第8話 空っぽ少年は友人を得る
地面に寂しく置いてきぼりの重たい荷物を両手を駆使して持ち上げる。
さっさと行ってしまおう、闘士歩き始めた時だった。
「っ、待って!」
「······え?」
くい、と制服の裾を引っ張ってきたのは、宝石色の髪を今はスフェーンの色彩に染める琥珀色の瞳の少年だった。
つまりロロイユ。
「どうしたの?」
「あ······このロロイユ様が、い、一緒に行ってあげないこともないけどっ?」
「え······?」
なんでだろ、と首を傾げたらその事が伝わったのか、もそもそ喋り始める。
「君は······ボクの話を聞いてくれただろう」
「うん······?まあ、そうするべきだと思って······あれでダメなら暴力に訴えてたけど」
「そっ、そうか!······ちょっと待ってろ、荷物を取りに行ってくる」
「はぁ······」
いや、フィネルはいいの?
あっちで赤くなって青筋浮いてるけど。
ロロイユはフィネルの傍らに置いてあった自分の荷物を持つとさっさとこちらに歩いてきた。
「さあ!行こうか!」
「う、うん······?」
あ、ガーネットになった······。
何故か満面の笑みのロロイユに指先で引っ張られズルズルと引きずられていく。あーれー。
遠くでぽつんと突っ立っているフィネルが、なんだかすごく寂しげだった。
***
「いやぁ、まさか部屋が同じとはね、運命かな?」
「まあ、三人部屋だし、誰となってもおかしくはないんじゃ······ブベッ」
「気分の下がること言うんじゃないよ!」
どうやら同じ部屋だったらしいロロイユと二人で開放的な広い廊下を歩く。
「にしても直射日光が酷いな······日焼け止め塗らないと、窓がないから虫も入ってきそうだ」
「あ、虫除けスプレー持ってるよ」
「ボクもだ、それよりもっと直接的な対応策を考えねば······」
「寮の説明に虫除けのシールドが貼ってあって空調も自由って書いてあるよ?」
「むぅ?そうなのか、じゃあ安心だな」
「でも日光は防げないって」
「ダメじゃないか!!!」
悲鳴に近い声を上げて真っ青になったロロイユはブツブツとなにか呟き始める。
うーん······綺麗だけど変な子だなぁ。
ふと見上げた天井に緻密な文様が広がっていて思わず嘆息する。
けれどもすぐに感動は引いたのでもう一度パンフレットを見た。
······ふむふむ、あの文様はこの寮全体を覆うシールドの魔法陣の一部なのか。
なんだか旅行気分でアレコレ見ていると、唐突にロロイユが振り返った。
「───てことなんだけど、エヴァンはどれがいい?」
「えっ、僕?」
なんかさっきから日除け対策についての話してるなぁとは思ってたけど。
まさか聞かれるとは······。
ほそんな思いが顔に出てたのか、ロロイユはムスッと頬をふくらませた。
「聞いてはいけないのかい?君は今日から同じ空間で暮らす友人だろう?」
「え、友人?」
「は?違うとでも?」
ロロイユの言葉に虚をつかれたが、よく良く考えれば別にロロイユが友人でもなんの障害もない。
それに近くにいれば色を変えるきっかけをつかめるかもしれない。
そんな考えを抱きながら、けれどもすぐに霧散していったので、僕は特に何も考えずに「そうだね」と返した。
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