりして、唯一、自分の人生を創造できるポイントである「今・ここ」をないがしろにする傾向があるようです。
それどころか、明日を見て不安になり、その不安という思考が無意識の意図となって、明日を創造してしまっています。もちろん考えたことのすべてが意図になるわけではありませんが、強烈な思考は意図になります。あまりに不安が強すぎて、明日という日は不安どおりになります。そして「ほら、やっぱり思ったとおりになった」と言うでしょう。そのとおりです。思ったとおり不安な明日を創造したのです。
こんなに無駄なことはありません。せっかく明日を、未来を創造しているのに、不安に思考の焦点を合わせてしまって、不安な明日を体験するなんて、本当にもったいないです。
ポジティブな思考で明日を見ていれば、不安ではなく希望で見ていれば、明日はきっと望んだことが起こって体験しているはずです。もちろん明日になってみなければ分からないことですが、すくなくとも、過去の意図がネガティブなものであっても、相殺されてマイナスな体験ではなくなっているはずです。
ネガティブな思考は、恐れから生まれます。
恐れとは、細かく分類すればいろいろあるかもしれませんが、その根っこにあるのは「死」です。誰の人生であっても、生きていればすべてのゴールは「死」ということになります。明日を見たがる人にとって、そこから先の見えない「死」は恐怖以外の何物でもないでしょう。先が見えないからどうなるか分からない。何もないかもしれないし、何かが待っているかもしれない。人にとって一番最初に現れる恐れは「分からない」ことです。
人は分からないことに対しては、恐怖を感じ、そこから不安や心配、気がかりなどが生まれます。言葉が通じない、意思の疎通ができない、置かれている環境が理解できないなど、日常的にもよくあることだと思いますが、簡単に恐怖を感じます。人によっては、自分の思いどおりにならないことや、自分の意思が理解されないなど、いわゆる「世界は自分を中心に回っている」的な発想からの恐怖を感じます。性格的なものもありますが、多かれ少なかれ誰でも持っています。とくに子供のころはこういう傾向が強いのではないでしょうか。
すぐ怒る人がいます。マウントを取ってくる人がいます。人の足を引っ張る人がいます。こういう傾向が強い人たちは、その根っこに恐れを抱えています。
人それぞれなので具体的なことは分かりませんが、コンプレックスが引き金になることもありますし、自分の立場を脅かされるのではないかという不安を抱えている人もいるでしょう。
誰にも明日のことは分かりません。明日、いや一時間後に自分が生きているかどうかも分かりません。大きな震災を見れば分かりますよね。そんな中、短期から長期にかけていろんな想像をして、その想像に飲み込まれているのが、怒りっぽい人=恐怖に怯えている人です。
ネガティブな思考に振り回されて、まったく余裕がなく、つねに恐れや不安を抱えながら生きているのですが、だからと言って、恐怖や不安を解消したりすることはしませんし、すでにそれが普通であるとすら思っているでしょう。
他人を変えることはできないので、そういう人を見かけたら距離を取っておくぐらいしか手立てがありません。こちらの世界とあちらの世界ではまったく違う「普通」が流通しているからです。
もしあなたが怒りっぽいのであれば、今すぐ改善してほしいと思います。
ときどき、怒りが何かのエネルギーになるという人がいます。それは違うと思っています。怒りは怒りしか呼びませんし、その根っこは恐れですから、一時的に未来が都合よくなったとしても、すぐにへたります。
怒りっぽい理由としては、自分の思ったとおりならない、という理由が多いかと思います。思ったとおりにならないのは、考えていることが、本当に望んでいることとは違うからです。
たとえば、人をまったく信用しない人が、人に信用されたいと言っても、まず自分が信用していないのですから「類は友を呼ぶの法則」によって、信用できないことが集まります。人も出来事も信用できるものはほとんど集まってきません、信用できないものに囲まれている人を見て、信用できるでしょうか。結局そうやって、思っていることや考えていることが現実化することで、本当に望んでいることからどんどん遠ざかっていきます。
なので、怒りっぽい人はまず笑ってください。多少面白くなくても笑う、もしくは笑顔になることだけでも心がけてみてください。笑ってる人に怒るような状況はなかなかやってきません。
そして思ったとおりにするために、「今・ここ」に生きて、どんなに小さなことでも思ったとおり、考えているとおりになっていることを見つけてください。最低でも生きているとか、眠りから目が覚めたとか、呼吸ができるとか、無意識の意図レベルかもしれませんが、あなたが生きていく上で必要とする思ったこと、考えたことが起こっているはずです。それを見つけたら、ちょっとでいいので感謝してください。感謝は、感謝したくなることを引き寄せてくれます。これも「類は友を呼ぶの法則」によるものです。
生きていれば腹が立つことはありますし、イライラすることもありますが、だからといって、その思考のまま生きていれば、さらに、さらにと、同じようなことが、すこしずつ巨大化して起こります。ぼくの実験結果です。
世界は素晴らしい。人々はいい人ばかり。そんなふうに考えて、日常を生きてみてください。ぼくの場合は二~三週間で変化が現れました。とにかく世界は素晴らしいものだ、出会う人は誰もがやさしく親切だと、思い込むようにして、自分に言い聞かせ続けたら、腹が立つことが急速に減っていき、イライラしている時間もどんどん無くなりました。もちろんすべてがまるっとそうなったわけではありませんが、確実に減りました。
この実験結果から、腹が立ったりイライラしたりするのは、自分の思考が何に焦点を合わせているのか、そこがポイントだと分かりました。
実際の話、以前の自分ならイライラしそうな出来事というのは、おそらく今も身のまわりで起こっているのだと思います。ただ、今のぼくの視界にそういうことが入ってこない、もしくは視界に入っていても気づかない、脳が認識しないようになったのではないかと思っています。
科学的な実験というわけではないので、正確さには欠けますが、それでもこの実験を二度三度と繰り返すうちに、多分これが正解だなと思えるようになりました。
おかげさまで、今は自分のふがいなさとか、能力の低さ、センスの悪さに、時々イラっとすることがあっても、「それが自分だよな」と肯定的に受け入れて、どうすればそれらが良くなるかを考えます。長い時間、イライラしたりすることはまったくありません。
恐れを手放しましょう。
早かれ遅かれ、この世に存在するモノは消えてなくなります。「死」への恐怖を最低限度にとどめて、それよりも、どうせ死ぬのだから今を幸せにしようとか、おいしいものを食べておこうとか、そういったポジティブで、自分の幸せに直結するようなことだけを考えるようにしてみてください。
社会的な面は、あなたがそれを望んでいる以上、離れることはできません。それが仕事であれ、学校であれ、それでしょうがないと思えば、しょうがないことになってしまいます。しかし、それと個人的な人生は別です。仕事も学校も、直接的にあなたを幸せにしてくれることはありません。誰もがそれぞれの考えがあって、社会に参加しているにすぎません。社会だけで個人の人生を創ることはできません。
ストレスを溜めて、誰かや何かに威嚇や攻撃をするぐらいなら、そこから逃げるのもひとつの作戦でしょうし、問題を棚上げにするのも作戦です。
いずれ、かならず自分の元に帰ってきますが、今の自分に対処できないなと考えるなら、今は棚上げにして、いろいろ作戦を考えて、体験を増やして、「生きる」のスキルをアップさせてから、未来で迎え撃つというのもありだと思います。
まずは、「今・ここ」で笑ってください。笑顔になってください。
恐れに怯えてる人にとっては、これが人生を変えるもっとも手早い方法です。
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