第7話 そして帰り道



…もともと男女別の方がいいと言われている理由がよくわかった気がした。




そんなことを思いながら今日も素早く帰路につく。




え?待たなくていいのかって?





さすがにここで待ってたらヤバい奴だと思われそうなのでやめておく。




引き際も肝心というやつだ。そんな言葉が本当にあるのかは知らないけど。





しかしそのとき、今日だけで何度脳に焼き付けたかもわからないようなそのシルエットが視界をよぎった。





…つまり「引くな」というわけですか…。





向こうはまだこちらを認識していないようなので、この段階で引こうと思えば引くこともできる。




でも、ここで引くのはなんだか違う気がした。




そこで、思いきって声をかける。





「あ…海人くん」





すると大袈裟に肩を跳ねさせた彼が振り向く。





しかし、若干独り言じみたトーンで呼びかけてしまったのもあり、気まずい沈黙が流れる。






私は、結局人との接し方を決めるものは第一印象だと思っている。第一印象が自分と合わなければどこか遠慮じみた話し方になりがちだし、逆に合いそうなら軽いノリで話すことが多くなる。






こうして第一印象について言っておいてなんだが、そういえば第一印象は基本初めて対話をしたときに受けるものであって、人から見聞きしたことだけでの印象は普通第一印象とは言わない。





…まあつまり、何が言いたいのかというと、私たちの関係性がまだ「先入観から相手のことを決めつけている」ような状態なのだ。







そして、基本人との関わりを避けてきた私の印象は見聞からしかつかないものであろう。





そう、「冷たい人」である。






つまり、彼からしてみれば、普段は他人との関わりなど持たないはずの私から話しかけられ、困惑しているという状況なのだろう。






そんなことを考えてはいるが、沈黙は流れ続ける。







この気まずい沈黙の中、先に口を開くのは…




―――――



*海人side




変更後初の練習をこなしたが、はっきり言ってヤバかった。





だって、全国でもかなりハイレベルな位置にいる氷帝さんの練習を間近で見ることができるのだ。そっちを見ないわけがない。





そんなわけで、練習メニューこそ淡々とこなしたが、頭の中はすでにあの練習風景に潜んでいる技術をメモすることでいっぱいだった。






そんなわけで、もはや練習中に何を言われたのかすら覚えていないのだが…





これは氷帝さんから色々聞き出せるチャンスだ。





これは方針が変わった後から常々思っていたのだが、そういえば具体的にどうするかを考えていなかった。






だが、手っ取り早いのは帰り際だろう。俺は直感でそう思っていた。






そんなわけで、彼女の退出時間に合わせるように俺も出ることにしたのだが…







いざとなると非常に話しかけづらい。










当然だ。彼女はこれまでも他人のことは素知らぬ感じでいたのだから、俺も同じようにあしらわれるかもしれないという恐怖が…





いや、そんなのはただの言い訳だ。






なんていう、主人公が意を決したときのようなセリフが脳内に浮かんだ。実際、これは俺の本心でもある。だがしかし、そのセリフを心に浮かべてもそこから思いきって行動に移せるのは物語の主人公だけだ。俺にはそんなことできない。






そしていつの間にかペースを速めていたその足は、氷帝さんの前を通りすぎてしまう。






結局のところ、俺はビビっているだけなのだ。そしてその弱さから、現状に甘えてしまう。それが満足のいかないものであっても、本心を抑えてしまう、これは俺の悪い癖だ。





そして、その俺の悪い癖が当初話しかけるはずだった彼女から逃げるように足を進めていってしまう。






しかしそのとき…




「あ…海人くん」




彼女がふと、呟くように、俺を呼び止めてくれた。






しかし、呼び止めてくれたという俺の認識とは反して、条件反射で肩が跳ねる。






そのまま振り向くが、彼女も特に話があるわけではないらしく、沈黙が流れる。





俺はこういうとき、何と切り出せばこの空気を抜け出せるのかというものを知らない。





しかし、ここで彼女が連続して言葉を発するのではなく、俺が何か切り出すべきであるということはわかった。






ただ、なんと言い出せばいいのか…





なんとなく、彼女に対して親しげに「やあ」だとかそういったことを言うのは気が引ける。





だが、こうして考えている間にも沈黙は続く。





そうして、俺は覚悟を決めて切り出すことにした。




「あ、氷帝さん。ちょうどよかった。聞きたいことがあるんだけど…」





―――――


あとがき


どうも、ヨッシーです。小説内にいきなり出てくるなと思うかもしれませんが、どうかお許しください。



こうしてここにこれを書いているのは、コロコロと視点を変えているので見づらくなってしまうのではないかと思ったからです。もし見づらく感じてしまっている方がいらっしゃったら誠に申し訳ないです。




どうしてもこういう書き方のほうが私に合っているので、しばらくはこういう書き方が続くかもしれません。そのことについても、重ねてお詫びさせていただきます。




なにせ小説を書くことは慣れていないもので、どうか暖かい目で見守っていただけると幸いです。 


それでは、今後もこの小説をよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る