パーティー-3
皇帝への挨拶を終えて先程の場所まで戻ってきた俺達は父達と別れた。
中心にいては2人が落ち着かないだろうと思い、壁際に移動するとリリアが口を開いた。
「まさか、帝都で会った人が第二皇子殿下だったなんて‥‥‥」
「ねえ、レイス様、私達大丈夫なの?」
リリアの言葉に賛同したルルアがそう俺に尋ねてくる。
「どういうことだ?」
「だから、第二皇子にあんなことして大丈夫なのってこと」
「ああ、問題ない」
先日帝都で第二皇子が血を吐いた時に誰も奴に近づかず、護衛らしい者も近くにいなかったなかったことからして、あの時第二皇子は帝城を抜け出してきていたのだろう。
第二皇子ともなれば第一皇子ほどでなくとも学ぶべきことが多くあり、帝城を抜け出してあんなことをしている暇なんてありはしない。
それにも関わらず帝城を抜け出していたのだからこのことが露見すれば第二皇子にとって不利益しかない。
なので、立場を利用して俺達に手出しをすることは不可能だ。
せいぜいが個人的な嫌がらせが精一杯だろう。
それを2人に説明するとリリアは納得した表情を、ルルアはポケーっとわかったのかわかっていないのか判断できない表情をしている。
「ルルア、理解したか?」
「あ、うん。理解した」
「そうか」
理解したにしては目が若干泳いでいたが。
公爵邸に戻ったら勉強もさせた方がいいかもしれないな。
そんなことを考えながら俺は料理の並ぶテーブルの方に足を進める。
「旦那様、どちらへ?」
リリアが俺に尋ねてくる。
2人の方に目線だけを向けつつ答える。
「食事だ。お前達も食べておけ。昼から何も食べていないだろう」
「はい」
「わかった」
俺の言葉に2人とも嬉しそうな表情を浮かべると、足早にこちらに歩いてきた。
それぞれ好きな料理を自分の皿に取り分け、何も置かれていないテーブルの側に移動する。
テーブルの側に着くと、早速とばかりにルルアが自分の皿に取り分けたサラダパスタを口に入れた。
「ん〜っ」
瞬間、表情を綻ばせ、実に美味しそうな声を漏らす。
口の中に入っていたものを飲み込むと、ルルアは興奮気味に感想を語ってくる。
ルルアの様子に感化されたのかリリアも同じようにサラダパスタを口に入れた。
「ん〜っ」
先程のルルアと同じように表情を綻ばせ、声を漏らす。
姉妹で仕草がそっくりだ。
何気に初めて2人が姉妹であることを実感した。
「旦那様。旦那様も食べてみてください」
「レイス様っ」
そんなことを考えているといつの間にか2人が目の前に立ち、ルルアが俺の方にパスタを巻いたフォークを向けている。
俺はサラダパスタを取り分けていないので分けてくれるのだろうと、口を開く。
「はい、あ〜ん」
わざわざ口に出して言いながら、ルルアが近づけてくるフォークを口に含む。
「レイス様、どう?」
フォークを俺の口から引き抜いたルルアが目をキラキラさせながら聞いてくる。
口の中に広がるさっぱりとした味と野菜の食感を感じ、口の中に何もなくなってからルルアに答える。
「美味いな」
「だよねっ」
俺が共感したのが嬉しかったのか、その後も上機嫌に食事を続けるルルアやリリアと同じようなやり取りを何度かして食事を終えた。
「‥‥‥ちょっと苦しい」
使用人から受け取った飲み物を飲みながら少し休んでいると、ルルアがボソリとそう溢した。
「食べ過ぎだな」
「うぅ‥‥‥姉さんはなんで大丈夫そうなの?」
「私は調節しましたから」
「うぅ‥‥‥」
調子に乗ってパクパクと料理を食べていたルルアは苦しそうにお腹を摩っている。
それを横目に周りに視線を向ければ、至る所で何人かの貴族達が集まって話をしている。
おそらく、貴族特有の自慢合戦でもしているのだろう。
くだらん。
自慢をしたところで何が変わるというわけでもないだろうに。
貴族達の様子見つつそう思っていると、会場内で流れていた音楽がダンスをする時に流れるリズムに変わった。
それに伴い貴族達が会場内でテーブルの置かれていない場所に向かい始める。
「旦那様、貴族の方達が同じ方向に向かい始めましたけど、あれは?」
リリアが俺を上目遣いで見ながら聞いてくる。
「ダンスだ。こうしたパーティーでは大体ダンスがある」
「そうなのですか‥‥‥」
リリアはどこか羨ましそうに貴族達の方に視線を向けている。
ふむ。
特に問題はないな。
「リリア」
「はい」
「踊るぞ」
「え?」
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