その後真之介 1
記憶を消されていたレイを、真之介は不憫に想っていた。しかし、レイの記憶が戻る事は、それ以上に彼女を苦しめることだと、
真之介は想った。
ここは潔く身を引く事である。しかし、地球に戻る為の乗り物が無い。あの鳳凰の様な生き物の契約は一回だけと聞いている。
また、地球に戻っても時が過ぎていて、見知らぬ人達ばかりであろう。
真之介は途方に暮れていた。
その時である。聴き慣れた声が聞こえてきた。
「そこにいるのは、真之介さんでは無いですか?此処に居ると言う事は、記憶が戻って帰ってきたのですね!」
真之介は、声の方向に顔を向けた。
そこには皇后の美しい顔があった。
皇后は、笑みを浮かべて真之介を観ている。
真之介は皇后に近づき、
「私は、地球に帰ったのですが、レイさんから貰った箱の蓋を開けてしまいました。開けてはいけないと言われていたのですが、開けたいと言う誘惑に負けてしまいました。
私の記憶は蘇り此処にやってきました。皇后様、私はどうしたら良いのでしょうか?」
私の質問に、皇后はこの様に応えた。
「あなたとレイは結ばれる事は、不可能です。でも、もう一度貴方の記憶を消し去り貴方が此処で暮らす事は可能です。」
その言葉は、真之介には疑問に感じた。
「では、何故最初から記憶を消してこの星に、置いて下さらないのですか?何故、地球に返してから記憶を消したのですか?
何故その様な手間のかかる事をしたのですか?」
皇后は真之介の瞳を見つめ冷静に答えた。
「貴方は地球人です。地球に帰すのは当然の事です。また、此処にいた記憶を持って地球にいたならば、貴方を悲しませる事になります。
だから記憶を消しました。記憶を蘇らせる物質を何故箱の中に入れたのかは、私は判りません。レイが勝手にやってしまったのです。
レイの貴方に対する想いがその様な行動をとったのでしょう。
貴方がレイの元に帰ってくると、レイは信じていたのでしょう。
だから、私はレイの貴方への記憶を消しました。貴方が此処に居ると言う事は、レイの思い通りになったと言うことです」
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