第4話 クラス分けを初めて知った

彼に敬語を止めてもらうところから始めようと思ったが、やはり彼と接する時間が少なくてはそれは不可能だろう。



そんなことを考えながら通学のため駅に向かっていると…




「あ…氷帝さん…」




彼と出会った。




…彼は私とは大分時間が違ったはず。駅に向かう最中に会うだなんておかしな話だ。




そう思い、時間を確認すると…



6:55


普段より大分遅い時間だった。



何故か知らないが、出発が遅れてしまったらしい。



でも、これは好機だ。ここで彼と話す時間ができるのはありがたい。





「…海人くん。あなたとは電車の時間が違うと聞いていたけど…」





「え?別に俺はいつも通りの時間で来ただけですけど…」





 

「…珍しい…ですね?」



何かを勘違いしたのか、フォローになっていないがフォローであろうものを入れてくる。



「…まあ、そうね。」



かと言ってどう切り出したらいいのかもわからなかったので、それに便乗することにした。




そして、駅に向かい、電車を待つ。




なんとなく分かっていたけど、この時間は駅だけでもものすごく混んでいる。電車の中なんて恐ろしいことになっているだろう。




やがて、電車が到着した。



すでに人が詰まっていると表現できるような混雑だったが、きっと彼にとっては普通の光景なのだろう。




そう思い、この人混みには触れないことにした。




彼は無言だった。時々こちらを落ち着かなさそうに見ながら、スマホをいじっている。





さすがにこの人の数では対話は成立しないだろうと考え、私も黙っていくことを選んだ。







そして電車に乗ると…



思ったより狭い。正直通勤ラッシュをなめていた。




今にも壁際で押し潰されそうな状態だ。




すると、海人くんが私を庇うように人の間に割って入る。




半分以上は「なんだこいつ」とでも言いたげな目で見つめられている彼だが、そんなことは気にしていないかのようだった。




やがて、目的の駅についた。電車から降りると共に、解放感に溢れたホームに安心している反面、先ほどからドキドキが止まらない。





あのさりげない気遣い。あれは相当な覚悟がないとできないことだ。そして、それを何事もなくできる人というのはかっこいいものなのだ。これは私でも分かる。





すると海人くんが口を開いた。



「氷帝さん…もしかして満員電車とか慣れてない…感じですか…? まあ、俺とは電車の時間違うみたいですし…」



「…そうね。正直、ホームについた電車を見て驚いたわ。」





「まあ、初めはみんなそう思いますよね…」





ここで『怖かったぁ…』とでも甘えられるのが本来のヒロインらしい(姉のマンガにそういうシーンがあった)が、あいにく私にそんなことはできない。





そんなラブコメ展開は諦めて、駅から出て歩き始める。





「そういえば、海人くんってクラスはどこなの?」





「クラス…?1年B組ですけど…」




「あら、同じクラスなのね。気づかなかったわ…。」





「なんで気づいてなかったんですか…」




余談だけど、私は高校1年生。それでも県内トップレベルとまで言われるのは、幼い頃からバドをやっていたからだ。


そして、簡潔に言うと高校の初速で友達作りに失敗した悲しい人間 というのが私だ。




まあ、中学時代からまともに友達と呼べる人はいなかったからいいのだけれど。





そんなこんなで歩いているうちに、私が通う高校についた。





何やら周りから不思議なものを見たような視線が向けられているけど…




…あれか。


つまりは、異性と一緒に登校してくるこの状況を何かと勘違いしているらしい。



……いずれその勘違いが本当になるといいんだけどな。





何か言われても面倒なので、さっさと教室に向かうことにした。

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