炎と氷とグリセリン その2

 こめかみに青筋を立てるパーティーリーダーでエルフの魔法使いの前で正座させられる馬鹿三人。耳年増僧侶と俺(アタッカー)とバカ戦士(楯持ち)


「あのね、仲良くするだけが仲間じゃないのは解るのさ」

 エルフの魔法使いことギルマークが、こめかみを押さえながら呟く。


「時には、争うことも良い。からかい合うのだってスパイスだ。でもね」ギルマークはこちらを見て、吐き捨てる様に言った。


「命のやり取りになる様なケンカしてんじゃねぇよ!!」


 ヤバイな、ギルマーク本気オコだ。


 少し、大人しくした方がよさそ……。


「あの程度なぞ、お遊びだ。チャンバラごっこと何も変わらない。」止めとけウィル、本気で怒ってる時に、茶化すなよー。


「あの程度で怪我するんですか?リリびっくりです!!」頬を押さえ、首をコテンと可愛らしくかしげ、ニッコリと笑いながらイラつく事を言いやがる、この耳年増僧侶。


 俺は、こんな奴らとは人として格が違うからな、挑発には乗らない。


「まぁそのザコタンクと耳年増が余計な事を言わなきゃ俺は借りてきた子犬の様に静かにしてるけどな 」


「そうね、キャンキャン怖いよーって震えて静かにしてるのでしょうね?」


「はっ野良犬野郎」


 おい、流れる様に嫌み言いやがって、何でこんなにヘイト集めるのが上手いんだ?


「お前らレッドドラゴンのヘイトでも集めてブレスで燃えて消えろや」


「あらー、日焼けしたら困りますねー、アーク背中にオイル塗って頂けますか?犬だからってナメるのは止めて下さいね」


「はっ、なめ犬野郎」


「お前ら、少し付き合えや世間の厳しさ教えてやる!!」


 俺は背中の剣を手に立ち上がる。


「誰が耳年増ですか!!この清廉潔白なタイニー可愛らしい聖女に向かって!!そこの、がに股野郎よりましでしょ?」


 ウィル達タンクは敵の攻撃を防ぐ為に足は大地に向かって踏ん張る様なポーズをとる。


 がに股野郎はタンクの差別用語だ。


「何だとタイニー見習い聖女、んでもってブス」ウィルが剣と楯を持って立ち上がった。リリに向かって強烈な一言を放ちながら、


「ウィ~ル~見習いは良いです見習いは、でも最後のは何ですか?」


「ブーース」

 便乗して言った俺の目の前に鎖に繋がった鉄球がめり込んだ。


 リリのセカンドウェポンモーニングスターだ。


「お前ら、いい加減にしろよー!!」


 ギルマークが少し可愛そうに思えた。


「いい加減にしねぇ(しません!! )!!こいつらぶち殺(します)す!!」三人とも、獲物を手に臨戦体勢だ。


 俺達が、一触即発になっている時、俺達が歩いていた街道の北側から大きな砂煙が見える。


「何だ?バカがスッ転んだ土煙か?」


「あっ?そのバカは楯持ってただろ?

 」


 俺とウィルは砂煙を無視して、にらみ合っている。


「リーダー遠目の魔法」


「おいリリ、なにがリーダーだよ」こめかみに青筋を立てながら、ギルマークは魔法を唱えた。


「ちっ、ゴブリン多数、豚顔一匹、騎士っぽいのが馬車を守りながらこっちに来る、まずいな」


 ギルマークがため息をつきながら、敵の数を数えている。

「まずくは無いだろ?鴨ネギだな」


「確かに、いらっしゃいな感じですね」


「豚顔かよ、オークじゃなくてどこぞの豚面の人間って落ちじゃ、ねぇだろうな?」


「えっ?アークやウィル似の?」


「お前似のだよ!!豚女!!」

「豚似はお前だリリファーズ!!」


 俺とウィルの口撃を同時に食らって、少したじろく耳年増。


 まぁうちのパーティー顔面偏差値だけで言えばかなり高い。


 ギルド人気ランキングでも、いつも一位二位を争う俺とウィル、美形エルフのギルマーク、そして超異世界美少女シンデレラ(自称)のリリファーズ。と顔だけ見れば、どこぞの王子様、お姫様が腰を抜かす程の美形集団。


 顔だけ見ればね。


 俺達は、皆強くて、タフで、我が強い。


 まぁリーダーのギルマークにいつも胃に穴を開けて泣いて貰っている。


 いつの間にかついたパーティー名は取り扱い注意be careful


 聞いた瞬間、全員で笑った。


 本当はシーフ系でもう一人仲間が欲しいが誰も来やしないんだよな。


 まぁ、そんな事言ってもしょうがない。


 俺達は、今限りある戦力で強くなる。


 ウィルがふらふらと待ち合い馬車乗り場で馬を誘導するようなおっさんの様に、

「おーい、こっちだぞー」と気がなく手を振っている。


 その声が聞こえてるのか、いないのかは解らないけど、馬車はこちらの方へ走ってくる。ザコ敵のお供を引き連れて。


「よっしゃ、全員行くぜー!!」俺は剣を持って走り出す。


「パーティーリーダー僕だけどね?」


 ギルマークがスタッフを回転させて前方に魔方陣を描く。


『スパイク』


 馬車を追いかけてくるゴブリンの足元に、高さ10センチ強の魔法のトゲが生まれた。

 素足のゴブリン達の足に刺さって、大きな悲鳴をあげながらゴロゴロ転がっている。

 これで半分のゴブリンは、足止めできた。

 これで馬車の方には一切被害が無いのだから恐れ入る。


 ギルマークは、派手な魔法はあまり使わないが、搦め手になる様な細かい魔法を効果的に使うのが、無茶苦茶上手い。


「おっしゃあ!!行くぜー!!」


 俺は肩に担いだバスタードソードを大きく振りかぶって肩口から突っ込む。


 魔法によって崩れたゴブリン達の陣形に突っ込んで、当たるを幸いに剣を分回した。


「バカに仕切られるのがムカつく!!」

 ウィルは、すかさず馬車とゴブリン達の間に入り込み。馬車に近寄ろうとするゴブリンから叩っ切っていく。


 ボスである豚顔オークは、超異世界美少女シンデ(略)が対峙している。


 なぜあいつが?とは思うが俺はザコ殲滅、ウィルは馬車の護衛、まぁ消去法だな。


 三メートル近い巨体の豚顔オークと対峙する超異世界美少女シン(略)。


 身長は百六十センチ前後の彼女が子供に見える位なのだか、巨大な鉄球モーニングスターを振り回す彼女、

「やっぱり、こういう主役っぽい役回りは私の所に来るのよね」

 と、高笑いしている。


 ブゴゥと鼻息荒く手に持つこん棒を振り回すオークにリリファーズは、

「知ってる?毒や病気を癒す魔法が使える者は毒や病気を操る事が出来るのよ」


 超異世界美少女シンデレラは、ニヤリと笑った。














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