第27話 ラウンジへ ②
「それではわたくしは一端ここで失礼いたします。ご用がございましたらお近くのものに声をおかけください」
地上階にて金髪のメイドと別れると、私は観葉植物で点々と区切られたラウンジとなっているスペースに場所を移した。
そこの雰囲気はカフェに似ている。だが茶会の売上げを求める場所というよりかは、宿泊客とその訪問客との面会場所として利用されることを想定しているのだろう。
たったひとつの丸いローテブルが、一人がけのソファ四脚によって取り囲まれている。その見事な方円の陣はこのスペースにいくつか形成されていた。
雨水を跳ねていくアメンボのような
今の利用者はまばらであった。私はぽつねんとソファに腰掛けた。
近づいてくる人の気配があった。
オープンキッチンで
「お気づきになりましたか?」
「ああ。壁が少しだけ内側に曲がっているのか。いや。壁というより内側の壁面だけか……。構造までゆがめていないのだろう?」
「ええ。おっしゃる通りです」
無意味にも思える沈黙の共同鑑賞に時間が
「なにかお飲み物でもいかがですかな?」
「コーヒーで」
「当ホテルは産地も
「そこまでこだわりはない。ミルクに負けない
老爺は頭を下げると静かに離れていき、それから私はずっとサイドパックで放置していた時計を思い出した。
このホテルは二階の天井まで続く広い吹き抜けがある。その両端には女神の両腕のような優雅な階段が二箇所ある。
今の私から見るとやや上方。まさに〝女神の腕〟に対して顔にあたるような位置には、巨大な時計が嵌め込まれていた。高級感のある12個の数字を並べた
シャンデリアの照明は魔導鉱石のエネルギーを利用しているのだろうが、こちらの時計はおそらく重力を動力源にしている
私は
静かに時を待つ。
あえて先を行かせていた私の時刻にホテルの時刻が追いつくと、私はリューズを初期位置に戻した。私の時計の秒針が息を吹き返す。私はしばらく同時進行する二つの時計を見比べた。分針も正しく一致している。
トレーの上にコーヒーセットを整えた
「時間が動き出したのですかな?」
時間……。あれから5年か……。私は深き森の中で閉ざされていた時の中から出てきている。今は幼女を連れて
「幼女を拾ったんだ」
「それはそれは。良いことをなさりましたな」
老爺は深く目をつむって頬をゆったりと上げる笑みを浮かべた。
世界はロリコンで
「そんなものかな」
「ここにお泊まりになられる方に拾われたのなら、幸運でございましょう」
「マスター、カネは根本的になにも解決しないよ」
「ではこう考えてはいかがでしょうか。拾ったのではなく、仲間に迎えたのだと」
仲間……。パーティーか……。
「マスターも昔は冒険者だったのだろうか?」
「はい。まだ
冒険者を引退したあとに異なる
今でこそお茶役になっている老爺であろうが、もしかしたら彼の若い頃の職務には、ここの
「列車の運行は増えたのだろうか?」
「そのような
「では減ってもいないだろうか?」
「はい。〝
かつてランキング1位だった
「オウレを心得ている。この技も簡単ではないのだろうな」
「どうでしょう。わたくしもブラックは苦手でございまして」
男子たるものどんなに年齢を重ねたとしてもミルクからは離れられないものなのだろうか。ロリコンに対するアンチテーゼともなりかねないことを考えさせられるから、私は
「すまない……。ちょっと考えごとをしたいんだ」
私はサイドパックからチップを取り出したのだけれども、
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