そいつはそんな時にやって来るのかもしれない
第44話 光ある夜の街を見おろして
四階まで階段をのぼると、足元の両サイドに光があった。〝
光の道は――眠気を飛ばさないためか――ぼんやりとした
私の視覚はすでに集中できていた。聴覚もしかり。すでにコッタがいる自室の前だ。
ノックを響かせると、すぐに金髪のメイドに
「静かにシィィ、ですよ?」
午前中のときと同じで、楽しげにして静かだ。立てられた
コッタはすぐに見つけられた。窓辺に寄せた
しかしながら、ストンとしている生地のせいで、服の上からでも
小さな両手の前面をガラスにピタリと張り付けているコッタは、もしかすると、おでこまでガラスにくっつけているのかもしれない。彼女はやや
このランクの宿屋には宿泊客が利用できるガウンがあると思う。浴室の手前にある
使うとなると、
私はここまで細かい指示をメイドに出していなかった。暗に希望のパジャマを獲得できたのは、最初に私たちの
この街には建物内に留まらず、
コッタにとっては
彼女のそばには黒髪のメイドもいて、目線を合わせて一緒に外を見てくれているようだった。
「あちらの明るい
「じゃあ、あっちもお
「あちらは〝オゥドゥ
「聞いた」
その二つの建物はむしろ夜のほうが目立つかもしれない。ライト・アップにより
流石のメイドも、コッタを相手に連続して会話を作ることは難しいのか。そんな黒髪のメイドがコッタよりも先に私の在室に気が付いた。
メイドのレベルは40前後だろう。多少は鋭い
つまりコッタはというと……全然だ。
「今日は
黒髪のメイドは、
「いいえ。この街は毎晩このくらいは明るいんですよ」
「じゃあ、あっちの行列は?」
「冒険者でございましょう」
「冒険者……」
「宿屋にお帰りのようです」
「ここじゃない?」
「宿屋はほかにも沢山ございますから、別の場所へと向かったんでしょうね」
「ふーん」
つまり黒髪のメイドは、コッタの観察している私を
それはもっと言えば、ロリコンである私の本質が
メイドとの会話の途中で、コッタはほんのりと横顔まで見せてくれたのだが、私の存在に気がつくかないまま、窓のほうに視線を戻してしまった。
それもまた心地よくはあったのだが、黒髪のメイドは、流れ行く時間をどこに配分するかを心得ているようで、短い爪の指先を
「ルーク様がお帰りになりましたよ」
私の名前を聞いたコッタは、肩をピクッとさせてから振り向いた。顔を合わせると、いつもの調子の半分目蓋であった。
「帰ってきたよ」
「うん」
「……」
「……」
コッタはあまり
例えば、先のピクっとした瞬間くらいは、彼女の
それとも彼女の
そんな申し訳ない気持ちになりそうだったのだが、コッタが
となると、コッタが次に何を起こすのか想像ができた。
コッタは〝ていッ〟とでも掛け声が聞こえてきそうなジャンプでもって、予測した通り
コッタはコッタらしくあればいいと思うものの、どこか
冷静に思い直す私は、なかなか大人な態度を守れているのではないだろうか?
私は少しずつ自信を積み上げようとしていたのだが、残念なことにそれはあまりに中途半端なものだったらしく、このあとコッタが繰り出した〝
コッタの表情はなかなか動かないのだが、彼女は大慌てで幽霊から逃げ出したかのようだ。交互に
私から離れてしまった視線は経路を真剣に見つめ、体全体が空間へと割り込み、走って走って……コッタはハジける
コッタのパジャマはズボンのほうが良かったのではないだろうか? そんなふうに気持ちを
ダッシュ全開のコッタは
すなわち、
微笑んで見送っていた黒髪のメイドは、表情を変えて『わたしのほうから注意をしましょうか?』と
気にする必要がどこにあろうか。
お
まだ
ソファーの背もたれの
スリッパにも関わらず二度のコーナー・ワークを
彼女はサンダルに
私は……なんとなく……本当になんとなく……、みずからの〝防御力を下げる〟魔法を……、誰にも気付かれない速度で多重に展開して〝柔らかく〟なっておいた。もし私の脳が不具合を起こして、コッタの加速にタックル
つまり私は以前よりもずっと冷静でいられたし、なんなら
いくつもの理由が、自分に
それは戦い続ける者が呼吸のように続ける思考運用だ……。
私は間違えたかもしれない……。別の意味でメイドには
待ってみたものの、コッタはやはり半歩ほど私の手前まで来ると、キュッと体をわずかに丸めて
無念……。いやいや。だから無念ではないのだよ……。
見事な停止であらせられる。ここはそのように感心するところだ。
ユア・マジェスティ。私はいつも幼女の
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