常識は40万リリングのメイドを買って手にいれるしかないのかもしれない
第17話 半分目蓋は幼女の初期装備であるのだろうか ①
リーゲンハイムの郊外には草原の平地がある。ルーシーが降り立つには十分な大地だ。ステルス・パウダーの機能は人の目を
壁門から1キロ程度は離れた地点になろうか。私はルーシーと相談しつつ〝そこ〟を着陸地点として定めた。
遠くに人影があるのだが、これだけ離れていると私たちが突然に姿を表しても騒ぎにならない。一般人は、小さく見える私たちのことを、今まで気がつけなかった存在として思い込む。風景の変化に自然な納得を与えて、そして日常に帰っていく。場合によっては無意識だ。
私はコッタを抱きかかえて……。抱きかかえてから……。つまりは抱きかかえるのだが……。
私はあまり意識しないように注意しつつ「ちょっと持ち上げるよ」と言い、横抱きで拾い上げるのに都合の良い座り方をしていたコッタをそのまま持ち上げて、ルーシーの背中から飛び降りた。
コッタを地上に降ろしたところで、ルーシーは『それじゃあ、またいつでも呼んでね。コッタちゃんもまたね』と言って、返礼の言葉も聞かずにパッと消えた。特別な演出はなにもない。帰る先は幻獣界かどこかだろう。深くは聞かないようにしているから空想するしかない。
コッタは高く掲げた手を使って、「バイバイ」とルーシーの姿が消えたあたりの空間に別れの挨拶をしていたのだが、声は届いてないと思う。こちら側の気持ちの問題でもあるし、可愛いらしいから良しとする。
そうした彼女の仕草などを見るに、彼女は元気を取り戻しているかのように思える。けれども
矛盾しているかのようなのだが、ステータスは相変わらず良好で、目視においてもコッタからはふらつきそうな気配が感じられない。頬も丸みを取り戻し、体のほうは活発に動けそうに見える。別れのお手手は真っ直ぐ伸びていた。
見た目から健康状態を
つまりは――その眠たげにも見える
私が「
では心のほうはどうかというと、それは別次元で
このまま私の思うままに事を進めても――――。とりあえず許されることにしよう。
「このままじゃ歩きにくそうだな……」
「そうかも」
私が下を見ると、コッタの視線も地面へと落ちた。
私はまず、コッタの身長に合ってないエルフィン・ローブを短くすることにした。
エルフィン・ローブは2メートル弱の私の
「ちょっとマントを貸してくれないか?」
「うん」
コッタは目算で7歳だ。
ささいな動作の中にでもキラメキがあり、それは絶妙な刺激で私の感覚をくすぐってくる。こちらに届いているものは、小さな体でもちゃんと動くのだという、神秘的な感動だ。
コッタにも見られている。一人だけ舞い上がっている気持ちの悪い奴にはなりたくない。
冷静に。冷静であればいいんだ。
私は何度も自分に言いきかせながら、コッタのエルフィン・ローブを受け取った。その生地からコッタの温もりが感じられる。
いやいや。そんなはずはない。エルフィン・ローブの効果だ。冷静に。冷静に……。
今の私は
私のすべきことは、長すぎるマントの
私はマントの生地が空中で
このマントが空中に浮かんでから落下するまでの時間は、
そして
私は広がったマントを見つめて、だいたい半分よりちょっと短いところに
右手を
S級の装備にもいろいろある。エルフィン・ローブは高性能な魔法防御力と生活機能に長けている点が評価されてSとなっている。けれども物理的には比較的柔らかい部類のもので切断可能だ。私は簡単に二つに切り裂いてリメイクを完了した。
地面におちても汚れ知らずのマントである。ただわざわざ落としてから拾う必要もないわけで、私は落下してしまう前に、二つに分かれたマントの両方を
私はすっきりしたマントをコッタに返した。私の正常を奪いうる小さなその手とは触れ合わないように注意した。
残り半分の生地は革袋の中にしまった。キレイに切り分けたS級アイテムの切れ端である。捨ててしまうのは少しもったいない。コッタの成長に合わせて再び
コッタはぴったりになったサイズのエルフィン・ローブを身につけた。ちょっとだけ新たな
コッタの小さな歩幅を基準にして、私たちは街のほうに伸びる道の上を進んだ。
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