パーティー-2
会場の奥、一段高くなった位置に立つ皇帝が会場内の貴族に向けて言葉をかける。
その時に第二皇子とミリアンナの婚約が成立したことも正式に発表された。
貴族達は手を打ち鳴らし2人の婚約を祝う。
それがひと段落したあたりで父がシャルミリナとクラインを連れて俺達の元にきた。
「レイス、皇帝陛下にご挨拶に行くぞ」
「はい」
こうした場で皇帝に挨拶をするのは貴族のそれと同じく身分の高いものからとなる。
公爵家は皇室を除けば最も身分の高い家となるので最初に挨拶に行くのは必然である。
第二皇子が先日帝都内の喫茶店で遭遇した男であったことへの動揺が抜けきれていないリリアとルルアを連れて父の後に続く。
第二皇子が悪魔の力を持つことがわかった今、下手に2人の側を離れるべきではない。
相手の視界に2人を入れることになってしまうが、俺のそばにいる限りは何もできないだろう。
会場の至る所に立つ貴族達を避けながら進み皇帝達のいる場所の目の前に辿り着く。
パーティーで膝をつく必要は無いため立ったまま少し深めに頭を下げる。
「皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
「よい、頭を上げよ。今更お前に畏まられるとこちらの調子が狂う」
父の畏まった挨拶に対し、皇帝はフランクな言葉で頭を上げることを許可する。
それに従い頭を上げれば俺よりも高い位置にいる第二皇子の姿が目に入る。
奴は先日の無様な姿とは違い、第二皇子らしい自信を持った姿をしている。
先日の姿を知っている身としては道化にしか見えないな。
そんな俺の側で皇帝と父がたわいもない会話を始める。
こちらに話が振られる可能性も考え耳を傾けながらも第二皇子から意識を逸らすことはしない。
第二皇子が父の後ろに立つ俺やリリアとルルアに気がついた。
その顔に驚愕の表情を浮かべている。
この場に俺たちが来る可能性を微塵も考えていなかったのだろう。
貴族が帝都のあんなところにいるなんて考えもしなかったのだろうが、もう少し表に出る感情をコントロールしてほしい。
第二皇子と言えど、まだ皇帝になりこの国を支配する可能性が残っているのだからそれでは困る。
だが、おかげで先日の一件が第二皇子にとってそれなりに響いていることは確認することができた。
驚愕の表情を浮かべている顔に対して、その瞳には小さいが俺に対する恐怖が浮かんでいる。
いきなり血を吐くほどのダメージを受けたのだ、無理もない。
さらにその攻撃の正体がわからなとなれば尚更だ。
手が出しにくいこの状況で、第二皇子が仕掛けてくることも考え警戒していたが、この様子だと仕掛けてくることはないだろう。
「ーーそれでは私はここで失礼させていただきます。陛下にご挨拶を申し上げたい貴族はまだまだおりますからな」
「うむ。ではまた仕事の時にでも」
意識を傾けていた父と皇帝の会話が終了した。
父が皇帝に礼をするのに従い、俺も頭を下げ礼をする。
皇帝達に背を向け、その場を後にする。
父の背について行きながら頭の中で考えを巡らせる。
第二皇子が俺に対して恐怖を抱いていることは確認できた。
だが、こちらに接触をしてくる可能性がないとは言い切れず、第二皇子が悪魔の力を使うとわかっている以上警戒を緩めることができない。
「‥‥‥不安の芽は摘んでおくべきか」
「あの2人がぁ、君の言ってた女の子達〜?」
「そうだよ。僕が初めて本気になれた女の子」
「ふ〜ん」
「ダンスが終わったら、よろしくね」
「は〜い」
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