社交界編
一ヶ月 (改)
視察を終えた日から一ヶ月が経った。
玄関ホールでの出来事の後、父に視察の報告をしリリアとルルア、セリーナを俺の専属メイドにする許可をとった。
もちろんセリーナを奴隷として購入したことも伝えたが父からは扱いだけ気をつけろとのことだった。
帝国の宰相を務めているだけあって法律も正しく理解しているし頭ごなしに否定することもない。
どっかの誰かさんとは大違いだ。
リリアとルルア、セリーナは俺の専属メイドになったわけだが、メイドとしての仕事をすることはあまりない。
と言っても、元々性格や容姿が気に入り、俺のハーレムに加えるべく連れてきたので専属メイドというのは常に俺の側に置いておくための口実だ。
なので基本的には俺の側に侍ったり、それぞれ好きなことをして過ごしている。
リリアは自分の『回復』の聖女の力を俺のために生かそうとしているらしく、1人の時は聖女に関する本や魔法に関する本をよく読んでいる。
最近では屋敷のメイドや執事達の怪我や病気を治すことで実践も行なっているようだ。
だが、執事達に魔法を使う時はできるだけ触れないようにしているので、理由を聞いてみたところ
「私は旦那様のものですから。他の男性の方にはできるだけ触れないようにしているんです」
と答えた。
なかなかに俺の中の独占欲を満たしてくれる言葉だったのでお礼に深い方のキスをしてやった。
普段は積極的で動きが止まることがないのに、珍しく顔を赤くして固まっていた。
ルルアは姉のリリアとは対照的に己の力を高めるために様々な鍛錬を行なっており、奴隷オークションの時に行っていた通り、無力なままの自分を変えるために積極的に取り組んでいる。
俺も同じく奴隷オークションの時の言葉通りルルアが鍛錬を行うのを手伝っている。
主に鍛錬メニューの決定や細かい癖の矯正、模擬戦の相手などを行なっている。
ルルアはそれ以外にも自分でできることは自主的に行なっており、その甲斐あってかたったの一ヶ月と言う期間でヒーヴィル公爵家の騎士と同レベルの実力を手に入れていた。
ヒーヴィル公爵家に限らず公爵家の騎士は皆騎士の中でも上位の実力を持つ。
その騎士と同等の実力を一ヶ月で身につけたのだからルルアの努力とやる気は凄まじいものである。
だが、この実力の上がり方は常人では考えられないものだ。
原作にルルアという名前は無かったはずだが、一応注意はしておこう。
そして鍛錬に励む一方で、訓練の時間が長くなることで俺に対して師や教官といった態度で接することが多くなっていたためか、俺に対して女としてどうアピールすべきか悩んでいるところをよく目にする。
この前も姉のリリアに相談しているところを見かけた。
「姉さん‥‥‥私、レイス様にどうやってアピールしたらいいのかな?最近はなんていうか‥‥先生みたいな感じで接することが多かったから‥‥‥。どうしたらいいのかよくわからなくなっちゃって‥‥‥‥」
「そうなんですね。大丈夫ですよ。私がちゃんと教えてあげますから」
「ありがとう、姉さん。それでどうすればいいの?」
「旦那様に女としてアピールするのに一番いい方法は‥‥‥‥」
「方法は‥‥‥‥?」
「押し倒すことです」
リリアが満面の笑みを浮かべて言った。
「ええっ!?」
「旦那様も男性ですからこれ以上のアピールはありませんし、一度コトに至ってしまえば今以上に愛してくれるようになります。大丈夫です。ルルアが押し倒す時は私も一緒にやりますから」
「ちょ、ちょっと姉さん!?」
その後も色々話していたようだったが俺が聞いたのはここまでだ。
この時の会話でリリアが思っていたよりも肉食系であることがわかった。
これまでそれらしい部分があったがここまでとは‥‥‥‥。
しばらくは警戒しておくことにした。
そして最後にセリーナだが、コイツがこの一ヶ月で一番変わった。
いや、変わったではなく、さらに俺の望み通りなったというべきか。
だがたとえ吸血鬼であっても一ヶ月で容姿が劇的に変わることはない。
だったら何が変わったのかと言えばーー
「あら?今日の鍛錬はもう終わったの?」
口調だ。
最初の頃は抱いていたイメージと真逆の丁寧な敬語だったが、この一ヶ月俺と行動を共にすることが多くなって俺の好み、そして望みがよりわかったのだろう。
最近では本人曰く素の口調で話している。
それでもリリアとルルア、レヴィアナや俺以外の人間がいるところでは以前のような丁寧な言葉で話している。
そのおかげか屋敷内でのセリーナの評価はなかなかに高いのだが、周りの人間には俺の専属メイドであるということしか伝えていないため若い男の使用人がセリーナに不埒な視線を向けているのを度々目撃する。
不愉快極まりないが若い男の使用人が全員いなくなると滞る仕事があるので今は放置している。
もちろん手を出そうとしたら存在を消してやる。
そんなことを考えつつ扉を閉めてセリーナが座っているソファーに腰掛ける。
「私の質問は無視かしら?」
「言わなくてもわかるだろう」
「それもそうね」
そう言ってセリーナは俺が差し出した腕に自らの牙を突き立て血を啜る。
これもこの一ヶ月で変わったというか、行うようになったことだ。
吸血鬼はその名の通り血を吸うことができる。
その行為にはいくつかの意味があるが今の吸血には親愛の意味がある。
まあ、それなりに関係が進んだと言うことだ。
まだ俺の女というところまでいっていないが。
それにしても‥‥‥‥
「ちうちう‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
可愛いな。
セリーナは普段は大人っぽい印象を抱くのだが、吸血を行うときだけは物凄く幼い印象を受ける。
このギャップが凄まじく、ついつい見つめてしまう。
俺の腕から血を吸うセリーナを見ているとコンコンコンと部屋の扉が三度ノックされた。
「んっ‥‥‥」
セリーナも俺の腕から口を離してしまう。
誰だ。
俺の至福の時間を邪魔したのは。
とりあえず、許可を出す。
「入れ」
「失礼しま、すっ!?」
苛立ちのせいで魔力が溢れ出てしまった
部屋に入ってきたメイドがビクリと体を震わせた。
「何用だ」
「は、はい。と、当主様がお呼びです。お話があると」
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