第9話 興味深い話
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「そりゃ、言うでしょ。お礼ぐらいは!
で、それからどうなったの?」
「それで、私は娘に聞いたのです。『どこから来たのですか?』
と、すると娘は、下を向きながら言ったのです。
『遠い所から来ました。さっきの男は、私を連れ戻しに来た男です』と、言うのです。
で、私は聞いたのです。
『遠い所ってどこですか?私の知らないとこですか?』
と、」
私は刺身をみどりから頂き食べた。
ほんのりと油の乗った美味しい味である。
聞くと、マグロの中トロとか言うらしい。
みどりの目が、
……早く次を言え……と、訴えてくる。
「娘が言うのです。『遠くて、貴方の知らない所です』
と、『私の知らない所って何処ですか?まさか異国では
無いでしょう?』
と、聞いたのですが、娘は黙っているばかりでした。
『聞かれたく無いのですね?だったら聞かずに置きます。
ところで、どちらに行くのですか?』
と、私は聞いたのでが、娘は答えてはくれません。
私は、娘の元を去ろうとした時、娘は私の腕を掴み、言うのです。
『私は行くところが無いのです。逃げてきたのです。助けてください』と、」
私は、みどりの目を見つめて言った。
そして、おもむろにビールを飲み干した。
初めて飲むビールは美味しかったが、やはりここは日本酒であろう。
私、日本酒を注文した。熱燗で。
みどりも美味しいそうに食べている。
美味しいそうに食べる姿は、好感が持てる。
みどりの年齢は?と気になったので聞いてみると、
19歳と言う事であった。歳下のくせに横柄な言い方をする。
これも未来人の特徴か?
みどりは化粧のせいか老けて見えるのだが、
年齢を詐称しているのかも知れない。
私は、話の続きをした。これからが面白いところである。
「娘が言うのです。『私は行くところが無いので、貴方の家に連れて行ってもらえませんか』と
『私も独身であり、一人暮らしです。そんな所に若い女性を連れ込む事は、出来ません。無理です』
と、断ったのですが、娘は懇願するのです。
私は、仕方無く娘を家に連れて行きました。」
みどりは、箸を留めて聞いてくる。
「それから、どうなったの?何かしたでしょ。」
と、みどりの目が色っぽく変わった様に感じた。
「私の家は、安普請で粗末な家です。部屋も一つしかない物で
囲炉裏があるのですが、炭が無いので木を燃やしています。
食べる物は、川魚や、庭で作る野菜です。この様な豪華な食事は出ない。
そんな生活です。
その様な所に娘がきたのです。私にはどの様にしたらいいのか、解らなかったのですが、娘が言うには
『此処に居ると安心します。
追っても此処には気づかないと思います』
と、言うのです。
それから、二人で暮らす事になったのですが
その娘、何も食べ無いのです。
不思議に思い聞いたのですが、食べ無くても平気だと言う事でした。
初めは遠慮しているのか?と思っていたのですが、
そうでは無いのです。
娘は、私に慣れてきたのか本当の事を教えてくれたのです。」
と、言って、来たばかりの熱燗をお猪口で飲んだ。
これもイケる。
「本当の事って何?」
「私達が、一緒に暮らし出して半月が経った頃です。
娘さんの名前は、レイと言うのですが、この様に言ってきたのです。
『私は、星に帰ると許嫁と結婚しないといけないのです。
その人とは、結婚したくない!
此処で暮らして気づいたのです。貴方の事が好きになってしまった。貴方は優しい人です。
私は貴方の側に居たいのです。でも、・・・・・。』
と。言ったきりレイは言葉を止めてしまったのです」
「そうなの。解るはその気持ち!
嫌な人と結婚だなんて、嫌よ。
で、それからどうなったの?」
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