第29話 今さら「引き寄せの法則」

 本当に今さらだとは思いますが、「引き寄せの法則」です。

 書店に行けば、あの手この手の「引き寄せの法則」本が並んでいますから、ぼくが書く必要はないと思っていたのですが、今までのお話の中でもその手の話を出してしまっていたので、ぼくなりの解釈で、法則についての話を書かせていただきます。

 これまでのお話でも触れているので、重複しているところがあると思いますが、まとめみたいなものだと思ってご了承ください。


 まず、「引き寄せの法則」はおまじないなどではありません。そして、誰もがその影響下で生きています。すべての人の人生は「引き寄せの法則」によってできているとも言えます。

 法則というぐらいですから、欲しいときにちょっとつまむ、というようなものではありません。万有引力の法則やフレミング左手の法則など、法則と名がつくものは、誰もがその影響下にあるものです。空気のようなものだと考えると分かりやすいかもしれません。すべての人が空気を吸っていますが、ろうそくの火を吹き消すときなど、いつもより多めに空気を肺に取り込み、強く吐き出します。それと同じように、いつもどこでもその影響下にあり、自分が必要なときには、うまく利用することもできるものです。なので、おまじないのように何か儀式的なことをするとか、そういうことではありません。

 その手の本によっては、アファメーションという、いわゆる「宣言」を必要としていたりすることがありますが、ぼくは必要ではないと考えています。もちろんやりかたは人それぞれですので、その人がしっくりくる方法がいちばんです。

 一般的な「引き寄せの法則」の利用方法としては、たとえば欲しいものが車だとすると、まずはすでに持っているとイメージします。「私はこの車を持っている」とアファメーションします。ディーラーに行って試乗してみたりして、体感できることを増やします。カタログや雑誌などでイメージにリアリティーを足していきます。いま自分にできることをやったら、欲求そのものを手放します。「私はこの車を持っている」と宣言しているのですから、いつまでも欲しいと考えていては宣言の意味がなくなってしまいます。そして物理ルールのこの世の中で、目に見えない世界の歯車が動き出します。物理世界ゆえのタイムラグがあって、やがて自分の欲しかった車が引き寄せられます。

 大まかにまとめるとこういう感じではないでしょうか。人により多少の差異はありますから、おおまかに、ということで。

 このように、しなければならない段取りのようなものがあることが、おまじないチックに受け取られるのかもしれません。この方法でもうまくいく人はうまくできると思います。

 正直な話、ぼくは「引き寄せの法則」を利用するのが下手です。趣味でギターを弾くのですが、楽器関連の物欲が強力すぎてほとんどうまくいったことがありません。

 ぼくの場合でいうと、欲しくなったギターがあったとして、アファメーションは「ぼくはこのギターを持っている」ということになるのですが、いま持っていない事実があるので、やはり「欲しい」という気持ちのほうが強く出てしまうのです。

 「欲しい」というのは、「持っていない」の裏返しです。持っていないから欲しいのであって、結局は「ぼくはこのギターを持っていない」とアファメーションをしているようなものです。言霊というカタチになったものよりも、目には見えない本心のほうが、目には見えない世界に響くのだろうと思います。

 その代わりということでもありませんが、日常のちょっとしたことはわりとうまくいくことが多いです。

 その場合、たとえば夕飯のおかずにメンチカツが食べたいと考えたとして、一言も言葉にしないのですが、うまくいけばその日の夕飯に、少し遅れても数日中にうちの奥さんがメンチカツを用意してくれています。あ、申し遅れましたがぼくには奥さんがいます。

 こういった夕飯のおかずやおやつなど、「どうしても欲しい」というほどではないものは、かなりうまく引き寄せています。おかずの種類やおやつなどは「どうしてもそれじゃなきゃヤダ!」ってこともないので、強い欲求=執着にならなくていいのだと思います。

 人それぞれの方法があるので、どれが正しいということではないのですが、ぼくの体験からだと、「欲しい」ものはその「欲しい」という思考を手放せるかどうかだと思っています。慣れてる人だと、「欲しいものは当たり前に手元に来る」というような感覚の方もいらっしゃるので、「引き寄せの法則」に対する信頼の問題なのかもしれません。そういう意味では、ぼくはそれほど信頼できていないのかもしれません。思っていたより多少スムーズに手に入った、ということはあるので、いくらか法則を利用しているのかもしれませんが、完全に利用しているとは言い切れないのがリアルです。


 ここからは「引き寄せの法則」の仕組みについてのぼくの推論です。実際にシステムを見たり確認できるわけではないので、あくまでも推論であることをご承知おきください。

 「創造主」=「魂」=「愛」=「心」という公式を何度も書いています。

 詳しくはそれぞれのお話を見ていただきたいのですが、魂というのは空気のようなもので、ひとりにひとつということではなく、肉眼では見えないですが、人と人のあいだを埋め尽くすように存在していると考えています。海の中の水滴みたいなイメージでしょうか。海が魂で、水滴が個人です。各々がその魂の中で、自我をもって「自分は自分である」と信じて存在しています。でも結局は海を構成する要素のひとつでしかなく、自分も周囲も大きくまとめてしまえば海、という感じで魂というものが存在しています。

 つまり魂というのは、すべての人とつながった共有財産のようなものであって、けっしてバラバラではありません。厳密には動植物も無機物も繋がっていると考えています。

 そして、思考は脳の仕事、気分は心の仕事ですが、「心」もまた、先ほどの公式にあるように魂と同じものです。思考は脳の仕事なので物質世界の担当、気分は心の仕事なので非物質世界、言葉を変えれば霊的な世界、魂の世界とも言えますが、そちらの担当です。

 「○○が欲しい」という欲求は思考で生まれます。なのでこれは脳が仕事をしています。脳は肉体の一部ですし、物質世界の担当なので、物理のルールに従ってしか物事を動かすことができません。この段階で止まると、ただただ欲求だけが溜まっていきます。

 ここに「心」=「魂」の持っている力を足します。心も魂も肉眼では見ることができないグループですから、非物質世界の担当です。また創造主でもありますから、ポジティブしか知りません。そして魂は、先ほども例えたように、海のようにすべての水滴を覆いつくしていますから、どこの誰にでも何にでも繋がっています。

 思考の力だけでは目に見えないエネルギーを使うことはできませんから、心と思考を一体化させることが必要になります。心は創造主ですからポジティブ、つまり肯定しかありません。このポジティブは未来永劫変わることはありませんから、変えられるのは思考ということになります。

 そこで「すでに手に入れた気になる」という思考が必要になってきます。「○○が欲しい」という思考は、「○○を持っていないから欲しい」という思考が原点になっています。本音である「持っていない」だけが肯定されていますから、持っていない状況が引き寄せられて、続くようになるのです。

 このとき、「○○が楽しい」とか「○○がいつも自分のそばにある」など、肯定的な思考に変えておきます。手に入れることが目的ではなく、手に入れたその後の気分に焦点を合わせます。

 ここで大切なのは、非物質世界に働きかけるということですから、手に入れるという物質的行為そのものではなく、手に入れた後、どんな気分になるかという心の状態がポイントです。ですので、その気分を強くイメージします。

 思考にある欲求と、ポジティブしかない心をそろえることで、肉眼では見えないエネルギーが走りだし、この世界のすべてに行きわたることになります。

 大げさに聞こえるかもしれませんが、水たまりに小石を投げれば波紋ができます。その水たまりがあまり大きくなければ分かりやすいんですが、波紋というのは水たまりの淵まで行くとまた戻ってきます。そして最初のインパクト、小石の落ちた地点に戻ってきます。

 それと同じように、すべての世界に繋がった「心」=「魂」に乗った欲求は、それに必要な状況や状態を引き連れて戻ってきます。もちろん戻ってくるのは気分です。戻ってくるのは気分だけですが、その気分になるために必要な条件がなければ、気分も生まれません。仮にこれが車だとすると、その車に乗らなければ、その車に乗っている気分を味わうことができませんから、当然、車も一緒にやってきます。

 これが「引き寄せの法則」のぼくなりの理屈です。


 ぼくにとって「引き寄せの法則」はこんな理屈を考えてするものではなく、日常的にポジティブな気分で生きておくことで、欲しいと思った瞬間に脳と心がひとつになり仕事をしてくれる、というような、特別でもなんでもない感覚です。

 あと、ぼくの場合ということになりますが、楽器関連以外に強い欲求もないので、どちらかというと「類は友を呼ぶの法則」で日常は足りています。欲しいものが手に入らなくても、必要なものが揃っていれば、あとは幸せに、楽しく生きることができています。なので、「引き寄せの法則」を意識することはほとんどありません。

 本当の幸せや楽しい人生というのは、モノでは手に入りません。といういうことを、このお話の最後にお伝えしておきます。

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