第25話 地球への帰還

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私の言葉を聞いたみどりは、深刻な表情に変わった。

眉間に皺を寄せ、一点を見つめ、19歳とは思えない

言葉を発してきた。

「しんちゃん。辛かったでしょうね。好きな人を諦めるのは。

私も、そんな経験あるのよ、10年ぐらい前の事だけど、

結婚を約束していたのに、相手の両親に反対されたの。

結局、彼とは別れたわ。」

と、沈んだ声である。


そしてそれは、みどりの年齢詐称がバレた瞬間でもあった。


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私は、話を続けた、その時のレイの言葉を想い出しながら。


「ある日、僕はレイから話をされたのです。」

と、言って僕はコップ酒を一気に飲み干した。

やけ酒を飲む様に。


「レイが言うのです

『真之介さん、昨日両親から言われたの、・・・』と言って

黙ってしまったのです。私はレイの肩を抱き、聞いたのです

『如何したの、レイ?何を言われたの?』

すると、レイは声を殺して、静かに涙をこぼしたのです。

そしてレイが呟いたのです。

『昨日、あれだけ泣いたのに、涙って枯れないのね。』

って。」


「解るは、レイさんの気持ち。私と同じよ。」


「それからレイは、『真之介さんとは結婚できないの。不可能なのよ!』と突然強い言葉で言われたのです。

私には理解出来なかったので、レイの言葉を待ちました。

そして、先程伝えた様に、私はレイから言われたのです。


私はレイの言葉を聞いて衝撃を受けました。


地球人の愚かさを想い知らされました。

薩長を敵と想い日本人同士で殺し合う。

本当に残念な事です。今は外国と戦をする為に富国強兵とか言っている。本当に馬鹿げてる。その事を気付くと同時に、

レイとは結婚できない事を知ったのです。


私は、本当に辛かったです」


と、言って僕は瞳を閉じた。レイの顔を瞼に浮かべながら。


「でも、レイさんの方がもっと辛かったと思うよ。

だって、愛する人の子供を産めないのよ。」

と、静かで暗い声ではあったが、みどりの言葉には力強さがあった。


「しんちゃん、それで地球に帰ってきたのね。」

と、今度のみどりの声は、希望を見出したかの様な明るい声である。

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僕は、みどりに言った。少し重い口調で。


「確か僕は地球に帰って来た。だが、喜んで帰って来た訳では無いんだ。


レイへの想いをどの様に断ち諦めるか!

だが、そう簡単にレイを諦めるのは出来なかった。


さまざまな想いが交錯する中で、何日かその星に居たんだ。

レイは僕の所へは、来ようとはしなかった。

レイは僕を諦める事を努力していたんだ。

これ以上この星に居ては、レイを苦しめるだけだ、と 

僕は、判断せざるを得なかった。


そして、僕はレイに言ったのです。

『もう、地球に帰る時が来たみたいです。

送って頂けますか?』と、

レイは、軽く頷きました。全てを諦めているかの様に。」


「そう、それで地球に帰ってこれたのね。」

今度のみどりの言い方は、私の気持ちを察したみたい。



「送ってくれたのは、レイです。帰る円盤は来た時の円盤より少し大きくて、三人乗りでした。レイとお供の女が乗っていました。

その円盤の中でも、レイは僕に話しかけてくる事は無かったのですが、飲み物をくれたのです。

『真之介さん。この星と地球では環境が似ていますが、やはり違います。地球につく前にこれを飲んでください。』

と言われたのです。

私はその言葉に従いました。飲むと美味しい飲み物でした。

だけど、直ぐに眠たくなり寝てしまったのです。

気が付いた時は地球でした。

それまでの記憶を無くし、レイからこの玉手箱の様な物をもらったのです。『この箱の蓋は、絶対に開けてはいけません』

と、言われていたのに

この箱の蓋を見知らぬオッサンが、無理やり開けたのです。

僕の記憶が何故かオッサンに入り、ビックリしたオッサンが、

僕のところに来て、オッサンのおでこと、僕のおでこをくっつけたら、私の記憶が戻ったのです。」


「それで、歩道の真ん中で、ぶつぶつ言って居たんだね。

私としんちゃんの運命的な出会いがあったんだね。」

と、何故か馴れ馴れしく言って来た。

私は、レイへの記憶が戻っている。

新たな恋愛?そんな気持ちになれない。

ましてや、みどりとは!



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