第7話 幸せの正体見たり

 よく結婚式などで「幸せになりまーす」というシーンを見かけたりします。あるいは「幸せを探しに行く」というセリフもあったります。幸せは未来にあったり、どこかで見つけるようなものなのでしょうか。

 「幸せ」とはどこにあるのでしょう。

 結論から言うと、幸せはいつも目の前にあります。これから幸せになるということでもないですし、探せば見つけられるというものでもありません。幸せはいつもあなたのそばにあるのです。


 まず幸せとはなにかというと、簡単に言えば、あなたの気分です。ふざけてると思われるかもしれませんが、事実です。

 まず、イメージしてみてください。

 ものすごくお金を持っているとします。これもひとつの幸せかもしれません。お金があれば幸せになれる、あるいは幸せであると考えている人って多いのではないでしょうか。しかしその反面、それを維持するための心労や努力があることを忘れてはいないでしょうか。さらに、お金は使えば減っていきます。その減り具合にまた心労が重なります。根っからギャンブラーという人はそれも楽しいうちかもしれませんが、底をついて元本さえも戻らなくなったとき、同じ心持ちでいられるのでしょうか。

 また、人一倍健康に気をつけていて、いつも元気だとします。健康に気をつけるということは、つねに不健康になってしまうイメージがあるということです。それが怖いから人一倍気をつけることになるでしょうし、ちょっと肉体的に異常を感じたときの不安などはとても大きなダメージになるのではないでしょうか。

 不安というのは、自分の思考が創りだすモンスターです。

 自分にとって都合の悪い未来をイメージすれば、あっという間にモンスターが姿を見せます。いつでもどこでも不安は、思考次第でついてまわるものです。

 究極の不安は「死」です。お金も健康も、たいていのことは突きつめれば死を避けたいという願望ではないかと思います。

 人は死ぬことに対して、事実以上の怖れをイメージしてしまう傾向があるため、お金でどうにかしようとしたり、肉体の不調に敏感過ぎたり、周囲の人間をコントロールして安心を手に入れようとしてしまいます。

 周囲をコントロールすることは難しいですが、安心という状態は、意外と簡単に手にすることができます。思考することをやめるだけです。

 余計なことを考えずに「今・ここ」を生きていれば、つまり、いま目の前のことに集中して行動し、対応していれば、未来を考えるヒマはありません。未来を考えることがなければ都合の悪い未来をイメージすることもないので、不安にはなれません。

 「明日は明日の風が吹く」というと大雑把な印象を受けますが、実際にこれぐらいの気持ちで「今・ここ」を生きていれば、つねに安心であり、平穏を感じることができます。そもそも明日のことは明日にならければ誰にも分かりませんからね。

 もちろん一般的には社会生活というものがありますから、すべてをそんな生きかたにすることはできません。それでも、社会と離れているときやひとりの時間などは、思考を自然な状態に戻して行動することもできるのではないでしょうか。

 たとえば、風呂やトイレに入っている時間を利用するのはどうでしょう。湯船に浸かる人であれば、湯船に浸かる瞬間の息を吐き出すとき、トイレなら用を足している最中は思考が停止しやすいです。ちなみにぼくはお風呂で瞑想します。ふぅ~と息が漏れるところでエゴを手放しやすく、そのまま深い瞑想に入れます。

 話がそれました。戻します。

 未来を予想しなければ悪いイメージもわかず、不安というモンスターを呼び出すこともありません。不安の姿を見ることがないとき、その思考には何が残っているでしょうか。

 先ほどのぼくの話で言うと、湯船に浸かり、ふぅ~と息が漏れているときから、基本的には「無」に近い状態になります。もちろんお湯の温かさや心地よさは感じていますが、思考は止まっています。何も考えられず、ただその心地よさに身も心もゆだねている状態、お湯と一体化していると言ってもいいかもしれません。何も考えていませんし、ムリに何かを考える気もありません。

 「無」に近い状態であるということは、昨日の失敗を思い返すことがないので、心がへこんだりすることはありませんし、未来を予想することはありませんから、不安モンスターが姿を見せることはありません。不安や心配、後悔などをすべて手放したあとに残っているもの、それを「幸せ」と言います。


 「愛」=「魂」=「創造主」であるというお話を前に書かせていただきました。

 そもそも人というのは、肉体的に存在していても、そうでなくても「愛」であり、「魂」そのものであり、「創造主」です。せっかく創造主であるのに、全知全能的な力を発揮できないのはなぜでしょうか。

 まず、全知全能は難しいです。人はこの世に肉体を利用して存在しているので、どうやっても物理のルールが適用されますから、この時点で時空間を超えるようなことはおそらく不可能だと思います。この時点で、全知全能は却下されています。

 しかし、できることできないことは個人差がありますが、すべての人が創造主の力を発揮しているという事実があります。それは「今・ここ」の次の「今・ここ」を創造しているということです。そこだけは間違いなく誰もが創造主です。

 なのに、その部分だけでも創造主としての力が発揮されていないように思うのでしょうか。

 その理由は自我=エゴが人を支配しているためです。

 自我とは脳が考える「自分とはこうである」という認識です。

 簡単な例で言うと、「私は勉強ができる」とか「ぼくは手先が器用である」などが挙げられます。また「あの人とは違うから自分である」なども同じことです。上下左右前後も分からない真っ暗な空間でひとりぼっちだったら、鏡もなく自分の顔すら知ることができなければ、自分の存在を認識することはできません。「我思う故に我あり」という言葉もありますが、それだけで確信を持つことはおそらく無理でしょう。

 自我というのは社会生活の中において、とても重要ですし必要なものではあるのですが、「人が生きる」ということだけに限定してみると、とても面倒で扱いにくい存在です。

 先ほども書きましたが、創造主であるということは、愛のかたまりでもあります。愛しかない存在なのに、肯定的な気分を体験できないのは、自我という、いわゆる「思考」がジャマをしているからです。

 詳しくはまた別の機会に詳しく書かせていただきますが、愛のかたまりである創造主は、魂でもありますが、魂は気分、一般的に「心」と呼ばれるものであります。哲学や脳科学でどう定義されているかは知りませんが、ぼくの体験上、心は魂と同じです。区分としては「脳」が思考で、「心」が気分を担当していると考えています。

 自我は思考によるものです。物理のルールに従って論理的に答えやその予測を導き出します。対して、心は気分です。幸せを感じたり、理由もなく楽しかったりするなど、状況や状態を脳が理解する前に、どこからともなく湧いてくる感情のことです。おいしいとか美しいと感じるときなどを想像してもらえると分かりやすいかもしれません。「頭で考えるよりも先に心が動くような」、そんな感じです。

 この、頭よりも心が先に動く、という部分が幸せを感じる部分です。

 今は考えなくてもいいことを考えて不安になったり心配していては、心が先に動くことはありません。自らの意思で脳による思考を優先させているためです。

 幸せは体験です。また、時間が経過してから振り返ったときに分かるものです。

 つまり、自分が良いと思える人生を創造して、「今・ここ」を生きていなければ体験できません。振り返ったときも幸せが見当たらなくなります。言い換えれば、今が幸せでなければ、明日も幸せではなく、一年後も幸せを感じることはないということです。

 社会生活中ではないとき、たとえばお風呂で湯船に浸かるときなど、赤ちゃんなどいなければ基本的にはひとりでまったりする時間のはずです。湯船に浸かった瞬間など、湯の温度を体で感じて、「あ~~」と声が出たりします。この瞬間の感覚を覚えておいて、日常生活の隙間に味わってみてください。以前食べたことのある、とくにおいしいものを想像したとき、「その口になる」ってありますよね。人によっては口の中で味を思い出すことがあるかもしれません。それと同じです。

 幸せは「今・ここ」にあるあなたの気分次第です。思考の焦点を不平不満に合わせるのではなく、もっと体感的に感じることを優先してみてください。日常生活の中では、想像しているより心地よいこともあるものです。汗をかいたあとのちょっとした風とか、のどがカラカラに乾いたときの水とか。とてもささいなことかもしれませんが、日常の中でいろいろな種類の幸せを体験できます。その積み重ねが平穏な日常となり、時間が経ってから、「あの頃は幸せだったな」と思い出したりします。

 必要なのは物ではなく、体験であり、そこから得られる気分です。

 あなたが何を見て、どう感じるか。それが幸せのはじまりです。

 究極的には「今・ここ」に生きていることが幸せなのだと分かるはずです。

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