エピローグ

「一緒にいてほしい――」


 瞬間、スイカの種が私の頬を掠め、私は反射的に目をつむった。

 重いものが地面にぶつかるような鈍い音。瞼が震えて目が開かない。

 だが、おかしい。五感が優れている天使だから分かる。この臭いは、この音は、この感触は……


「え」


 理解しようとする脳を妨げるように嗚咽がこみ上げてくる。

 どうなった、どうして、まさか、彼は、つかさは……


「つか――」


 目を開く。

 スイカの果肉が飛び散った小道、途端に耳鳴りがする。その現実を否定するように。

 うす暗い月光に照らされる、目の前に倒れたそれは


「……」


 首のない、つかさ。


「ね、ねぇ……いや、まさか、そんな」


 びっくりして抱きかかえていたビニール袋を置こうとして、気づく。



 首のないつかさ



 破壊されたすいか



 気持ちの悪い感触



 わたしはいま、なにをかかえているの


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悪魔の告げる余命宣告 和翔/kazuto @kazuto777

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