第4話 女からの手紙

3


手紙には、

「やはり、貴方はこの箱の蓋を開けたのですね。

あれほど、開けてはダメと言ったのに!


貴方は、今 記憶を失っているはずです。

そして、今起こっている状況に驚いているはずです。

貴方の記憶は、徐々に戻っていくでしょう。

記憶が戻る事で貴方の悲しみも増えていくでしょう。

その様になれば、貴方も後悔するはずです。


もし、今 生きているところが住みにくく、生きていけないと思った時、蓋に書いてある、鳳凰に話かけてください。

きっと不思議な事が起こる筈です。


では、さようなら。」


と、認められていた。


……なんの事だろう?書いたのは、先程別れた女性であろう。

だが、意味が解らない。記憶が戻ると書いてある!いったいどんな記憶だ? まだ何にも起こっていないが?……


不思議に思っていた時である。

さっきの男が、血相を変えて走りながら、私の元に戻って来た


……やばい、またあの男だ!今度は何をするつもりか?……


「おい、ちょっと、お前!

お前、一体何者だ!変な事が起こったぞ」


と、訳の判らない事を言って来ている。

イチャモンを付けに来たみたいだ。


「何が起こったと言うんだ!」

と、今度はこっちが上目線で凄んで言った。


「あんた、一体どこから来たんだ!昔の人か?

俺の頭の中に変な事が浮かんでくるんだ!」


「何だ、何が見える!言ってみろよ」

と、もっと凄んで言った。


その私の凄みに畏れを成したのだろうか、男の凄みは消えていた。

丁寧な言葉遣いで、おとぎ話をするみたいに


「貴方が、一人で歩いているとですね、ある綺麗な女性が、

男に襲われているんですよ」

と、語りかけてきた。


「いつの話だ!いい加減な事を言ったら許さぬぞ。

私はこの様に見えても、武士のせがれだ!

世が、徳川様の時代なら、お前などお手打ちにあっても仕方ないんだぞ」

と、さっきは言えなかった言葉を存分に言ってみた。



「いい加減なことではありません。あの箱の蓋を開けてしばらくしたら、この様な事が思いだされたのです。

貴方がして来た事が、私の脳裏にみえたのです。」


「私のした事が見えたと、そちは申すのか?では、言ってみろ。

嘘など言ったら解っているだろうな」


と、私はその男を睨みつけた。


「解っております。貴方様は本当に勇敢なお人です。

今から、私が見た事を正直に話します。」


と、その男は先程とは大違いで、怯えてはいるが、私を尊敬の眼差しで見ながら言っている。

私は、男の言う事を信じる事にした。





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