第12話ずっとそばに



多少お弁当を持たせたと言ってもそんなには保つはずがない。


普通のお弁当なら1日放置で腐る。


どんなに寒い時期だといっても、

1日置いた弁当は、サヨーナラだ。


それが半月も帰ってこないなんて、おかしすぎる。


もうダメだ。安否を確認したい。


ディーがどんなに俺を壊してもいいから、だから姿を確認したい。


不吉なことばかり頭を掠める。

イヤなシーンだけが浮かぶ。


俺は、イライラしながら部屋の中を歩き回る。


何度と玄関まで足を向けるが、ディーの顔が浮かんで1歩を踏み出せない。


何かしていたくてモップを持ち出して部屋を掃除する。


もう、同じことをしていて埃も置いていないし、窓もピカピカだ。


1日に何回もトイレ掃除もお風呂掃除もしている。


窓に手を置いて外を眺める。


窓を開けて身を乗り出す。

こんなことをしてもディーが見えないことなんて、分かっているのに。


心配でどうにかなりそうだ。


「ディー」


俺の乳首にあるディーの鱗を握る。


痛みと快感が体を襲うが、心配が勝って勃たない。


ディーの鱗を触らずにはいられない。

ディーの1部が俺に付いていることがこんなに心強いなんて思わなかった。


鱗がなかったら既に俺は叫びながら、特区内を探し走り回っていただろう。


開けた窓を閉めて。窓におでこをつける。


ドーォオオオオン


どこかが爆発する音が響き、

窓ガラスもビリビリと振動した。


もうダメだった。気がついた時には走り出していて。扉を開けて。建物を出ていた。


久々の外なのに、それよディーだ。


俺は爆発した場所に向かって走り出した。


外には自衛隊の人達が使う建物が沢山ある。

その中で俺がいたアパートは1番安全な外側にあった。


至る所で、人の叫び声がする。


蟲人が入ってきたんだ。なら何処にいても安全じゃないな。


ディーだけは無事でいてくれ。


走り続けて、爆発があったであろう場所にやっと来た。


土煙で、視界がきかない。

沢山の人の呻き声が聞こえる。


俺の首に何かが巻き付く。


ディー?


違うな、先端が二股に割れていない。


俺は引き摺られて、何かが俺の背中にピッタリとくっついてきた。

手と足を拘束させた。


背中にゾワゾワと悪寒が走る。


気持ち悪い。


「誰だ、離れろ」


走りすぎて息が荒い。


俺の耳元にそいつの顔があり喋った。


「酷いな、ボクとは兄弟だろ、

穴兄弟」


高めの声の可愛い感じをワザと出している。


俺の後口に服の上から何かを差し込んで、侵入してくる。


ありえないくらい深く刺さり、腸壁を突き破って、俺の中に何かを植え付けた。


用が終わるとすぐさま抜き去る。


触手が勢いよく振られて、俺の体液が振り払われる。


「何をやった」


俺の体は再生している。


「アッレー気持ちよくなかった?

おかしいなぁ、なぁんてね、何をやったかは秘密だよ、そのうち分かるし」


コイツの声は鳥肌が立ち悪寒が収まらない。


「離せ」


「いいの?離しちゃって、これからディー様の所に行くのに、一緒に行ったら喜ぶと思うんだ。


だってぼく達兄弟だもん、もちろんボクがお兄ちゃんだよ、でももう喋らないで、ボクのディー様を取った弟なんて大嫌いだ。


でも遊んではあげるね、ボクお兄ちゃんだから、ディー様も喜ぶよ、ボクの指きっと気持ちいよ」


「ロプだろ、ディーは無事か」


「ボクのことはロプお兄ちゃんだよ、ディー様にはちゃんと様つけないと、覚えるまで躾してあげるね」


俺の後口に触手を刺して動き始めた。


痛みが全身を貫く。


ぐぁぁぁ


叫び声をあげる。


「そんなに良かった?もっと太くしてあげる。ボクの手は自在に動かすことが出来るんだよ」


無理やり広げられ、野太い叫び声がでまさてしまう。


「もう、叫ぶことしか出来ないね、ボクが殺された時はもっと太かったよ、でもこれ以上したら壊れちゃうから、これくらいならまだイケるよね」


「ヤメ」


「まだ喋れんだァ、お口も塞ごぅ」


ロプは語尾を上げて楽しそうに呟く。


何本目か分からない触手が、口に差し込まれるのを食いしばって阻止する。


すかさず何本もの触手が無理やり口を開けさせて喉の奥まで侵入してくる。


ロプは楽しそうに声を上げてディーの元に向かった。


息も絶え絶えになりながら恐怖で体がガタガタ震える。


ロプは俺を解放する気は無いらしく、後口を激しく抽挿している。


神社に着いた時は俺の目は虚ろになっていた。


耳元でロプのため息が聞こえた。


「ダメだよ、全然大きくならないじゃん」


ロプは俺のズボンを破り捨てて、

恥部を晒す。


恐怖で縮み上がる俺のおチンチンに触手を絡ませて、触手を細長くした先端を俺の鈴口に差し込んで、尿道を広げる。


口も塞がった俺は涙しか流せない。


俺の腹の中でゴニョっと動いた気がした。


穴を塞がれたまま、神社の参道を通り階段を登る。


境内に着く。


俺は異様な光景に全身の毛穴が開く感覚に鳥肌と寒気が一気に襲ってくる。


ディーはそこで触手の蟲人と戦っていて、既に100体以上は殺している。


ディーは殺したロプの顔をした蟲人の顔を剥ぎ取り社に並べている。


俺は嘔吐く。


「ダメだよ、ゲェしちゃ」


ロプは俺の耳元で囁いた。


スゥスゥと俺の息の音が響く。


ロプはかろうじて俺の息だけ出来るように。空気の穴をあけていた。


俺はロプに生死を握られていることを強く感じ、ガタガタと体を震わせることしか出来なかった。


ディーは一体、また一体と触手蟲人を殺して、顔を剥ぎ取る。


それだけを繰り返すマシーンの様だった。


「見て、弟くん、ディー様が壊れてる。

ボクと一緒だよ、だから弟くんの入る隙なんてないんだから」


社がロプの顔で埋め尽くされる頃、空には真丸のお月様が登り、境内にあった全ての卵が孵る。


触手蟲人が量産される、それをずっと繰り返していたんだろう。


そして、飛び散る触手蟲人の体液からまた卵が産まれる。


ロプが楽しそうに笑い声を上げ

た。


その声に反応して、ディーが跳躍する。


御神木が俺を弄んでいるロプを蔦で押さえ込んだ。


ディーは蔦で抑えられた、

ロプ目掛けて、眉間を刺した。


「なん、、で」


「他の偽ロプは喋れねぇんだよ、お前を待ってた。ロプの紺魄を返せ、ボケが」


ディーが引き抜いた手には紺色のコンパクがあった。


「紺色」


俺が呟く。


「あぁ、こっちの星じゃコンパクは紺色だ。


アロだいぶやられたな、だから建物を出るなって言ったのに」


ディーは優しい声で俺のおでこに唇を落とした。


ディーは俺を横抱きにして運び、御神木の近くに横たえた。


残りの触手蟲人を一気に毒で片付けた。


死骸も溶かして綺麗さっぱりとさせていた。


俺はぼんやりとその光景を眺めていた。


残ったのは数個の卵だけだった。


ディーが俺の近くに来た。


ディーは御神木と向き合う。


「約束だ」


*******、*****。


「そうだな、助かった礼を言う」


****、**、*****。


「あぁ、出してくれ」


******。


御神木の幹が割れて中から汚泥を固めたような塊がふたつ出てきた。


ディーは御神木からの光り輝く枝を受け取った。


汚泥の塊を光り輝く枝で突き刺し、ふたつの塊を壊した。


辺りから次々と風船が割れる音がする。


最後に境内に残った。卵も割れてた。


俺は、すべてが終わった事を知った。


そして、境内にあった御神木も最後の力を使い果たし、崩れ落ちてしまった。


ディーは俺の横にドサッと座り込んだ。


「んーー、疲れたー、あぁ終わった終わった」


「そうだなお疲れ」


「とりあえず風呂入って、アロを食べたいな」


「俺も風呂入りたいよ、まぁ、ディー先に風呂入っていいからな、久々に出た外は散々だ」


「一緒に入んねぇの?風呂」


「何言ってんだよ、ちゃんと疲れを取れよ」


「はいはい、分かったよぉ。

帰るか」


「おう、帰っッッッッッつつ」


俺の腹がゴニョリゴニョリと動く


「どうしたアロ」


大きな声でさけぶ。


ボコボコと沸き立つように俺の腹が動き突き破る。


10cm位の小さな人の形をしたロプが3体産まれた。


小さな声でディーシャマ、ディーシャマ、ディーシャマと鳴いている。


「アロ、どういうことだ」


「そういやぁぁぁぁぁぁx、なんかうめこまれてたんだっけな、まだ俺の中にいるぅぅぅぅ、俺の体の中を食い破る音がする、早くディーの毒で全部溶かしてぇぇぇぇぇ、くれ。


はぁ


色々あったけどたのしぃぃぃかった。ありがとなっっx」


アローーーーーー。


ディーの叫び声が聞こえる。


そんなに叫ばなくてもいいのに。


もう何も聞こえない。


全ての色が消えていき、視界が狭まる。


もう何も見えない。


俺のいままでが流れ、ディーとの月日が俺の後ろに消え去り、


暗転した。









「分かった、アロを殺したこいつらをちゃんと溶かすよ。


ちゃんとアロの言うこと聞くからオレの側にいて、


ねっアロ」


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スプリット・分れ道 相晶 三実 @yamatomoitimi

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