第41話 メモリー・シールド・システム
「お前とは正式に契約を結んでいない。だが私の頭の中に部屋を作ることができる。それで間違いないな?」
『だから何なんですか! 先から聞いてばっかりで! さっさと冒険に行って下さい! 魔物と戦ってください! ダンジョンに行ってくださいッ!』
幻獣は単体で魔物と戦わない。魔物のほうも
ハジュはここに例外を持ち込むために契約を必要とする――ということだろう。人との契約なしに、ハジュは魔物との戦いに参加できないのだ。それはハジュにとって不戦敗にも等しいのだろう。
Sクラスの冒険には命がけの戦いが含まれる。そして同時にその冒険の成功には勝利や栄光が
コッタの共にあることが最大の冒険だ。
命を
ただこの調子だとハジュの自主退場が期待できない。
だとしたら私はどうするべきか? 今ところ実害はない――ないことはないが現段階においては無いと言っていい。だがこのまま放置していると、いつしか溜め込んだ不満を爆発させて、私とコッタの邪魔を始めるかもしれない。
そうなれば私とハジュの関係は修復不可能なところにまで悪化する。
この事実は、おそらくハジュもしっかり認識できている。ゆえにハジュも簡単に
にらみ合い。
現状維持が無難なのかもしれないが、私は
それに私はコッタと二人きりのほうがいい。
だがどうする? どうやって叩き出す? 戦場に誘い込むことはできない。この調子だと
おそらく
『
契約……。もしかしたら私に残された方法は〝そこ〟にあるのか?
私には〝思い当たる
今の私は、ハジュに対する
頭脳が人の
――クロノスフィールの
かつて冒険者だったときに〝
この術は記憶を封印することができる。
記憶、すなわち脳へのアプローチだ。逆説的に、脳へアプローチできる方法など、私はこれくらいしか持っていない。試せることは、ひとつにまで
……。……。……。
――7歳くらいでしょうか。あの子にはあと何年残されているのでしょう――
午前中に受けたハジュの指摘に、私は答えることができなかった……。
……。……。……。
私は一度だけハジュにチャンスをくれてやることにした。
身から出た錆びなど、私は自分で掃除できる。が、もしハジュが私にもコッタにとっても都合良く働くというのなら、ハジュが求めているであろう勝利の栄光に付き合ってやってもいい。
私は限りなく真実の近くにある
「なんとなくだがな。石造だったお前が動き出した原因に、私は気がついている。お前の復活は、お前を見た〝私の記憶〟と関係を持っているんじゃないのか――と、私は思うのだよ」
あながち間違っていないはずだ。最強の名を欲しいままにしてきた私が感じた直感だ。私のことを信用しているならば、ハジュはここで正直に答えなければならない。
『……』
またダンマリで返してくる。自分から他人を信用することが出来ない
気に食わないとは言わない。
まあいい。もう
「当然、私が間違えている可能性もある。例えば、私だけが有する高いレベルに
『そんなこと分かったからって、なんだっていうんですか?』
「その通りだ。だからはっきり言ってやる。コソコソと
『あの子のためにも、わたしの監視があったほうがいいはずですッ』
「
『ユリスに決まっているじゃないですか。トイレとかお風呂とか。
「私は良識に基づいて行動している。お前の監視など必要ない」
『ないよりもあったほうが健全です』
確かに――
だが今になって言い出したことが
「その態度を改めろと言っている。お前は負けたくないだけなんだろう? あるいはそのせいで、私のことが好きなんだろう? 好意を寄せざるを得ない
『そ、そんなこと……ありません』
勝利を
「
ハジュは下を向いて震えだした。
『したり顔ばっかり……。わたしをいじめて楽しいですか?』
「お前は
『こ、こ……、』
「……」 狂ってニワトリにでもなったのか?
『これから夜だから、わたしにどこかに行けって言ってるんですよねッ!』
「? なんのことだ?」
『コココッ…………コッタと二人っきりの夜がそんなに大切ですか?』
ハジュの顔は赤面していた。勢いに乗せた早口が終わっても、まだ赤い顔のままで、きつく口を結んでいる。それで私に勝利したとでも言うつもりなのだろうか?
「イカレた奴だ。首と
『そ、そんなことしません! それにわたしだって、こんなこと言いたくて言ってるんじゃありませんッッ!!』
「私とて幻獣の
ハジュは目の端に涙を浮かべた。
ロリコンである私への
「もう一度言う。消えろ」
『消えません。絶対消えない……。もう絶対……消えたりしません……』
忙しい奴だ。恥じらいの態度は早くも消えて、今は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます