第11話 エルフィン・ローブ
また夜が近づいて来ていた。この地方の昼間は穏やかな気温になるのだが、夜の空気は少しばかり冷たいものになる。
私は
「着ておくといい」
「……」
幼女は返事をしなかったのだが、小さな両手が素直にローブを掴んでくれた。
それでもSという
「このローブはちゃんと身につけなければ意味がない」
「……」
静かな顔で見上げられる。はてな顔とでも言うべきか。ささやかな疑問を抱いたときの小さな硬直が幼女にあった。
私の説明が悪かった。
「貸してもらうよ?」
エルフィン・ローブはマントの形状をした装備である。私はコッタからそっと引き取ったエルフィン・ローブを空中でなびかせて広げ、首元にあたる生地を彼女の頭上からすっぽりとかぶせた。ついでに肩口の生地をつまみ、少し回転させて正面をきれいに合わせてやった。
再び
「ぬくぬく」
幼女の声は小さく響いた。私も合わせて小さめの声を使った。
「それが装備するということだよ」
エルフィン・ローブはもともと私のサイズに合わせて作られたものだ。その
そのペラい生地ではありえない状態を、感じ取ることができているのだろうか?
エルフィン・ローブは
「私はユーリス。親しいものはユリスと呼ぶ」
「ユリス。……ユリス何?」
「ユリス・クヴァンツスだ」
幼女の
かつてギルドランキング1位に
幼女に対して
幼女は私から視線をそらした。
「コッタじゃない」
「ああ」
コッタ……。すばらしい名前だ。ずっと聞きそびれていた幼女の名前を
お
私は誰よりも幼女について詳しくありたい。
だがその心はすぐに
コッタに異変が起きている。
地面のほうに
私はみずからの
マントの下に
「コッタじゃない」
コッタの声は最初から今までのあいだずっと
「コッタじゃない……」
コッタの両手が寒さから身を守るように強くマントを引きこんだ。そしてコッタは地面に座り込んだ。ただでさえ小さな体であるにもかかわず、それをいっそう世界から
私はコッタの近くに
「わかった。コッタじゃない。私だ。私の
彼女の反応はすぐには返ってこなかった。「大丈夫だ」とか「私以外に存在するわけがない」「私は腹が減るとよく腹が鳴るのだよ」だとか……。いくつも言葉を
「ちょうど私は腹が減っていたんだ。また
「……」
明るく尋ねてみたのだが、コッタから返事はなかった。
私は話題を変えることにした。
「コッタ、なんというのだろうか」
「コッタ・ニークエアイム」
「ではニークエアイム
「ここで
「そうか……」
〝ここ〟とは〝どこ〟のことを言ってるんだ……。この広大なトスト森林地帯のことを言っているのか。それとも、そこかしこにある
チクショウが……。
ここには目印になるような物など何一つ存在しない。
〝お父さんは向こうでちょっと用事がある。コッタはここで待ってなさい〟
根本的な解決に結びつく非難すべき相手が不在である私は、どんなに
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