第21話 とある子供好きの置き土産

さて、残りはUSB、どんな能力があるのやら。期待を胸に説明書を探すが、代わりに別の説明書があった。


「これを読んでいるということは、私の笛について気になっているということでしょう」


辺りを見回しても笛なんて見当たらない。この言い方に笛となると、たぶんパフォーマーの説明書なんだろう。


「もし笛がないというのであれば、階段横の小部屋に私の笛の音を録った録音魔道具があるのでそちらを使ってください」


小部屋に向かい、ドアを開ける。


中は薄暗く、物置部屋のようだった。実際全ての壁に棚が置かれ、その中に付箋で


「私の演奏を録ったもの」


とラベリングされたトランシーバーのアンテナがない版のようなものが置いてあった。


リビングに戻って説明書を読む。コインで学んだよ、先に説明書を読まないと酷い目に遭う。


「あまり道具には詳しくないのですが、ビルダーさんによると魔道具には中に薄い水晶の板が何枚も入っており、中の針で振動を加えて水晶に傷を付けたら......すいません、この先は覚えてません。とにかく、側面のレバーを引けば音が流れます。音が流れるとどうなるかというと、聴いた人が音が止まるまで動きを止めます。私の音色に聞き惚れてるんでしょうね。そういうことですので、どうか慎重に扱ってくださいね?」


「追記。勇者さんは金髪で童顔の青年と聞きました。もし私とあなたが生きて帰れたらーー」


そこから先は読むのをやめた。読んじゃいけない気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る