転生軍師

O.K.

第一話 軍中の賢者



興平元年 即ち公元194年


曹操軍が父親の仇と称して徐州の陶謙(とうけん)を攻め。当時の陳宮と張邈(ちょうばく)は呂布(りょふ)を兗州に招き入れ各方面の影響によりわずか半月足らずで兗州の大半が呂布の手に落ち。


この情報を知った曹操が応援に戻り濮陽(ぼくよう)で呂布との初戦にて敗北。

濮陽城外の曹操軍要塞軍機処では文官武将が左右に並び落ち込んでいる所。


現状はひどく、徐州を攻めた時に全軍三万総出の出撃で兵糧はわずか十万石二ヶ月と持たない。

今では本拠地すらも失い、一ヶ月以内に呂布に勝たなければ動揺が拡大してしまう。

この時曹操が急いで卓上の竹簡から一枚の綿布を探し当ててホッとした。

その後皆の不思議の眼差しを横目にその綿布を高く掲げ話し始めた「この手紙は一月前に我の軍卓に置かれた。護衛が数多く居る中で要塞に侵入しこれを置く事ができる事はつまりこの人は我が軍中の者!皆に筆跡を見て心当たりある者はいるか教えてくれ」


大敗を喫したあと三軍の士気を高めるのではなく筆跡鑑定?全員が困惑の中それでも前に出て筆跡を確認したところ驚きを隠せない様子

綿布に大きく三行の文字が描かれてある


《一・曹公が陶謙を討伐時に呂布兗州に侵入する兆し有り》

《二・濮陽守備戦では呂布に敗北するでしょう》

ここまで読んでほぼ全ての人が鳥肌立て思った「ここまで当たるとはまるで仙人の仕業ではないか」と!

更に三行目でははっきりと

《三・呂布軍東の要塞を奇襲する事必ず失敗に終える》


東の要塞とは濮陽城の東側にある要塞で呂布配下の高順が5千の兵で守りを固めている。主な用途は曹操軍が濮陽城を攻める時に呂布本隊と掎角の勢い(きかくのいきおい)をなし曹操軍を挟み撃ちにする事と曹操軍の牽制。


ここまで聞いて夏侯惇、楽進らの武将はよく理解できていないが荀彧(じゅんいく)の口は開けたまま固まっている。


それもそのはず、大敗の後荀彧と曹操で対策を練るときに濮陽の四万五千兵を相手にするより高順の5千の兵を先に叩いた方が楽に思えたと意見が統一したから。


ここまで正確に予測されるのは神様か仙人でなければありえない!

「諸君!はやく教えてくれ、心当たりはあるのかを!」痺れを切らした曹操が髭をいじりながら言う


「いや〜心当たりないッスね」

「文字体を見る限り書き方が柔らかく全体的流れるように形に囚われない。恐らくは武を嗜む人物では無いかと思われます」

「うーん、秀才の書き方ですね」

「秀才と言うより仙人では無いでしょうか?」


これらの発言を横目に曹操は深く溜息をつき言う「かの者は敵の動きを言い当て正確に対局の動向を予測すると見た。これ程の大才を補佐に出来れば呂布ごとき恐るるに足らず」


感情的になった曹操は手を大きく振りかざし「探せ1人ずつ探してもだ!必ず我が軍中に居ると見た!」


実際の所初めにこの手紙を受け取った時は陶謙の仕業だとばかり思っていたが呂布が兗州を奇襲した時からそんな単純なことでは無いと思い始めていたが今日の出来事でそれが確信へと変わった。


「はっ!」

武将たちが出口へと向かい行動に移す時に曹操が呼び止め目を細めてから言った。

「もう一点気をつけろ、軍中の者達に文字を書かせ比較しろ手紙の内容はくれぐれも内密に」

「承り申した!」


全員が出掃けたあと曹操、荀彧と程昱(ていいく)だけが残り二人に「軍を動かすな、迂闊に東の要塞を攻めれば負けるとはっきり書かれている。この大才を見つけるまでは守りを固めろ」


「はいっ」

二人は互いの顔を見て出口へと向かった

一人っきりになった曹操は綿布の手紙を手に取り独り言を口にする「必ず見つける、必ずだ!」

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