薔薇色のナシェリエ

第17話 空っぽ少年は入寮式に出席する

「はじめまして、『金の太陽』寮生たち」


その、少年と青年の狭間のような不思議な魅力のある黄金色の少年は、その金貨のように輝く黄金の瞳で新寮生たちを見渡した。


「私の名前はクラウン・ロードパール、ここ、『金の太陽』寮長だ。そしてこれが······」

「あったことのある人も多いよね、副寮長のフロウライン・シュガーポットって言います。よろしくね」


クラウン・ロードパール寮長は、その瞳と同じ、金塊を溶かし込んだような眩い黄金の髪に、それより更に輝く黄金の冠を頭に乗せ、ロロイユと同じような、当たりを虜にする美貌の持ち主だった。

フロウライン・シュガーポット副寮長は、白紫の髪に紫の瞳。

優しげな微笑みと背中に見える蝶の羽が印象的な美少年。

というか、入寮の際に受付をしていた砂糖の先輩だった。

副寮長だったのか。


「今日、このパーティーは君たちを迎え入れるために開いたもの。どうか楽しんで欲しい」

「なにか分からないことがあったら遠慮なく聞いてね?」

「それでは、そろそろ開始としようか······今日を祝って、乾杯」

「「「「乾杯!!!」」」」


異国の空気漂う寮内、広い空間に集った新寮生と先輩たちは、手に持った杯を天に掲げた。


***


「そう言えば、ここの三つの寮には、寮ごとの特色だけじゃなくて、生徒にも違いがあるらしいよ」


ふと、ロロイユがそう言った。

ロロイユは新寮生の中でもかなり目立っていて、三人で固まって端にいるのに視線を感じる。


「チガイ?それって美味しいのか?」

「······お前ってたまに可愛らしいような子供のような変な言葉遣いをするよね······そうじゃなくて、生徒の気質が違うらしいよってこと」

「ふぅん、どういうこと?」

「ボクって、自分は多分『銀の月』に行くだろうなって思っていたんだよね」

「なんでだ?」

「『金の太陽』には明るく陽気なものが。『銀の月』は沈黙を好む優美なものたちが。『銅の星』には素朴で純粋なものたちが集まるって言われているからさ」

「沈黙を好む······?」


沈黙という単語と一番かけ離れている気がするロロイユの言葉に首を傾げる。


「······ちょっと?それ、どういう意味合い?」

「······なんでもないよ」

「むぅ、納得できない······とにかく!こんなに美しいボクが優美なものたちが集まる『銀の月』に居ないなんて信じられないでしょう!?」

「────おや、それを言うならぼくもだよ」


胸を張るロロイユの言葉に、急に同意が飛んできた。


「······誰だ?」

「ふふ、御機嫌よう庶民たち!ぼくはナシェリエ・フォン・ローズエラ!!!君たちの学友になる人間さ!!!」


うっるさ。

それがナシェリエ・フォン・ローズエラへの第一印象だった。

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