第41話 他力本願は「切り替えスイッチ」
肉眼で見えないものは存在しない。そんな分かるような分からないような理由で、多くの人が人生というわずかな時間を、もったいない状態で生きています。
ぼくとしては、人生が喜びに満ちているか、面白いかどうかを基準に生きていますから、肉眼で見えるとか見えないとかは、どうでもいいことではあります。
肉眼では見えないから否定するというのは、ひとつの「自分だけのモノサシ」であり、固定観念です。学校で学ぶことがすべてだと考えている人が多いので、この思想の人が多いのもうなづけます。
しかし、自分の目には見えないからと言って、人が見ているものまで否定することはできないのではないでしょうか。学校の勉強しか分からない人にとって、スポーツで優秀な成績を残している人のことは分からないでしょうし、誰もが音楽家や画家の視点を理解することも難しいはずです。
人は誰でも、自分の視点、主観でしかモノを見たり、知ったりすることはできません。自分の主観を通して、見て考えている相手のことなので、それは正確な相手の思考や気持ちではありません。おもんばかるに越したことはないですけどね。すこしは相手に寄り添えるわけですから、ないよりはあったほうがいいと思います。
あなたが知っている人というのは、あなただけです。親でも兄弟でもパートナーでも、その思考の奥底を理解することはできません。すべての人が一般的な意味ではなく、客観的な意味で、自分ではない他の人、つまり他人なんです。
他人であるということは、百パーセント完全に理解することはできません。そこを勘違いしてしまっている人も多いような気がします。
たしかに恋愛などで燃え上がると、すべてを理解したような気にもなりますし、なんでも許せるような気がしたりします。しかし時間の経過とともに、お互いの意見が食い違ってきたりすることもありますし、許せない行動も目に付くようになります。
なぜそんなことが起こるかというと、最初から相手のことを理解できていないからです。自分の主観で見た相手であり、相手だって猫を被っているかもしれません。
恋愛で「好き」の気持ちが燃え上がっているときは、より本質が見えない状態になっています。その理由として、まず主観である思考のフィルターが贔屓目に見ているということがあります。
「好き」という感情はポジティブな思考の中でも、最上級にクオリティーの高い感情です。「創造主」と同じ状態ですから、すべてを受け入れることも、許すことも、難易度は底辺まで下がっています。ほぼエゴがない状態です。すべてを「YES」で片づけられる最強の状態です。
しかし「好き」の盛り上がりが落ち着きを見せてくると、思考のフィルターもそれに比例して落ち着いていき、事実を事実として理解するようになります。今までピンクのレンズが入ったサングラスだったのに、レンズが透明のダテ眼鏡に変わるようなものです。そうなってくるとエゴがしゃしゃり出てきて、「自分だけのモノサシ」を振りかざすようになり、相手への思いやりはどこへやら、自分の主張を通そうと頑張りはじめます。その結果、言い争いやケンカが増えたり、別れたり離婚したりするようになっていきます。
最初は自分のフィルターによって、自分勝手によく見えているだけで、見ていたものが事実ではなかった、ということが、恋愛における失敗の理由のひとつです。
結局人は、自分の主観でしかモノを見ておらず、事実としての理解もなにもあったものではないということです。それが人生全般にわたって繰り広げられているのが現状です。
自分がすべてを知っている人は自分しかいない。
このことを踏まえると、自分の人生を誰かや何かに委ねてしまうのはどうなんでしょうか。
ぼくもこんなお話を書いていて、「ぜひ参考に」などと言ってるわけですから責任重大ではあります。
ぼくも含めてですが、その手の本も、偉人の話も、すべて参考にするだけにとどめておいてください。のめり込むことは危険ですし、いいことは何もありません。
スピリチュアルでも占いでも宗教でもセミナーでも、なんでもそうです。参考にするぐらいがちょうどいいんです。
何かひとつにのめり込むということは、それしか知らないということになります。その状況が危険なんです。
いろいろな世界を見て、いろいろな考えを知って、いろいろな体験をする。その上で、自分だけの生きかたを考えたり、見つけたり、作り上げたりしてください。その参考程度にこういうお話を利用してもらえると、ちょうど良いと思います。
先ほども書きましたが、自分のすべてを知っているのは自分だけです。場合によっては自分のことすら見えなくなっている人もいます。なのに、他人である占いや宗教があなたのことを分かっているはずがありません。そんな環境に身も心もゆだねるのは、自ら「奴隷になります」宣言をしているようなものです。
ぼくは占いはまったく信じていません。その理由は、未来は自分が創造していると分かっているからです。多くの場合、占いというのは現時点でのあなたを元に未来を見ます。しかし人というのは「今・ここ」というポイントにおいて変化しています。言い換えれば毎瞬毎瞬、人が変わっているようなものです。その変化は無限大です。無限にある可能性の未来を見るとなると、無限の答えが必要になりますから、物理的に無理です。あくまでも、現時点でのあなたが、今後何も変わらなければこうなる、という予測なのです。
また、自己啓発なども、あくまでも多くの人がこれで上手くいくという平均的な教えなので、すべての人に当てはまっているわけではありません。十人十色、百人百色ですから、ひとつのカリキュラムですべてが上手くいくはずがありません。
それは学校教育でも同じですが、そこに当てはまらないからと言って、落ちこぼれているわけではありません。そのシステムが合わないだけです。そうは言っても、ひとりひとりに対応するには物理的に無理があるので、自分で勝手に落ちこぼれるのは無意味です。やめておきましょう。
さらに宗教ですが、ぼくにとって禅の教えは、今の自分にたどり着くためのきっかけになっているので言いにくいのですが、現代の禅はあまり好きではありません。現代の宗教はどれもカタチにこだわっていることがその理由です。仏像に手を合わせることは素晴らしいことかもしれませんが、それですべてが上手くいくわけではありません。信じている人たちの中で「仏さまに手を合わせておけば」とか「毎日お経をあげていれば」という考えが、普通になっていることが問題だと思っています。そもそも信仰とはそういう簡単なものではありません。
何事も、自分が行動を起こさなければ引き寄せの波紋は起こりません。「引き寄せの法則」を信頼していなければ、機能することはありません。信頼は、自分にはその力があると信じていなければできません。自分にその力があると、どうしても信じられない人に取って、仏像に手を合わせたり、占いの言うとおりに行動することは、信頼を肩代わりしてもらうための「スイッチ」になっています。
たとえば、自分としては建築士になりたいけど自信がない、というときに、占いなどで、「建築士に向いています」とか「なれます」と言われれば、それは心強いことでしょう。自分を信じることはできないけれど、占い師の人がそういうのだから建築士になれるのだろう、と考えることで「スイッチ」が入ります。こうして自信が生まれるわけです。
占いにしてもセミナーにしても宗教にしても、そのお客さんや信者さんを変えることは不可能です。先ほども書いたとおり、百人は百色です。すべての人が同じシステムで上手くいくことはありません。人生いろいろ、思考もいろいろです。
しかし、誰かの背中を押したり、参考になるかどうかは分かりませんがアドバイス的なことをすることはできます。ただそれで満足することなく、背中を押してもらって生まれた自信や、アドバイスを元に、自分が行動を起こすことが重要です。
本当かどうかは分かりませんが、以前どこかで聞いたお釈迦さんのお話で、お釈迦さんが悟りを開いて三昧しているときに、他の宗教の人たちがやってきて、「悟りとはどんなものか」と訊ねたそうですが、お釈迦さんは教えなかったそうです。どうせ言っても分からない、それが理由です。
自分で行動を起こすこと、自分で体験すること、自分で選択して決定することが、この世での「生きる」を味わうための本質です。
行動はどんなことでもいいんです。あなたにできる範囲のことで十分、しかし楽しくできる範囲であること。
目が覚めてから次に眠るまでの間はすべて体験ですから、あなたがそれを意識的に体験するかどうかです。大きな体験だけではなく、蝶が飛んでるのを見ることも体験ですし、段差のないところでつまづくのも体験です。なるべく多くの体験を意識してみてください。
あなたに関わる人生のイベントはすべて、あなたの選択と決定によるものです。他人が関わってきたとしたら、それはあなたがその他人に対して、自分の人生に入ってきても良いという許可を出した結果です。流れ作業的に決定するのではなく、きちんと受け入れて、考えて、選択して決定すること。それが重要です。
これだけのことですから、とくに難しいことはありません。最初のうち、ちょっと面倒くさいだけです。しかしそれで人生が変わるのであれば、楽なものではないでしょうか。
あなたの人生を、自分以外の誰かや何かに委ねても、その後に体験するあなたの変化は、ゆだねられた側、自分以外の誰かや何かのものになります。けっして、あなたのものではないので、よほどしっくりくる人以外は、心からの幸せを体験することができません。得られるのは一時的な安心感だけです。
他力本願が「切り替えスイッチ」であることを理解して、それをうまく活用しながら、自分の足で、自分の人生という未知を歩いていきましょう。どうせ、他に逃げ道はありません。
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