第20話 ホテル・コストリントン ②
先ほど焦って引っ込んだんだフロントの男は、
その支配人らしき
目の前で白髪のオールバックの頭頂部が見えた。必然的に相手の
「大変失礼いたしました。ご宿泊の案内をさしあげますので、まずはこちらにサインを頂いてもよろしいですかな?」
「ああ。わかった」
鵞ペンとって
そして私に「換金の代行には若干の手数料も頂いております」と言った。
インクが染みてから発言するあたりに抜け目の無さを感じる。あまりに好き放題されては困るので、交渉における威圧感を残すためにも「ほどほどの金額にしておいてくれよ」と返しておいた。
記帳が終わったときには、呼びつけられた新たな男が
フロアにいる〝赤〟は一人だけであることから、その色が
一時的な
その
それでもまずはこの宿屋で助力を得るのが正しいと目星をつけたのだから、私の行動のいくつは矛盾しているのかもしれない。
だが裸のつきまとう設備の使用方法とそこでの所作をコッタに教えてくれる女性のメイドが、私にはどうしても必要だった。それも
他にも細かい要望はいくつかある。私が今だ
コッタが。
私はいい。私ならばコッタのための苦難、苦役、無理難題……そんなものいくらでも受け入れる
私が見落としうるキメ細やかなサービスを提供しうるのは、〝高級宿のメイド〟以外に存在しない。ここではコッタのみならず、実は私もアドバイスを受けるべき対象に含まれているのだ。
コッタに上流階級の生活を教えるためにここに来たのではない。むしろ常識という点において、本来はここにくることは避けるべきであったのかもしれない。
だが私のそばには捨てきれない可能性の渦が回っていた。
私の弱点を補うためには、高級宿に向かう以外に正しい
私は冷静だ。初手で
この宿ならば浴室から裸のままコッタを連れ出して、私が同時に存在する室内で
私は
いまだにこの国には
先導する
「当ホテルのスイートルームでございます。どうぞ室内をご覧ください」
ニスでテカッた
そこは私たちが先に通る客室と廊下の境目だ。私はコッタの背中をそっと押すかのようにして――つまりは触れたりせずに、ささやくことで室内に進むようにうながした。
「入ろう」
「うん」
コッタはちょっと不思議そうな表情をコチラにむけたあと、短い通路を進みだした。
広々としたリビングの端っこで、いい
「お部屋のほうのご説明はいかがなさいましょうか?」
「いや。結構だ」
男のお前に教えてもらうことなど最初から何も無い。ここは今から幼女ための修練の場となる。すみやかに立ち去り従業員一堂に向けて男子禁制の
お前ももうわかってるだろう?
呼ばなければもう来ないはずだ。メイドも
「すぐにご希望の客室メイドを
「大丈夫だ。下がっていい。メイドが来るまでここで待っていると伝えておいてくれ」
スマイリーな
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