第16話 「類は友を呼ぶの法則」という法則

 昔から類は友を呼ぶという言葉があります。

 同じような趣味や考えを持った人が自然に集まる、そんな意味でしょうか。

 テレビなどでよく見かける、鉄道マニアや、アニメやアイドルなどのオタクと呼ばれる人たち、バイク乗りもそうですし、ドッグランの人たちもそうです。好きなもの同士集まって、それが何かの集団を形成していることは多くあることです。

 おそらくこのことわざが意味しているのは、人間の集まりのことだと思いますが、実はそれだけではなく、個人の人生にも通用することわざなんです。

 たとえば、極端なゲーム好きで、趣味はゲームしかなく時間があればゲームばかりしているような人の部屋を想像してみてください。壁の本棚には、さまざまなハードに対応したゲームが整然と並べられていて、ゲーム機本体もほとんどすべての種類が並んでいて、古いゲーム雑誌もすべて揃っている。そんなイメージはありませんか。

 もしその人が、何かのはずみで子ネコを引き取ることになって、始めはしょうがなく世話をしていても、時間の経過の中でネコの魔法にかかってしまったとします。それまでゲームだけが人生だったその人は、トイレを置き、ハンモック付きキャットタワーを購入し、壁沿いにキャットウォークをしつらえ、ちゃ〇ちゅーるを箱買いして部屋に置いている。

 類は友を呼ぶということわざどおり、頭の中はゲームのことだけ、部屋もゲームしかなかった人が、ネコが好きになって、頭の中も生活環境もネコに染まっています。

 例では極端にしていますが、こういうことが起こった人もけっこういるのではないでしょうか。夫婦暮らしが家族暮らしになるという形だけを見た場合は、必要に迫られてという部分がありますが、子供が生まれたということで、「人が変わる」という言葉どおりに、まるで別人のように生きかたが変わる人、いますよね。

 これは、思考が人生に与える影響をあらわしています。

 人間の基本のお話ですが、人は考えているとおりに行動します。それは意図的に考えていることはもちろんですが、意図的でないことも同じです。自分がそう信じていること、当たり前だと思っていることを元に行動します。

 意図的でないことは、習慣であったり、ずっとそうしてきたこと、何か強く信じていることがそれにあたります。

 たとえば卵かけご飯です。ご飯の上で卵を割る人もいれば、先に卵を溶いてからご飯にかける人もいます。ちなみにぼくは、先に茶碗に卵を割り醤油をたらして混ぜてから、その上にご飯をよそって、さらに混ぜて食べます。

 その家のやりかたですから、ずっとそうやって卵かけご飯を食べてきた人にとってはそれが当たり前でしょうし、それが正解です。どこの土地へ行こうが、誰と食べようが自分にとって正解である作り方で卵かけご飯を作るでしょう。

 意図的ではなくても、そうやって自分の中で正解だと思っていることは、自然に行動しているものです。これが正しいとか間違っているということではありません。

 意図的にこの作り方で食べる、ということではなく、あくまでも自然です。この自然にやっていることが、意図的でない行動です。

 こうやって人は思考の言いなりで生きています。

 ゲームオタクの人の例でも、好きの対象がゲームからネコに変わることで、人生が変わっています。これもゲーム中心の思考から、ネコ中心の思考に変わって、その思考のままに行動しているということです。

 これが、個人の人生に起こる、類は友を呼ぶの現象です。


 ぼくの書いているお話ではこれを「類は友を呼ぶの法則」と呼びます。

 誰の身にも同じように起こる現象ですから、法則としています。

 先ほども書きましたが、人は自分で気づいていようといまいと、思考していることに沿って行動します。趣味などは分かりやすいですが、もっと目につきにくいところでもその力は影響を与えています。

 たとえば、他人に嫉妬して、悪口ばかり言ってる人の周囲には、同意するような人しかいませんし、さらに嫉妬することや、悪口を言いたくなることが集まります。

 逆に、他人にやさしく笑顔を絶やさない人の周囲には、同じようにやさしい人や、ニコニコしてる人たちが集まります。

 大金持ちの友達はたいてい大金持ちです。不良の人のまわりはたいてい不良の人です。分かりやすいでしょうか。

 人はつねに波動のようなものを出しています。それが日常的な思考です。

 ネガティブな思考の持ち主の周囲には、ネガティブな波動が出ていて、ネガティブな思考や状況、体験が集まってきます。ポジティブな思考の持ち主の周囲にはポジティブな波動が出ていて、ポジティブな思考や状況、体験が集まります。

 これは、自分から出ている波動が、周囲にある同じような波動のモノやコトをかき集めてくるためです。

 大金持ちの人は、お金があって当たり前だという思考をしています。多少の損失があったとしても、それでもまだお金を持っているので、お金がないという思考はありません。その「お金があって当たり前」という思考が波動となって、周囲に広がっていき、同じ波動のモノやコトが集まりますから、大金持ちの友達は自然に大金持ちになりますし、お金がまったくない、ということにはなりません。

 逆にお金がない人の場合、お金が欲しいと考えているでしょうが、その前に思考の本質として「お金がない。ゆえに欲しい」という思考があります。この場合、「お金がない」というのが本心なので、そちらが波動となって広がっていきます。同じ波動のモノやコトが集まってくると、同じようにお金が欲しい人と知り合ったり、お金がない状況を維持したり、お金が離れていって「お金がない」という状況になります。

 日常の思考は、そのまま人生に反映します。面倒なことは避けたいと思うなら、つねにポジティブな思考を維持する必要があります。

 ポジティブというと、陽気とか前向きというイメージが多いようですが、本来の意味は「肯定する」です。具体的には、物事の良い面を見るとか、すべてを受け入れるとか、究極的には「許す」ということになると思います。

 こういう思考が日常的にあれば、気分の良い体験をすることがあっても、気分の悪い体験をすることはありません。すべてを受け入れる体制が整っていれば、すべてがOKなわけですから、この世に良くないことは存在しなくなります。

 「類は友を呼ぶの法則」は、スピリチュアルと関わりのない人でも、すでに関わっています。法則はすべてが、誰もが、その影響下にあります。

 興味があろうなかろうと、否定しようとバカにしようと、その思考に沿った人生を「今・ここ」で創造していますから、未来のどこかでそのときの思考を体験することになります。

 つまり誰もが、自分の思考に注意して生きる必要があるということになります。人生に不幸や苦痛などを取り入れたい人は考えなくてもいいことですが、人は元々幸せや平穏を求める生き物ですから、やはり注意すべきではないかと思います。


 無意識の領域でのお話ですので、表面的な思考の変化では意味がありません。根本的に思考を整える必要があります。それは簡単に言えば「いい人になること」とも言えますし「丁寧に生きる」とも言えるかもしれません。

 どれだけ表面を取り繕っても、自分に嘘はつけませんし、自分をごまかすこともできません。「ちょっとぐらいはいいか」が通用しないのは自分に対してだけです。

 そうなると、やはり根本的に思考を変える必要があります。思考が変われば言葉や行動、表情も変わりますから、周囲の人から「なんか変わったよね」と言われることも出てくると思います。

 では根本から変えるにはどうするか。

 以前に書かせていただいたお話になりますが、「今・ここ」を生きる、「受け入れて許す」、「感謝する」というスピリチュアル三本柱が最も効率的です。

 簡単ではないかもしれません。しかし「今・ここ」を生きることで過去のしがらみを手放し、未来の不安もなしで済みますし、「受け入れて許す」ことで、否定もしなければ引きずることもありません。そして、すべての出来事に「感謝する」と、その倍ぐらい感謝することを体験しますから、意識して損はありません。これらの一部でも身につけば、すこし人生やこの世の見えかたが変わるのではないかと思います。

 最低限、否定的な思考は手放しましょう。なんでもかんでも信じればよいということではなく、ひとまず受け入れて、しっかり自分で考えて、今の自分に必要がなければ手放してください。「考える」というのはこういうときのためのものです。

 そうすれば、自然に肯定的な思考だけが残っていきますから、今度はそれを維持するだけです。今すぐ結果が出るようなものではないですから、しばらくのあいだは維持するのが難しい出来事や物事に遭遇するかもしれません。このときこそ「受け入れて許す」ことでその波を超えることができます。その波が過ぎれば、ポジティブな体験、ポジティブな気分を味わいまくりです。

 ちなみにぼくは「人生は面白くなければならない」と意図しているので、ぼくのポジティブな体験や気分は、すべてではないですが笑えるモノやコトが多いです。

 あくまでも日常的な思考ですから、目が覚めてから眠るまでのあいだ、つねにポジティブ・シンキングが必要です。日常のすべてをポジティブ思考で受け止められない場合や、すこしぐらいネガティブな思考になる体験をしても、「これはコントだな」とか「しょーもな」と突っ込んでおけば、すこしは笑えますし、ネガティブな思考のままで終わることはなくなります。

 生きている時点で「類は友を呼ぶの法則」が起動しています。

 誰にも止められませんし、無しにすることはできません。

 ネガティブな思考をすればするほど、人生はネガティブなほうへと傾きます。

 ポジティブな思考であればあるほど、人生をポジティブな体験へと導きます。

 あなたが意識しなくても思考のとおりに行動していますし、そのとおりの人生になっていきます。「今・ここ」での思考、生きかたに注目することはもちろんですが、周囲をよく観察してみてください。この世はあなたの思考を映す鏡です。集まっているモノやコトで自分の思考が見えてきます。

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