第13話 饒舌になる真之介

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「私は、国王から『ペスタが国王の座を奪い、レイを嫁にしたい私を脅してくるのです。』」

と、聞いたのです。


(義を見てせざるは、勇 無きなり)と云う言葉を父から、

いつも言われていた私は、そのペスタと闘う事を誓ったのです。


「『敵の人数はどれだけいるのですか?私は国王と共に戦います』

と、決意を込めて言ったのです」


「偉いは、しんちゃん!それでこそ、私が見込んだ漢よ」

と、会った時は、散々私を馬鹿にしていたみどりが、

おだててくる。

私はみどりの言葉を無視して語った。


「すると、国王と皇后は涙を流しながら言ったのです。

『相手の人数は、こちらの十倍以上はいます。

こちらの手勢は二百人足らずですが、彼方は二千人以上です。』

私は驚きました。兵力の差では無く、人数の余りの少なさにです。

『一体この星の人口は何人居るのか?』と聞いたのです。」


「私も本当に思うよ。人が少な過ぎる?

その星の人口、何人居たの?」


「それが、驚いた事に、星全体でも5,000人位だと言われた。

この星は小さな星で、地球からは望遠鏡でも見えないらしい。」


「だとすると、宇宙の専門家でも知らないのね。

見えないんだから。」


「でも、この星の人は地球を知っているんだ。

距離も意外と近いらしい。一時間もかからないと言っていました」


「不思議な事って、本当にあるのね」

と、ため息を吐き出す様に感慨深く、言った。


「でも、地球以上の高度な文明を持っているんだ。

先程の円盤もそうだし、食べ物もそうでした。」


「そう言えば、レイって云う娘、何も食べないって言っていたね。

どんな食べ物を食べてたの?」


「食べ物では無くて、薬みたいな物を飲んでいるんです。

それも、一日に一回だけ。それで栄養が足りるみたいです。

そして、排出もしないで済むと言ってました。」


「おトイレに行かなくてもいいの?スゴイわ!

その薬持って無いの?あったらちょうだいよ!

隠して無いで!」


「持って無いです。その星では貰って飲みましたが、持っては帰らなかった。

そんな事はどうでもいいんです。


これから、十倍もの相手にどの様に闘うかを国王に相談すると、

軍服を着た、ドンメル将軍が来たのです。」



「しんちゃん、さっきから気になっていたんだけど、何故みんなの言葉が日本語なの?地球とは違う星なのに?」


「私にも解らないです。私の言葉もその星の人の言葉も解るのです。不思議な事ですが」


「もしかして、翻訳するチップが体に入っているかも知れないわね。」


「そんな事はどうでもいいので、次 いきますね。」


と、言って私は一呼吸置く様に、日本酒を飲んだ。

美味しい酒は、心を弾ます。私はだんだんと饒舌になっていった。




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