第37話 好きこそものの上手なれ

 「類は友を呼ぶの法則」や「引き寄せの法則」を利用するにあたって、最初に、どうしても必要なものがあります。

 ポジティブ思考です。ポジティブ・シンキングと言ったりもしますね。

 肯定的な考え、考えかた、のことですが、よく勘違いされているのが、前向きであればポジティブと思っている方がいらっしゃいます。たしかにポジティブというと、元気なイメージや前向きなイメージがあります。それもそうなんですが、最も大切な意味は「肯定的」ということです。

 肯定するというのは、ものすごく極端に言ってしまえば、どんな状況や状態であっても「YES」と言う、ことです。受け入れるという意味にもなりますが、そこに選り好みを入れていては肯定したことになりません。否定をしてはいけないということではなく、「YES」の一言に責任を持つ、ということです。

 「受け入れる」というのは、なんでもかんでも反射的に反応するのではなく、自分でしっかり考えた上で結論を出すための作業です。その上で、自分に不利益であったり不必要であれば、「NO」と言えばいいんです。

 日常生活の中で人の脳は、なるべく省エネしたいと思っていますから、比較することで簡単に白黒つけがちですし、今回のお話で言えば、前例に沿ったり、どこかで聞きかじった程度の知識からの思い込みで結論を出したりしてしまいます。

 たとえば、いかにも不良的な、悪そうな格好をしている人がいると、脳はひとくくりに考えてしまい、そういうファッションの人はすべて不良、または悪い人、と決めつけて、思い込み、「自分だけのモノサシ」を作ります。確率的にはそうかもしれませんが、中にはそういうファッションが好きなだけの人もいますし、話してみれば意外と真面目でやさしい人もいたりします。

 こういうときの思い込みこそが、自分の人生の他の場面でも適用されてしまい、結果的に自分の人生の道幅を狭めてしまうことになります。

 大切なのは、一度しっかり考えてから、選択して決定するということです。


 ぼくが好きではない言葉に「努力」とか「頑張る」というものがあります。これらの言葉を口にすることはほとんどありません。もちろん自分以外の人に言うこともありません。

 なぜかというと、ぼくにとってはとてもネガティブな言葉だからです。

 「頑張る」という言葉は、ちょっと聞いた感じでは前進思考というか、前向きな感じがします。おそらく「努力」もそんな感じでしょう。目的に向かって進む姿を想像するかもしれません。

 ではこれらの言葉を、自分のしていることに当てはめて、考えてみてください。

 あなたが頑張るとき、楽しいですか。幸せですか。あなたが努力しているとき、ワクワクしますか。笑顔になりますか。

 きっとそういう印象はないと思います。

 まず「頑張る」から言うと、字のごとく「頑なに張る」と書きます。張るのはきっと意地でしょう。「頑なに意地を張る」という言葉になったとき、ポジティブさを感じるでしょうか。

 続いて「努力」です。こちらは漢字というより日常的な意味ということになりますが、あなたが努力していると感じているとき、すこしムリをしていないでしょうか。たいていの場合、努力しているときというのは、苦手なことや身の丈に合わないことを、どうにかねじ伏せるために力を尽くしているときではないでしょうか。

 「頑張る」も「努力」も、自分が望んでいないこと、簡単に言えば、好きなことではないことに力を尽くさなければいけないときに用いる言葉です。

 できればやりたくないけどしょうがないとき、まわりの空気に飲まれてそうしなければならなくなったときなど、本人の望む形ではないことが多いんです。

 逆に、自分が好きなことを夢中になってやっているときはどうでしょうか。

 頑張っていますか。努力するようなことがありますか。

 おそらくほとんどの人が、無我夢中でやっているはずですし、好きでやっているのですから、頑張っているわけでも、努力してやっているわけでもないはずです。ついでに言うと、「一生懸命」でもありません。単純に夢中なだけです。

 この、好きである、夢中である、ということが、「類は友を呼ぶの法則」や「引き寄せの法則」に必要な、ポジティブ思考なんです。

 夢中という状態は、スピリチュアル界隈ではとても重要なことで、一説には時間が止まるとか、時間の流れが変わると言われるほど、特殊な状態なんです。

 たしかに、夢中をたくさん体験している人というのは、見た目年齢が若い傾向があります。時間が遅く流れるのか、そのときに止まっているのかは分かりませんが、とにかく年齢不詳という感じの人が多いようです。ちなみにぼくは、初対面の人に十歳以上若く見られがちです。遊び時間が多いせいだと思います。 話を戻します。

 夢中であるという状態は、極端になると周囲も見えなくなります。読書や映画鑑賞などで体験された方もいるのではないでしょうか。あっという間に時間が過ぎていたり、まわりの物音などがまったく聞こえていなかったり。名前を呼ばれても聞こえていなくて、すぐそばを人が通っても意識していない、そんな状態のことです。

 このとき、自我はほぼ手放されていて、いわゆる「魂」そのものになっています。「心」のみで存在しているという言いかたもできます。さらに言い換えれば、あなたが「創造主」として存在している瞬間なのです。

 「創造主」=「魂」=「愛」の公式に、=「心」を足す感じですね。

 「今・ここ」に存在し、「受け入れる」ということも同時に体験しています。こういう状態の時に「引き寄せの法則」のための意図をすると、確実に結果が出るはずです。そうは言っても夢中のさなかですから、他のことは考えられないんですけどね。

 夢中になるものは何でもいいんです。趣味にしていることがもっとも身近でやりやすいのではないでしょうか。インドアでもアウトドアでも構いません。とにかく「自分が夢中になっている」ということがポイントです。

 夢中になる時間が多くなれば、それだけポジティブな時間、「創造主」として存在している時間が多くなりますから、思考と気分が一致します。普段からポジティブな思考で生きていれば、「類は友を呼ぶの法則」や「引き寄せの法則」が、良い方向で機能しやすくなるんです。

 つまり、あなたの未来に希望の種をまいているということです。それはいつのことになるかは分かりませんが、いちばんその喜びが大きくなるタイミングで実をつけます。そのときの幸せな気分を想像してみてください。

 あらためて簡単にまとめると、普段からポジティブな思考であること、無我夢中になるほど好きなことをして、「今・ここ」を生きていること。それだけで「類は友を呼ぶの法則」は、あなたに幸せのみを授けてくれるということです。


 誰もが好きなことをしていては、世の中が回らなくなるという人もいるでしょう。

 たしかに一見、そうなりそうにも見えますが、案外と本当に必要なことだけが残るのではないかと思います。

 人が生きていくのに本当に必要なのは、食べ物とライフラインと一部の日用品ぐらいです。それ以外は、便利やお手軽を求めた上で、必要そうに思えるだけのものがほとんどです。企業の宣伝に乗せられているだけのように感じますね。あれば便利なものはたしかに便利ですが、無くてもいいものもや、無くてもいい機能がついていて販売されているものだってたくさんあります。

 でも人が生きるために本当に必要なものというのは、これほどの選択肢はないのではないでしょうか。パソコンやスマートフォンについている機能や出来ること、完全に把握していますか。炊飯器やオーブンレンジについている機能をすべて使いきっているでしょうか。そういったものが好きな人は把握しているでしょうし、使いきっているでしょう。しかし、いま部屋の中にあるものを見渡して、すべてがそのレベルで使いきれているでしょうか。

 本当に必要なものだけということになると、どこかの誰かが好きでやっているものです。大昔はそうだったはずです。もちろん大昔の暮らしに戻るということではありませんが、今は何もかもが過剰な気がしています。そのせいで、「生きる」という、人が本来見つめなければいけないことがおろそかになっている、というか、見えにくくなっているのではないかと思っています。

 好きなことが仕事になるのがいちばん幸せです。とは言え、なかなかそうならない人も多いと思いかも知れません。もっと好きなことに夢中になり、今できる精一杯のことを、楽しいと思える範囲の中でやってみてください。

 努力をする、頑張るということではなく、ただ好きだからという理由だけで動けたら、ネガティブな思考を生みだすことなく行動できるはずです。そうすれば、多少考えていたところとは違ってしまうかもしれませんが、日々、満足できて、楽しくて、幸せに生きていけます。

 好きこそものの上手なれ。この言葉はそういう意味の言葉です。

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