七 其は断ち切るに値する

 昼休み以降の少女は、憂鬱の代わりに諦めのみを胸に抱いてただただ存在をしているのみだった。

 何の感情もなく、ただそこに在るだけ。

 絶望ですらなかった。

 授業を終えると脇目もふらずただ真っ直ぐに少女は自宅へと帰る。それしかなかった。

 自室にこもって、彼女は気付く。

 こんなにも衝撃的で、ショッキングな出来事であるにも関わらず、涙の一つも出やしないということに。

 ――私って、そんなに薄情だったの?

 そんな事実のほうがよほどショックで、少女は一人ベッドに顔を伏せる。

 しかし件の骨のことを思い出して、弾かれたように身体を起こすと「店主さん、聞こえてますか?」と声を発した。

『なんじゃ。不躾じゃの?』

 少しばかり不機嫌そうな声が室内に響く。

「お願いがあります」

 落ち着きを払って静かに少女は言った。

『ふむ、どうするか決めたということかの?』

「はい」

 答えのあとしばらく、静寂のみが部屋を満たす。まるでそこには誰もいないと感じさせるほどの静けさだった。

『して、どうするんじゃ?』

 静寂を破ったのは店主の声だ。

「やっぱり、あの子を……あの子達を呪ってください」

『……いいんじゃな?』

「はい」

 躊躇いはない。

 少女は決意の表情を浮かべていた。


 ──これで、おしまいにしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る