第26話 天国と地獄と死

 ぼくはまだ死んでいないので、このお話は「理論スピリチュアル」ということでご理解いただき、ご承知おきの上、読んでいただけると助かります。


 善人が亡くなると天国に行ける。悪人が亡くなると地獄に行く。

 昔から日本で伝わっているお話です。

 真っ向から否定している方は別にして、あまり意識されていない方は、思考のどこか片隅で、そうなのかな、と考えている方もいるのではないでしょうか。

 しかし、ぼくの認識では存在していません。

 これからその理由を並べます。

 まず、善人と悪人という区別は、法律によるものはありますが、「魂」という立ち位置から考えれば、そんなことはありえないのです。

 以前にも書いていますが、魂は大きな綿のひとかたまりみたいなもので、綿の一部をつまんでひねってツノ状にしたものが個人の魂です。そして大きな綿を「創造主」と呼びます。つまり、すべての人が創造主の一部なわけですから、そこに善悪は存在しないということになります。

 ではなぜ犯罪者が生まれるのかというと、「自我=エゴ」が神性を凌駕してしまっているためです。大きな綿の例で言うと、ツノに塗った色がエゴです。

 一般的な意味でエゴというと「自分勝手」というイメージがあるかと思いますが、その自分勝手さは恐れから生まれます。負けたくないから、不安だから、下に見られたくないから、そして究極的には死にたくないから、という恐れです。

 簡単にまとめると、「本来は創造主であり愛のかたまりだけど、エゴ=恐れがそれを超えてしまった」ということになります。創造主は自由を妨げるようなことはありませんから、幻想の世の中で、否定的な思考がいっぱいになったとき、人は犯罪者になる場合があります。そういう意味では誰でもそうなる可能性があるとも言えます。

 なので、「魂」的な意味では善悪という区別はなく、この世的に、生きている環境や状況によって善悪がある。これがまずひとつめの理由です。

 ふたつめの理由としては、ムダ、です。

 一般的なイメージの神であったとしても、人類を創ったというのなら、最初から善悪のない完璧を期すのではないでしょうか。完璧でなければいったん削除して新しく創ればいいだけです。そもそも全知全能の存在が人類創造を失敗してる時点で違和感を覚えますし、あげく、失敗した人間を反省させるっていう意味が分かりません。反省すべきは失敗作の人類を創ったほうではないでしょうか。

 完全体のような人間を創造して、地球を支配させているとしたら、地上はとっくに天国や楽園であるはずです。魂だけの存在に戻ってから、幸せであったり後悔させたりする、というところにムダを感じます。

 創造主の視点で言えば、誰の人生にも触れることはありません。創造主はただの傍観者です。そうでなければ、その人の自由を侵害してしまいます。どんな幸せを体験するか、どんな喜びを味わうのかという、自由の結果として得られる、この世に生まれてきた意味を失ってしまいます。

 この世に向けて創造した人間に対して、あれこれ指示を出して人生を歩ませたら、その人が生まれてきた理由はありませんし、この世はもっと平穏で完璧な姿をしているはずです。しかし現在、そのようには見えません。

 つまり創造主は人間の自由意思を尊重し、うまくいっても失敗しても、その人の責任として人生をより良いものにする糧となるようにしている、と考えるほうが素直な気がします。

 以上、大きく二つにしましたが、天国や地獄というものはない、というぼくだけの理屈です。


 臨死体験をされた方などが、トンネルを抜けたり、お花畑や草原を見たりすることがあります。これを天国というのであればそうなのかも知れませんが、ぼくすこし違った見方をしています。

 まず、一般的にあの世と呼ばれるエリアですが、それは今ある知識の外のエリアとして存在していると考えています。言葉を変えれば、あの世という大きな風船の中にこの世という小さい風船がある、または、海の中でそこだけ塩分濃度の違うエリアがある。ほぼ同じだけどすこしだけ違う、という感じです。

 多くの人が、この世の次にあの世がある、みたいな連続性で考えていると思いますが、最初からあの世の中にこの世が含まれています。この世を優先、あるいは主軸として考えるのは、すべてが生きている人の主観で考えられているからです。完全に死んで戻ってきた人の話なんて、ほとんどありませんから分かりようのないことかもしれませんが。でも視点を変えると違って見えてきます。

 あの世の中にこの世がある、そう考えるとこの世の周囲というより、この世と同じ座標にあの世も混ざっていることになります。この世とあの世が混在しているのなら心霊現象も驚くことではなくなります。いつも一緒にあるということですからね。それを感じ取れるセンスのある人は、残留思念のようなものを受信して、脳内で立体的な画像を結ぶのでしょうし、そういうセンスが弱い人でも空気の変化のような感じで受け取っているのではないでしょうか。重いとか冷えるとかですね。

 座標的に考えると、ぼくはあの世と呼ばれるエリアが、いわゆる多次元のようなエリアで、そちらが主であり、この世は末端のエリアだと考えています。

 そう考えると、あの世というエリアに天国や地獄しないということになります。

 そもそも創造主とも呼ばれる大きなかたまりである「魂」からエネルギーをもらっている人間が、その肉体を捨てたときに残るのは、個人用にあずかった魂です。個別に存在しているわけではなく、大きなかたまりから伸びた触手の先のようなものですから、しばらくの間はこの世での記憶を持って仮の個人用魂として残りますが、やがて、大きなかたまりである元締めの魂に戻ります。創造主に帰るということです。

 しかしこれが天国というわけではなくて、大きなひとつの意思の中に戻るだけなのです。「今・ここ」だけに存在するもの、「愛」しかないもの、肯定する以外のことを知らないものに戻ります。

 そこには肉体がありませんから、当たり前ですが脳もありません。それはエゴがないことを意味しています。エゴないということはネガティブ思考はできないということになります。この状態はつまり、一般的に言われる「神」の状態です。神そのものに天国や地獄はありません。


 ではどこに天国や地獄があるのか。

 そもそも空間としての天国や地獄は存在しません。そこにあるのはエゴや信念、思い込みなどの具現化された世界です。それが魂という存在になった人によって、天国になったり地獄になったりします。

 生前、潜在意識の底の底が、幸せや喜び、楽しさなどに満ちた状態であれば、亡くなったあとに経験するのは、その潜在意識の具現化された空間です。幸せや喜びに満ちた思考の人が、「天国とはこういう場所である」という思い込みを持っていたら、まさにその人が考えていた天国の様子が亡くなったあとに見る場所になります。

 逆に生前、潜在意識の底の底が、怒りや恨み、妬みやひがみなど恐れに満ちた状態であれば、亡くなったあとに経験するのは、その流れを汲んだシチュエーションや光景が広がる場所ということになります。それを地獄と呼ぶことは可能だと思います。

 そして、ネガティブな思考を持っているかぎり、創造主に帰ることはできません。創造主はネガティブを知らないので受けつけられないのです。そうなると死んではいるけどその先に進むことができませんから、ある意味、時空のはざまをさまようことになります。いわゆる未成仏霊と呼ばれるものです。

 その人の思考によって、つぎの「今・ここ」の環境が違ってくるのは、生きている間だけの話ではなく、肉体を離れても同じです。「魂」の作用ですからね。

 話はそれますが、大金持ちの周囲にはおおよそ大金持ちしかいませんし、不良の周囲にはおおよそ不良しかいません。「類は友を呼ぶの法則」ですが、その人が持っている思考や意識、意図などは生きていても、肉体がなくても同じ効果があります。

 話を戻します。

 とくに、自分の死を受け入れられない人の思考は、人生で最もインパクトのある瞬間が維持されます。とは言え、結局は死の瞬間が人生最大のインパクトになるだろうと思います。

 よく「死んであの世に持っていけるのは思い出だけ」などと言いますが、まさにそれで、人生最大のインパクトが楽しいことや幸せ、感謝などであれば、ぼんやりしたものかもしれませんが、そのときの温かい気持ちのまま、その最も幸せだった思い出の中に浸ったまま、創造主に帰ることになります。仏教で言うところの成仏です。

 人生最大のインパクトが、仮に自殺の瞬間だったりすると、理由はさまざまでしょうが、けっしてポジティブな思考や意識ではないでしょう。それでもそこのポイントで維持されますから、自殺の瞬間を繰り返します。心霊現象の体験談で、自殺の名所において何度も自殺を繰り返す霊の話をいくつか聞いたことがありますが、おそらくこういった理由ではないかと思います。これもまた地獄です。

 死んで楽になるのは肉体的な五感だけで、思考や意識、いわゆるメンタルというのは何も変わりません。目に見えるものの形がなくなるだけでは、目に見えないものの処理はできません。なので、自殺はお勧めしません。死ぬ覚悟ができるなら、逃げるなり、戦うなり、他の道を模索する方向に使ったほうがいいと思います。

 せっかく創造主が貸してくれているだけの肉体です。なるべくきっちり最後まで使ってお返ししたいものです。

 肉体をきっちり使っていれば、その思考や意識もしっかり整っていくはずです。

 物理的・物質的なことだけでなく、信じられないとしても、お試し気分で構いませんから、目に見えない世界の仕組みや理屈を利用して、エゴを抑え、思考や意識をポジティブなものに変えていき、自分にとって有益な意図をしてみてください。

 あなたがポジティブ思考であれば、あの世はかならず天国です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る