第11話 「感謝」はかならず戻ってくる

 当たり前のことですが、たいていの人は、誰かに何かをしてもらえば感謝を伝えたり、相手がその場にいなくても感謝の気持ちを抱くものですよね。

 こういうときの感謝というのは、心から自然と湧いてくるような感じだと思いますが、何事もない日常生活の中で意図的に感謝をするということがありますか。

 日常的に感謝できることは、意外とたくさんあります。

 そもそも「今・ここ」に生きていること自体、よくよく考えてみれば簡単なことではありません。自分ひとりの力で赤ちゃん時代を生き残れるわけもないですし、無限のようにある病気やケガを避ける確率、事件や事故の機会、自然災害に巻き込まれる可能性をかいくぐって「今・ここ」にあなたが存在しています。これは奇跡と呼んで当然の確率です。

 「今・ここ」にあなたが存在して、この文章を読んでくれているということは、奇跡以外の何物でもないことに気づいてほしいのです。それが分かると、生きていることに感謝ができるのではないでしょうか。

 もちろんこの程度の文章に感謝しろと言ってるのではありません。そんな恥ずかしいことは言えませんが、美味しい食事や良い悪いを含めての友情や恋愛、誰しもひとつぐらいはかけがえのない思い出として記憶にあると思います。それらの思い出のすべてが奇跡だと認識してほしいのです。

 そう考えていくと「今・ここ」に生きているという奇跡の状況に、感謝の気持ちがわかないでしょうか。

 太陽があること、地球が自転してくれていること、適当に雨が降ってくれること、他の動植物を食べることができること、ちゃんと排泄できること、同じ言葉を話す人がまわりにいること、共感してくれる人がいることなどなど、すべてが感謝の対象です。地球上で起こるすべてのこと、善悪という区別はあるかもしれませんが、すべてが揃っていなければ、「今・ここ」にあなたは存在しない可能性すらあったのです。たとえあなたにとって都合の悪いことであったとしても、そのことで教訓を得たりできればそれは学びを与えられたのであり、それもまた感謝ですよね。

 ちなみに、自分に関わるトラブルや不都合な体験が現れたとき、それは学びのチャンスであり、「自分だけのモノサシ」を手放して、「受け入れて許す」ことができれば、それは人生におけるスキルになります。

 年齢を重ねて肉体が弱り、楽しいことの種類や回数が減っていき、周囲の人たちもどんどん減っていったころ、自分もちゃんと亡くなることができます。ぼくはこれすらも感謝しています。長生きしたいという人はたくさんいますが、脳を含む肉体はどうしたって老化する、ということは考えにあるのでしょうか。認知症になったり、体が動かしづらくなって長生きしているのは、家族も大変ですが自分もつらいのではないかと思うんです。ずっと疑問に思ってることのひとつです。その時が来たら「受け入れる」、そう考えると、自分の命日にも感謝してしまいます。

 自分にとって都合のいいことだけが感謝の対象とするのではなく、「今・ここ」に存在しているという事実が感謝の対象であると考えてみてください。


 感謝の言葉、日本語では「ありがとう」と言いますが、漢字で書くと「有り難う」という字になります。漢字のままですが、起こりにくいこと、有り得ないことと読めます。今の時代では起こりにくいことが起こることを「奇跡」と言います。ありがたいと感じることは、すべて奇跡と呼んでも構わないと思っています。有り得ないことが起こったり、誰かがコトを起こしてくれたりしてるわけですから、その場であれば自然に、感謝の言葉「ありがとう」が口から出てしまうのではないでしょうか。

 「ありがとう」という言葉とその思いというのは、魔法的な力を持っています。

 普段から、どんなにささいなことでも感謝していると、いずれもっと感謝したくなる体験がやってきます。「いずれ」というのは物理のルールの中で生きている以上、どうしても時差ができてしまいます。十歳の子供が二十歳になりたいと言っても、常識的にはやはり十年という時間を経なければ二十歳とは認められません。そういう物理的時差は人それぞれにあり、またその人の感謝度合いというか、真剣さなどによっても違いがありますから、「いずれ」としか言いようがないのです。

 話を戻します。

 つねに感謝の気持ちをもって生きていると、自分の身のまわりの出来事や体験に、すこしずつありがたいことが増えていきます。たとえば自分にとって好都合なことだったり、グッド・タイミングだったり。場合によっては直感が働いたりもします。

 「感謝する」という思いや肉体的表現としての行為が呼び水となり、知らず知らずのうちにあなたを感謝するしかない環境へと導いてくれるのです。それは日常の何気ない一コマかもしれませんし、分かりやすく派手な形かも知れません。どちらにせよ、自分が困ったときに手を差し伸べてくれるような形で戻ってきます。

 巷ではそれを「引き寄せの法則」と呼びます。

 一般的によく言われるのは、物質や人生の中のイベント的なものを引き寄せるお話ですが、ぼくの体験上ではもっと身近な、日常生活のサポート的な引き寄せが当たり前に起こっているような気がします。「引き寄せの法則」についてはまた別の機会に書かせていただきます。


 さらに「類は友を呼ぶの法則」

 これもよく言われているものですが、簡単に解説します。

 たとえば、ものすごく車好きの人がいたとします。当然その人の周囲は車好きの人が集まり、部屋の中も車の雑誌や本、車の工具などが集まっているでしょう。「あの人、ホントに車が好きだねぇ」とまわりから言われるレベルです。それがひょんなことから子猫を譲り受けます。しかも一撃でメロメロになってしまって、子猫中心の生活スタイルに変わっていきます。そうすると、あれだけ車好きの人や車に関するものが集まっていたのに、すこしずつネコ仲間が増えていき、部屋の中もネコに合わせた内容に変化していきます。ハマり方によっては、車は二の次、三の次ということになっている場合もあります。

 これが「類は友を呼ぶの法則」です。

 自分の思考の中心にあるものが、物理的な世界を変えていきます。完成図やその結果が出るまでの経過は「引き寄せの法則」と同じですが、大きな違いは「引き寄せ」の場合、自分の欲しいものが明らかな欲求として存在していて、しっかり意図することが必要ですが、「類は友を呼ぶ」では、意識することなく、ただ好きなもののことを考えて行動しているだけで起こるということです。こちらもまた別の機会に解説させていただきます。

 ここでお伝えしたいことは、日ごろの思考が、あなたの日常、その周囲を作っているということです。この記事で言えば、あなたの思考が「感謝」にあふれていれば、さらに感謝したくなる出来事が起こるのは偶然やたまたまではなく、必然であるということです。

 とんでもないお金持ちの友人は、とんでもないお金持ちだったりします。急に貧しい人が出てくることはありません。その逆もまた然り。笑顔のまわりには笑顔か、笑顔になるような出来事が集まってきますし、いつも不平不満ばかり募らせている人の周囲には、やはり不平不満を募らせている人や、さらに不満が募るような出来事が集まってきます。険しい表情の人のところにご機嫌な人が寄っていく場合、よほどよく知っていて仲が良くないと無理でしょう。


 そういう意味で「感謝」は、とても手ごろな教材になります。

 誰でも感謝することはありますし、そもそも生きていることに感謝しようと思えばできることです。コンビニで弁当を売ってくれるバイトさんに感謝、この店舗に運んできてくれた運送係の運転手さんに感謝、その弁当を作ってくれている工場のパートさんに感謝、食材を作ってくれている農家さんに感謝、食材を育ててくれた自然に感謝、それを「おいしい」と感じて食べることができる自分の肉体にも感謝できます。それらをまとめて「いただきます」と言うんです。パッと思いつく感じでもこれだけの感謝ができます。細かく見ていけばもっと感謝することができるでしょう。

 最初は遊び感覚でもいいので、感謝の気持ちを言葉にしてみてください。

 コンビニで商品を受け取るとき、宅配の業者さんが荷物を手渡してくれたときなど、日常にいくらでもそんな場面があります。光熱費や家賃の支払いも、水や電気を送ってくれたり、その部屋に済ませてくれているのだと考えてみてください。もちろん売り買いはお互い様ですが、こちらが感謝していれば、相手も感謝してくれるようになります。そうならない場合は、相手側の思考がまだ出来上がっていないので、まだ未熟なんだと思って受け入れて許してあげればいいのです。

 人間には言葉があります。感謝の思いを言葉にすることで、それはポジティブな波動を生み、広がっていきます。

 ぜひ「感謝」を言葉にしてみてください。「ありがと」でも「サンキュ」でもかまいません。あなたが「感謝」のかたまりになれば、それが呼び水となり、「感謝」はかならずあなたのもとへ戻ってきます。

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