7.あたしがついてるからね!
四時限目の英語も後半戦に入る頃、
単語や文法ではない。校内自動販売機の、種類と位置だ。
「イチゴミルクとフルーツミックスは、そこの階段横だよな。
まったく面倒な指定を、という文句は、危うく飲み込んだ。謝罪の心を示す、誠意の問題なのだ。それにしても、
「そこにこだわらなければ、どこでも良かったのに……けど、ブラックは苦手だったよな、確か。他人のポイントって、意味がわからないな」
考えてみれば
その点、まずイチゴミルクが出てきた
自分用にもう一つ買って、さりげなく同じものを飲んでいたら、アピールになるだろうか。それとも、キモいと思われるか。
果てしなくどうでもいいことかも知れないが、
教室の窓が南向きなので、東側の海から、西側の山まで、ギリギリ見渡せる。
あまり高くないビルの上、山の真ん中くらいに、小さな赤い光が見えた。
そう、小さな光だった。ストロボのような強い投射光でもなければ、風景の中で大きな存在感の光でもない。それでも、
覚えのある、赤い光だった。
「あ……っ!」
教室の窓は閉まっていた。空気を
晴れた日の昼休み前、明るい
暗い赤が
空の青と山の緑を乱反射して、形状が浮かび上がる。本能的な嫌悪感を呼び起こす、無秩序に
「あの怪物、また……!」
「ひ……ッ」
近くの窓際の席で、
教室のあちこちで、同じく異質な声が上がり、同じような形に表情がゆがんだ。
昨日、街が破壊されて、人が死んだ。
今この瞬間に、あの怪物が
「落ち着いて、
それでも、言ったことが、聞いたことが、意味になった。
「み、
「それでいいんだよ。大声で走り出されるとか、そっちの方が、大変なことになるし」
「うんうん!
「それにしても、なんかすごいねー。映画みたい」
とぼけついでのように、
怪物は山から降りて、街に近づいている。山の
「まだ、遠い……みたいだ。でも、大きな建物は多分、向こうからも目につく。
「
「あはは! こっちはこっちで、クイズ番組みたいだねー」
「あ、ありがとう……
最初に悲鳴を上げた
英語の担当は、穏やかな年配の男性教師だった。
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