第27話 ものは考えようだから考えよう

 以前のお話で「出来事に意味はない」ということを書きましたが、その続きのようなお話です。

 出来事そのものに意味はなく、それを体験した人の色眼鏡によって意味が生まれます。色眼鏡は、その人が日常生活の中でどんな思考、意識をしているかによるので、出来事の意味は人それぞれ違ってきます。

 たとえば、「ボールが転がっていく」という言葉を聞いてなにを連想するでしょうか。スポーツが好きな人なら各種球技のワンシーンを思い浮かべるかもしれません。でも、車道にボールが転がっていく様子を思い浮かべる人もいるでしょうし、体育の授業中に好きな異性のところに転がっていくボールをイメージする人もいらっしゃるかもしれません。

 こんな短い文章からでも、楽しいことも不安なことも連想することができるのですから、日常で起こる様々な出来事となれば、本当に人それぞれ、十人十色の色眼鏡が生まれます。

 こう考えてみてください。ボールが転がる、という話の連想でも、人それぞれ連想が違う、という見方もできますが、同じ人がいろいろなものの見方、連想をしているとも考えることができます。楽しくも見えるし、不安なことにも見える。

 人生においてとても大切なことですが、幸せというのは待っていてもやってきません。また、追いかけて捕まえるものでもありません。では幸せとはどんなものか。

 幸せはいつも目の前にあります。「今・ここ」を生きていれば、そのことに気づけるようになります。もちろん幸せの定義にもよりますが、基本的な幸せは、いつも目の前にあるのです。

 究極的には「生きている」ことが幸せなことなのですが、たとえば、目覚めの気分がいいとか、出掛けるときに天気がいいとか、ご飯が美味しいとか。これらを当たり前のことだと思っているなら、ぜひ戦場や大震災の現場に出掛けてみてください。どれだけ当たり前のことではないか、幸せなことかをすぐに理解できると思います。

 人は慣れる生き物です。平穏で幸せな日々を過ごしていることも次第に慣れていきます。しかし、その平穏で幸せな日々は、決して当たり前に存在するものではなく、奇跡の積み重ねの上に成り立っていることを覚えておいてください。そういう視点を持てば、実はものすごく平穏で幸せに生きている人がどれほどいることか。

 話がそれましたので戻します。

 出来事の意味は、それを体験している人の視点と色眼鏡によって完成します。

 言葉を変えれば、どんな出来事でも、幸せだと決めればそうなるということです。

 日常的によくある光景も、普段から行っている行動も、第三者の視点で見ればとても幸せに見えることもありますし、本当に幸せだったりします。

 逆にネガティブな出来事を体験しているときには、体験して学んでいるときだと考えると、何らかの人生スキルがすこし上がっているわけですから、それはそれで幸せですし、今後のもっと大きな幸せにつながっているかもしれません。

 人生にムダなことは何ひとつ起こっていません。ネガティブな体験、たとえば、失敗したこと、うまくいかなかったこと、嫉妬してしまったことなど、すべてが学びのタイミングです。それを「失敗した」という考えでバッサリ切ってしまうのは、そのチャンスをムダにしてしまっているだけです。 

 そんなネガティブな体験の真っ最中は厳しいものであったり、つらいものであったりするかもしれません。だから後でいいんです。とりあえずその出来事を片付けてから、怒ったり恨んだりしてしまったことを反省して、なぜ怒ったのか、なぜ恨んだのかを考え、今後につながるようにすればいいのです。これで、次に同じようなことが起こったとき、簡単に処理できるようになります。この手の出来事に対処するスキルが身についたということですから、プラスの出来事になっていると思いませんか。


 すべての出来事や物事に意味がないということは、逆に言えば、どんな意味にでも出来るということです。中には限界のある出来事もあるかもしれませんが、たった一つの意味だけで成り立っている出来事は「死」以外に存在しません。

 ひとつの出来事に対し、見たままの状況や状態を意味とするのではなく、もっと多角的な視点を持つことによって、すこしでも自分にとってポジティブな意味を持たせることが理想的です。

 最初の「ボールが転がっていく」というお話でもそうですが、それまでの体験や知識によって、導き出されるイメージはさまざまです。このさまざまな視点を日常生活の中に取り入れて、自分にとって最もポジティブな意味をつけることが、このお話でいう「ものは考えよう」です。

 思考の中にネガティブなものがあるというのは、人生をネガティブなほうに進めてしまう基本です。思考の内容はいつでも人生の羅針盤です。こまごまとした思考のことではなく、思考全体を見渡したときに、ポジティブ傾向かネガティブ傾向か、ということがポイントです。

 こまごまとした思考の積み重ねで全体像が決まるわけですが、全体がどっち寄りなのかということを把握しておくことがまず最初です。

 この段階でポジティブ寄りであれば、こまごましたところにあるネガティブな思考を変えていけば、どんどんポジティブな人生に変化していきます。ちょっとした体験や思いつきなどが、幸せな体験に引き合わせてくれます。

 逆に、思考の全体像を見たときにネガティブ寄りであれば、まず自分を信頼するところから始めなければなりません。

 以前から何度も何度も書き続けていますが、あなたはあなたの人生の創造主です。そして次の「今・ここ」を創造し続けています。あなたが意図的でなくても、過去に出来上がった無意識の意図が人生を創造しているので、自覚のないまま人生を創造していることが本当に多くあるんです。

 放っておいても、生きているあいだは無意識の意図によって人生は創造されていきます。しかし無意識の意図は、そのときの体験や思考を意図にしてしまうので、もし怒りの感情に支配されていれば、いずれまた怒りに支配されるような体験を引き寄せてしまいます。

 あなた自身が、あなたの次の瞬間からの人生を創造している、ということを理解したとき、良くない考えのせいで人生が上手くいかなくなる、ということも理解できるはずです。それでもネガティブな思考を持ち続けようと思いますか?

 もしポジティブな思考に変えようというのなら、まずは自分が人生を創っていることを理解して、その次に、すべての体験をポジティブな意味で捉えてください。

 元から楽しかったり幸せな出来事はそのままで結構です。その体験をしっかり味わってください。逆に不安や心配になったり、怒りや苦痛を感じる体験をしてしまったときは、そこに人生の学びがあると考えて受け入れてください。さらにできればですが、学びのチャンスがあったことに対して感謝の気持ちを持てるとさらに良いです。

 人生で起こる体験にムダはひとつもありません。ネガティブな体験があったということは、過去のどこかで自分がネガティブな思考をしていた証拠であり、今もまだその思考がある証拠でもあります。例えるなら、「A」というネガティブな思考が脳内にあるから、「A」に似た体験に反応できてしまうわけです。脳内の辞書に「嫉妬」という言葉がなければ、「嫉妬」という言葉の意味さえ分からないんです。分からなければ、体験しても気づきませんし、自ら発信することはできません。

 そんなネガティブな思考がいつまでもあるようなら、またいつかのタイミングで同じようなネガティブな体験をすることになります。気づかせてくれたと考えて、感謝して、その思考を終わらせるタイミングです。

 すべてのネガティブな出来事は、あなたの中にそういう思考があることを示しています。それが体験となって現れるということは、「その思考を手放しなさい」と目に見えない世界からメッセージが届いているということです。このメッセージを受け入れたとき、あなたの学びとなります。

 繰り返しますが、すべての出来事は多角的な視点でとらえることができます。

 多角的な視点の中には、あなたにとってすこしでもポジティブな意味にすることができるものもあるはずです。日常のすべての出来事において、ポジティブな意味をチョイスするようにしていけば、思考の全体像はポジティブ傾向になります。そうなれば、無意識の意図ですらポジティブになり、「今・ここ」で体験することは圧倒的にポジティブなものが増え、ネガティブな体験が姿を見せることは稀になります。


 ポジティブな意味で捉えるようにするのも、最初のうちは意識的にしなければできませんが、続けていくうちにやがて慣れてきて、たいていのことは自然にポジティブな意味で捉えるようになっていきます。

 人生をより良くする方法は、どれでも最初は意識的にしなければできません。それまでの習慣や癖を変更するわけですから、なんとなくで変わることはありません。それでも人ってすごいもので、いずれそのすべての変更に慣れてしまいます。そのときの自分を想像してみてください。間違いなく幸せな人生を送っています。

 不安も心配も、怒りも恨みも、妬みもひがみも、すべて「ものは考えよう」です。わざわざ自らを苦しめるような思考はもう終わりにしましょう。

 あなたの魂は、いつだってあなたが幸せであることを望んでいるのです。

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