第10話 空っぽ少年は改造制服を知る
やっと入ることが出来た室内は、やはり開放感を感じる作りだった。
仕切りなどは一切なく、ベッドのつもりか床の上に点在してクッションと布の
······いや、多分ラパンの仕業かな······。
「汚いぞ!どこに荷物を置くんだい?」
「オレはあっち!」
ロロイユの不愉快げな声に元気よく答えたラパンが指さしたのは、広い室内の奥の奥、隅っこ。
そこには確かに運び込んだであろう荷物の山が鎮座していた。
重苦しくため息をついたロロイユがおもむろにジャケットを脱ぎ始める。
······あ。
「ロロイユ様、それっていいの?」
「何が?」
きょとんと目を
よくよく見ると制服の所々に工夫点と見られる宝石やレースなんかが顔を覗かせている。
翼や尻尾のある亜人なら穴とかあけるけど······うーん、すごい。
「ああ、これ?改造制服って言うんだよ」
かいぞうせいふく。
なんだか強そうな名前でドキドキする。
そして、もしかして、とラパンを見た。
ジャケットとタイは元から存在しないように姿を消し、
そして大きな黒曜石の瞳がきょとんとこちらを見た。
「いや、ラパンは違うからね?」
「あ、そうなの?」
違かったらしい。
「ラパン、お前ブレザーとタイは?」
「さあ?」
「さあ、じゃないよ!お探し!」
「えー······」
ラパンが嫌そうに動き始める。
それを他所に、僕もまた、荷物をまとめるため動き出した。
「えっ、こんなところに座椅子が埋もれてる······」
うん、時間がかかりそうだ。
***
「こんなものかな?」
「結構片付いたね」
「だなー!」
「ほとんどお前のせいだからな!?」
「ロロイユ様、どーどー」
ロロイユの髪は、今はアレキサンドライトと同じ色に染まっている。
そんな髪が天を着くように
ラパンは一歩動くごとに仕事を増やすとんでもない奴だった。
おかげでものが散らかっては片付けそれを更に蹴飛ばされ片付けの繰り返し。
最終的に柱に縛り付けることになった。
そして結局ラパンの荷物も僕とロロイユが片付けて、やっと寮部屋は綺麗になった。
「······結構広い、ね?」
「ああ······にしても、壁がないのは結構痛いね」
ぼそっと呟いた独り言にロロイユが反応する。
うん、確かに仕切りがないから生活が丸見えだ。
でも既にせっかくの改造制服を脱ぎ捨てて農家の息子みたいなスタイルをしているロロイユが言えることでは無いと思う。
「······なんか思った?」
「ううん、なんでもない」
「······感情の起伏が少ないと分かりにくいなぁ······」
まあ、これが僕だから。
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