16.わけがわからないですよね
自衛官は、緑と茶色の迷彩服に同じ
「あ、はい……その……」
「職員の
濃い
青年は堂々として見えた。この数日、テレビや配信画面の向こう側に、青年と同じ姿の自衛官をよく
「あの」
思わず、声が出た。
「大変、ですよね……戦争とか、ミサイルなら楽ってわけでも、ないでしょうけれど」
ニュースの中には、遠回しな、
自然災害ならともかく、明らかに危険性を持った存在が、二回も市街地を破壊したのだ。これがどこかの国の兵器とすれば、対応の遅れは致命的だ。
状況だけを観察すれば、対立する破壊兵器同士が、勝手に戦闘行為をしたように思える。なんの
そういう理屈は、もっともらしかった。なんなら、日本政府が悪いように聞こえてくる。
「あんな怪物、わけがわからないですよね。政治家も自衛隊も、どうしろ、って話じゃないですか。こんな急に、めちゃくちゃになって……今までの普通が、なくなって」
外からの情報は、やったことを
「次は、もしかしたら、みんな……」
がんばっても、これからもっと、悪くなるかも知れない。成績が下がって
気がついてみると、情けないと言うより、しょうもない。
「そうですね、大変です」
青年は、うつむきがちに帽子を脱いで、胸に当てた。
「航空自衛隊は
「いえ、そんな!
「おっしゃる通り、次にどうなるか、自分にもまったくわかりません。ニュースで言っているように、市街地で武器を使用するとなれば、災害出動の範囲で可能なのか、防衛出動になるのか、そこから議論している状態です」
青年が今度は、少しだけ子供っぽい顔になる。
「怪獣映画みたいですよね。本当は、
頭を下げてから、帽子をかぶり直した青年は、また堂々とした感じに戻っていた。
「水道や電気が止まっているところ、ありませんか?」
「え……?」
「ガスや石油は、この状況では危険ですので、冷えるようなら追加の毛布を支給します。仮設トイレや
「あ、ええと……」
「インフラが機能して、生産活動が継続していて、
青年の後ろのテントから、同じ迷彩服を着た自衛官の人たちが、大きな
「訓練でやったことありますが、食料を完全自給するのって、種類も量も不足するのに
青年の言葉が、
「この街の外、ですか……」
「ですから、自分も働きます。大変でも、わけがわからなくても、仕事をします。まず、そうですね……カレー、温かいうちに召し上がってください。元気が出ますよ」
最後にもう一度笑って、敬礼をしてから、自衛官の青年は仕事に戻って行った。
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