第20話 誰にもある「自分だけのモノサシ」
これまでのお話で何度か出てきた「自分だけのモノサシ」についてです。
エゴと思い込みがタッグを組み、自分の中でしか通用しない正論を作りだします。それが「自分だけのモノサシ」です。
自分の中でしか通用しないのですが、本人はそれが一般常識や普通のことと本気で考えているので、他人にも遠慮なく振り回しがちです。振り回される側は、ドン引きですし、理解することができない場合もあります。それぐらい、自分の中でしか通用していないことです。
なぜこんなことが起こるのかというと、おそらくもっとも大きな理由として「生きる」ということを学んでいない、ということだと思います。多くの人がそんなことを考えもしないでしょうが、知らずに学んでいることも多々あるのです。
他人に迷惑をかけないようにとか、他人との摩擦を起こさないように、と考えて生きている人は、モノサシを振り回すことはありません。ある意味、相手を重んじているからそういう考え、行動になるのです。それが自分だけの考えであると気づいていれば、ドン引きされて恥ずかしい思いをしたくないというのもあるかもしれません。
しかしほとんどの場合、本人の中ではド正論のつもりでいますから、「自分は正しい、ゆえにお前間違い」という感覚でいます。そんな考えでいれば、まわりがどれだけイヤな気分になろうと、ドン引きしようと、モノサシを振り回しまくります。
そんなことが続けば、「あなたとは話ができない」と、周囲の人たちが離れていきます。あとに残るのは、そのことを理解できる、同じ思考を持つ人だけです。それでは孤立してしまいますし、人生の可能性を狭めてしまうので、出来れば「自分だけのモノサシ」を手放す、せめて最小限度にしておくことをお勧めします。
そもそもこの世に正しいことは法律やすべての人が合意したルールだけです。それ以外の常識やモラルなどには罰則がありませんから、守らなくてもいいと言えば守らなくてもいいわけです。とはいえ、そこで持論を振りかざすのもまた「自分だけのモノサシ」ですから、社会の一員として生きていくのであれば、よく考えてから発言や行動をしたほうがいいでしょう。
常識は時代とともに変化しています。昭和の常識は令和の非常識になってしまった例もたくさんあります。常識はあくまでもその瞬間の多数決の結果です。誰もが賛成しているわけではないのですが、大多数が「そういうものだ」と言い始めれば、それは「普通のこと」になってしまいます。普通となればそれは常識と名を変え、誰もがそれに従わなければいけない、という空気になっていきます。
しかし、なぜそうなるのかを考えることもなく、多くの人がそうだというのできっとそうなんだろう、ぐらいの考えで従っている人がどれほどいるでしょうか。元々は多数決であり、コトによっては、その発端が何なのかを知ることもありません。それが常識の正体です。実体のない、幻想のような存在です。
またモラルもそうです。道徳や倫理と訳されますが、これも人によって違います。
正式に「こういう場面ではこうしなさい」というルールがあるわけではなく、あくまでも「なるべくこうしたほうが望ましい」という考えです。
道徳や倫理というのは、場面やタイミングによっても変わりますし、万能というわけではありません。もちろん本当に正論ということも多くあります。ですがそれは、個人個人が脳の片隅にでも用意しておいて、個人個人が守ったり、そのように行動したりするべきもので、他人に言われるようなことではありません。
「道徳的にあり得ない」、そう言いたくなる世の中ではあります。でも法に触れていなければ警察も動くことはありませんし、司法の場で裁くこともできません。そうやって多くの事件を未然に防ぐことができずにいるのです。あってはならないことですが、実際に報道されている事実です。モラルは自分の生き方のルールでしかないということです。他人に影響を与えようとして振りかざすものではないのです。
「自分だけのモノサシ」は、けっして周囲に影響を与えるものばかりではありません。自分の人生の道幅を狭めてしまうこともあります。
「人生の道幅」を簡単に説明すると、誰でも人生における可能性は無限大です。何でも手に入れることができて、どんな人間になることもできて、どんなことでもできる、それがすべての人の誕生の瞬間には用意されています。あくまでもスタートラインです。そこから自分の理想や希望によって、何を手に入れ、どんな人になって、どんなことをするかを意図して未来の自分につないでいきます。その「何を」や「何でも」や「どんな」という部分が人生の道幅です。
幼いうちはエゴや世間体やしがらみなどがなく、無限の可能性の中で肉体的、精神的成長をしていきます。その成長が成熟していくにつれ、今度は無限大だった可能性がどんどん狭まっていきます。それは学校や親などが、言葉は悪いですが、社会の歯車として生きることを推奨し教育するからです。もちろん教師は公務員であり、社会の歯車を製造することが仕事です。親たちは自分たちが子供のころ、当時の教師からそう学んで育っているので、それが正解だと信じている人がほとんどです。
そうやって社会の歯車としての常識やモラルを教え込まれた結果、無限大だった自分の可能性は、片側数車線の狭い道幅の中で、細かな選択をしながら生きていくことになります。いつも同じような景色の中にある人生という道を、終焉までひた走ることになります。
もちろん、社会が悪いということではありません。社会で活躍してくれる人がいてこそ、すべての人の生活が成り立っているのですから。ただ、人生の道は、元々無限です、ということをお伝えしています。
いま日常を生きる中で、息苦しいと感じたり、あれやこれやのプレッシャーを感じたりしている人がいたら、そこだけが道ではないということをお伝えしたいのです。
道の狭さは、「自分だけのモノサシ」による幻想です。おそらく常識と信じていることや、世間体、しがらみなどによって、視界を狭められていると思いますが、その幅は実際のものではありません。普通ではない発想で世界的に活躍する人たちも多くいます。その人たちは本来の視界を取り戻して、自分で人生のすべてを背負って歩きだした結果です。
周囲からの圧力で作られてしまうモノサシもあれば、その圧力を受け入れることで自ら作ってしまうモノサシもあります。自ら作ってしまうモノサシは洗脳に近いもので、自ら壊すことは難しいかもしれません。急にすべてを投げ出して、まったく知らない場所で考えたこともない生きかたをするなんて、勢いがあれば、誰にでもやればできることかもしれませんが、やはり恐怖も感じてしまうでしょう。
まずは「今・ここ」において、自分がそうしたいと思ったことをやってみてください。そしてここがポイントですが、「楽しい」と感じられる範囲でやってみてください。楽しくない場合、どこかにネガティブ要素が紛れ込んでいるので、そうしたいと思ってやっても上手くいきません。逆にひどくなる可能性すらあります。
すこしずつ「自分だけのモノサシ」を壊していくか、縮小させるためにやれることは、「今・ここ」に生きて、すべてを「受け入れて許し」、「感謝する」ことです。
「今・ここ」に生きるということは、つねに過去は消失しているという感覚です。これで前例踏襲をすることができません。「今・ここ」に存在する自分が、作戦や対応を考えて行動するしかなくなります。未来も存在しないので不安や心配もありません。やってみるしか答えは出なくなります。
また「受け入れて許す」ということを意識することで、モノサシの出番を減らします。誰かが自分とはまったく正反対の意見であっても、一度ちゃんと聞くという受け入れをして、譲れるところは許す、ということができれば、摩擦もなく、ちゃんと話し合うことで落としどころも見つかります。そのほうが人間らしくもあります。
そして「感謝する」ことは、いま新しく学べたということですから、固定観念的に自分が正しいという、偏った価値観を手放すことになります。感謝できるということは、客観的にも状況を見ることができているということなので、「自分だけのモノサシ」が自分の外に出ていないということの証拠にもなります。
「自分だけのモノサシ」のような一方的な思い込みによる決めつけは、周囲にも自分にもイヤな思いとイヤな時間という良くない影響しかありません。モノサシは自分の意見の押しつけであり、相手や状況を無視した決めつけなのです。誰も一方的に決めつけられて良い気分にはなりません。意見は意見としてちゃんと話し合える環境の中で出せばいいのです。自分とまったく同じ思考の人などいないということをきちんと理解して、「自分だけのモノサシ」を完全に手放すことが理想的です。
しかし、人それぞれにこだわりもあり、モノサシを完全に手放すことは難しいのです。こだわりが悪いわけではありませんから。だからこそ、普段からモノサシを小さくしておくことが大切なんです。そして自らモノサシを振り回さないように心がけることです。どうしても譲れない部分だけ、モノサシが出るぐらいでいいのです。
それだけで、あなたが見る人生の視界という可能性を、大きく広げることができますし、社会の中でも摩擦を起こすことが減っていきます。社会の一員という意味では、賢く生きるということに繋がるかもしれません。
自分の常識やモラルは世の中と同一ではなく、また、自分が勝手に抱えている古い考えである、ということをきちんと理解しておけば、自分から誰かと争うようなことになったり、場の空気を悪くするようなことはありませんし、可能性の広がった人生は、ただただ楽しく、幸せの体験を積み重ねます。
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