第15話 人形は放置
ルーシーが自宅の正面にある
私は急いで準備にとりかかった。
リビングのいつもの
コイツにはもう一つアイテムを入れたほうが良いだろう。
私は台所のほうに向かい、
次にカラクリ
その先はすぐに地下へと続く階段に接続している。さらにその先は小さな一室に繋がっている。私が金庫として利用している特殊な合金製の堅固な小部屋だ。
私は入口の横の壁に埋め込まれている青い宝珠に向けて、最弱の攻撃魔法を小さな
開場のキーを受けた入口は、久しぶりのことだが問題なく横にスイライドして開いた。同時に天井に埋め込まれているラインに緑色の光が灯る。
室内には大切なS級装備や、まんべんなく積み上げた
金は世界中のどこにおいても手軽に現金と
部屋全体は未踏領域にある古代に滅びた超技術の文明都市から持ちかえったものだ。〝部屋を持ち帰る〟のは苦労したが、その成果として、簡単には開閉できない〝最後の砦〟となっている。現代の技術では再現不可能な建造物だ。まともな方法で突破することもできない。あけ方を覚えているのは私くらいなものだろう。
私は階段を昇りカラクリじかけの本棚を元にもどした。そこで背中のほうから風に押し出されたような光りが届いた。ボッという音が聞こえる。
私ではない。ハジュの魔法だ。
「ユリス。行くのですか」
「ああ。行く」
私とハジュの
室内が
「だったらわたしも……」
「お前は来るな。用がない。最初に言ったはずだ。お前は自由で、どこにでも行けばいい」
「……」
ハジュの言葉はそこで止まった。
私はハジュに対してマイナスの感情しか持っていない。こいつからは嫌な〝予感〟ばかりが流れ込んでくる。直感的な
ハジュは見た目こそ幼女であるが幻獣である。私が思いを寄せる要素はどこにもない。
私は
私は脳内展開中のマップを参考にして、現実の地図のほうにコッタが
「……」ハジュが下から私を
こいつが
〝冒険に行かないのですか〟
〝幼女の観察はやめたほうが良いのではないですか?〟
この二つの発言を使って私を細かく
ただ今はもうすべてを水に流そう。私はコッタと旅立つ。苦しく困難な道のりになるかもしれないが、私は前向きにコッタを勇気付けたい。
「
お前らは空間転移が使えるのだろう? 私はハジュに対して
「
「なにもない。お前には関係ないことだ」
「……」
窓のほうに視線を飛ばしても、家の中からだとコッタの姿は見えない。ルーシーの
私は〝
「サラバだと言っておこう。お前も冒険など忘れて気楽に生きていけ。世界はあらゆる光で満ちている」
「……」
私は低空ジャンプと、風魔法による
私は
私は再び動き出すことになったのだ。
私はドア・ステップを一気に飛び下りて、足音を殺しつつ庭の
私は次のジャンプで高く飛び上がって、ルーシーの背中にそっと着地した。コッタは眠っている。私は引き続き静かにルーシーと会話することにした。
「待たせたな」
『それで、どこに行くの?』
「リーゲンハイムに連れて行ってくれ。森を抜けてから高度をあげてほしい」
『オッケー。あそこって〝
「王城にはついてるな。〝3枚目の壁〟が目印だ。だけど町全体には
『今は
私はルーシーの
『ねえ? ところでユリス……』
「なんだ?」
『楽しそうだね』
ルーシーはサバサバとしている性格だ。私を
「やはり私はクズなのかもしれない」
『なにそれ?』
だが今の私はもうグズグズと
「いや。気にしないでくれ。日が上ったら
『うん。それじゃあ今から全開でいくよぉぉ!!』
「おい。
南の方角を目指してルーシーは静かに飛び立った。
その
「ルーシー、もうちょっと
『なんで?』
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