第18話 幸せであることが本当の日常

 人は他の生き物と比べて思考力が高く余計なことを考えてしまうのと同時に、肉眼で見えるものに意識を奪われます。そのため本質を見逃しやすくなっていますが、本来、人は幸せな存在です。元々持っている才能のひとつ、みたいな感じで幸せです。

 どんな生き物も幸せですし、それを維持しようとします。そもそも動物や植物には昨日や明日という感覚は乏しく、「今・ここ」だけを全力で生きていますから、余計なことを考えることがありません。本能と言えば本能ですが、それ自体が幸せであるための条件になっています。

 人も動物のように生きることができれば、すぐにでも幸せがどんなものか分かり、それを体験できるんですが、思考力の高さのせいで、事実であることと想像の境目が曖昧になり、余計なことをいろいろ考えては心配したり不安になったりしています。

 わざわざ苦労しようとしたり、苦痛を味わったりしようとするのは、一部の宗教家と一部のマニアの方ぐらいです。苦痛などは無いに越したことはありません。人間以外で考えれば、そんな生き物が存在しないと分かってもらえると思います。

 しかし人はわざわざ自らの意思で苦痛や苦労を選択し、自分の人生に取り込んでいます。さらに、それが人生だという人もいますし、人生とはこういうものだとあきらめてしまう人もいます。しつこいようですが、人間以外の生き物にそんな考えはありません。

 なぜそんな考えになってしまうのでしょう。

 多くの人は、人生を自分でコントロールしていることに気がついていません。親や教師が教えてくれるわけではありませんし、自分で気がつくにはいろいろな面で怪しくて敬遠します。人生をコントロールする、などというのは、怪しげな団体や霊感商法ぐらいのものです。どういうことかを理解できたとしても、そのまま受け入れることはできないだろうと思います。

 そのことを踏まえた上で、今書いています。ぼくはお金をもらうわけでもないですし、何かの団体に関わっているわけでもありません。あくまでもぼくが生きてきた中で見つけた答えのようなものを書いているだけですので、あまり疑り深くならず、軽い感じで読んでいただければ嬉しく思います。


 人は自分の人生をコントロールしているというのは、厳密に言うと、「自分の思考をコントロールすることで、自分を幸せな方向へ導く」ことです。自分以外の他者の力は必要なく、単純に今までの思考から幸せな道を進む思考に変えるだけの話です。

 スピ的なものを学んでおられる方や、心霊体験が多数ある方などはすでに幸せ思考をお持ちで利用されているかもしれません。しかし多くの人は、これまで生きてきた経験や体験、身につけた知識などの集合体として思考を組み上げています。これは自分の目が届く範囲、手が届く範囲の体験や経験、興味のわいたことのみの知識で構成されているはずです。まったく興味のないことに手を伸ばすことはなかなかないですし、本を買ってまで読もうなどとは思わないでしょう。ということは自分の興味や好みだけで思考が出来上がっている、ということになります。

 ここで重要なのは、興味の有無や好き嫌いに関わらず、今あなたは生きている、ということです。

 では「生きる」ことを学んだことがあるでしょうか。おそらく意図的に学ぶ人はいないのではないかと思います。食事をして、適度な運動をして、排泄をして、ぐっすり眠っていれば、人は生きていて、成長もできてしまうからです。とりあえず生きている、だから「生きる」ことは学ばなくてもなんとかなる、と考えてしまうのではないでしょうか。しかしそれはあくまでも肉体的、物理的な意味での成長のお話であって、「魂」=「心」の成長への影響はかなり少なめです。魂の学びがすくないがゆえに、人生が素晴らしいものだと思えなかったり、楽しくなかったり、あるいはつまらないものに感じてしまうのです。

 人生は素晴らしいものです。ただ、人生のどこをどう見るのか、ということや、体験をどう受け止めるのか、そういうことによって人生の見え方は大きく変わります。

 受け取る側の思考がネガティブであれば、どんなことでも否定的なこととして受け入れてしまいますし、ポジティブであれば、どんなこともポジティブなことになってしまいます。それは、出来事や物事、体験、状況や状態などに元々意味がないということです。ただ起こったことであって、それをどう捉えるかは自分次第なのです。

 たとえば、部屋で画鋲を踏んでしまったとしましょう。「痛い」という事実は変わりません。これは思考や心の状態ではなく、足の裏にあるセンサーからの信号を受けただけの反応です。この時、「どうしてこんなところに画鋲があるんだ。誰だこんなところに落としたの。画鋲を落としたやつは許さない」と極端ですが、こんな思考をした場合、今後しばらく、画鋲を落とした犯人を見つけるまでイライラし続ける可能性があります。そこに意識を集中することでいつまでも痛みがあるかもしれません。

 まず「こんなところに画鋲が」と言っても、画鋲を踏んだ事実がなくなるわけではありませんから、考えるだけ無意味です。素直に手に取り、安全な場所へ移動すればいいのです。

 そして、「誰だこんなところに」という思考は責任転嫁です。自分かもしれませんし、何かの拍子ということもあります。ほかの誰かだったとしても、画鋲が落ちていた事実は変わりません。

 「落としたやつは許さない」のは執着です。画鋲を踏んだ事実はすでに過去のお話です。許さないことや犯人が見つかったところで、足の裏の痛みが引くわけではなく、犯人がいたとしても謝罪を受けるだけです。そんな時間軸で止まっているより、先に破傷風などにならないように消毒をすべきです。

 このように、ネガティブな思考は、その場で考えかたを変えるだけで痛みや怒りの時間に留まることなく、建設的に人生を前へ進めていくためのものなのです。

 人生をコントロールするためには、時間軸を止めてはいけないのです。止まっているものをコントロールしたところで現状維持です。それがあなたにとって苦痛の時間帯であれば、それが続いていくだけです。


 魂はつねにポジティブです。「創造主」であり「愛」でもある「魂」ですから否定という観念を持っていません。さらに「魂」は「心」でもあります。つまり心もずっとポジティブな存在であるということです。

 持ち前のポジティブさのジャマをしているのが、脳の中で生み出される思考です。

 イライラしたりイヤな気分になっているときは、心と脳が同調してなくて摩擦を生みだしているときです。摩擦が不愉快なのです。

 思考は、これまでの積み重ねてきた信念や考え方のクセなどによるものが大きいですし、その瞬間の状況や自分の置かれた立場などによっても、その場で変化することもあります。もし積み重ねてきたものがネガティブな信念や考えかたであれば、いつもポジティブな心と折り合いがつかないので、つねにイライラしてるとか、気難しいというキャラクターになっているのではないかと思います。

 心がいつもポジティブであるということは、本当に本当のところ、あなたは、自分の「今・ここ」が幸せであることを望んでいるのです。しかしネガティブな思考のせいで、心が自動的に幸せに向かおうとしているのにブレーキをかけている状態です。いつもイライラしている人が幸せになれそうもないのは、誰でもわかると思います。

 積み重ねてきたゆえに難しいことかもしれませんが、ネガティブな思考は、けっして自分を幸せにすることはないですし、つまらない、楽しくない時間を重ねて生きていくだけなので、早めに手放したほうがよいでしょう。イライラしても一分、笑っていても一分です。この一分の積み重ねが、ふと振り返ったときに幸せな良い人生だったのか、そうでないのかの分かれ道です。


 「今・ここ」に生きる。「受け入れて許す」、「感謝する」

 「いつも、かならず、ちょっとだけ、幸せに生きる」

 このことを自分の人生のルール、生きかたのルールにするだけで幸せになります。その人の性格や本気の度合いなどにもよりますが、一か月もあればその片鱗を見ることが出来ると思います。これが人生をコントロールするということです。

 これらのルールが本当に身についたら、意識せずに自然体のままルールで生きていられるようになれば、「引き寄せの法則」はある程度は意識せずに利用できるはずです。まずそれ以前に「類は友を呼ぶの法則」の効果が出ますから、あなたの周囲は、意図的でもそうでなくても、あなたの思考に沿ったモノやコトたちに囲まれていきます。たとえばあなたが無類のバイク好きであれば、幸せに生きているバイク好きたちに囲まれていきます。それが「類は友を呼ぶの法則」です。


 誰も不幸になりたいわけではありません。誰も苦痛に満ちた人生を歩みたいわけではありません。でもそうなるのは、「生きる」ことの本質を知らないからです。

 「生きる」とは幸せであることです。それは「創造主」から与えられた創造主のパワーそのものです。

 もし今、あなたが幸せでないと感じるなら、それは世の中や周囲のせいではなく、あなたが自分を不幸に導いている可能性がかなり高いです。もちろん自分の意思とは関係なくトラブルやアクシデントなども起こりますが、それも学びの時間だと考えられる人には、ありがたい時間なのです。

 「生きる」のスキルを上げてみてください。知識ではなく、日常すべての体験から得る「気分」をポジティブに受け入れてみてください。それが身についたとき、幸せであることが、自分の本当の日常だと腑に落ちるはずです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る