使えた真心

 時間は七時。太陽の沈んだ黒い空に一つの感情を覚える。

 薄暗い小さな小道を天使と二人で歩いている。少しでも早く家に帰るための近道だ。

 隣を見ると、天使がスイカの入ったビニール袋を抱えていた。大きなスイカのせいで表情が読みにくいがそれでも分かる。天使は楽しそうだった。


「今日は振り回してしまったな」

「きに、するな。たのしかったぞ」


 そう言うと天使は俺の方を見て小さく微笑んだ。

 そんな天使を見ていると自然と癒される気がした。心が落ち着き気が楽になる。

 そして、無意識にため息をつく。


「まだまだこれからだけどな」

「……うんっ」


 帰ったら花火をする予定なのだ。

 前までなら、花火なんてただの金の無駄遣いだろうと愚痴をこぼしていただろうが今は違う。天使と見る花火以上に美しいものは無いだろう。

 花火は一番大きいものを買った。ライターも三つ買った。危惧することは何もない。

 明日の予定も決めた。明日は少し遠くの海に行くのだ。大きい浮き輪も買ったので安心して楽しむことができるだろう。

 それのせいで重い荷物を抱えることとなったが明日のことを考えればその辛さも消えていく。俺の心は今、有頂天だったのだ。


「本当、ありがとう」

「ど、どうした? 急に改まって」

「ううん……言いたく、なっただけ」


 天使は急に立ち止まると小さな声で話し始めた。


「わたし、ずっとなにが楽しいのか、わからなかった……家でねて、こっちにきて、人が死んでく所をみて、そしてかえって、寝て……」


 天使は俯くと大きくため息をついた。


「生きてた時も、早くに死んで、ずっと寂しかった、悲しかった」


「けど、つかさのおかげですごく楽しくなった、この気持ちが大切なんだって気が付いた」


「だから、つかさ……わたしと、死ぬまで……死ぬ時まで」


「一緒にいてほしい――」

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