008 不良さん、差別発言で揉める
声に反応して振り返ってみると、そこには2人の姿が……なのは良いんだけどよぉ。
おいおい、イキナリ、人の面見て『なんで?』はネェだろ有野。
オマエ、失礼にも程ってもんがあんぞ。
それによぉ。
なんでチビでナヨナヨした通称『オカマ』の有野と、中学校一の太鼓持ちで有名な山中が、つるんで此処に来んだよ。
オマエ等一般人は、学校サボってねぇで勉強でもしてろ勉強でも。
ってかよぉ。
折角、一般家庭に生まれたんだからよぉ。
普通に学校に行って勉強しねぇなんて、意味わかんねぇわ。
それとよぉ。
もぅ一点だけ言って置きてぇんだけどよぉ。
有野、オマエさぁ……同級生に『さん付け』はねぇだろ『さん付け』はよぉ!!
「おぉ、遅かったな」
はぁ?崇秀の野郎。
この状態で2人と普通に話って事は、此処で、この2人と待ち合わせしてたって事か?
なんだ、どういう事だ?
今からコンパに行くのに、コイツ等と待ち合わせって、どういうこったよ?
「オイ、馬鹿秀、こいつはまた、どういうこった?」
「あのなぁ、そんなもん、人に聞く前に少しは自分から察しろや、ボケ。このコンパはな。元々有野と山中の為に組んだものなんだよ……んでオマエは、さっき逢ったばっかりだから、グリコのオマケだオマケ。オマエ、自分の立場が解ってるか?」
「あぁそう言う事な……しかしまぁ、それにして『太鼓持ちの山中』は、合コンでも戦力になるんだろうが……なんでまた『オカマの有野』まで来てんだ?」
「倉津さん。ぼっ、僕、オカマじゃないよ」
「オイオイ、誰が太鼓持ちやねん!!」
声変わりしてない女みたいな甲高い声で、反論の異を唱える。
そんな声で話を中断させたのは、言うまでもないだろうがオカマの有野だ。
しかしまぁ、いつ見ても、コイツは女みてぇな奴だな。
おまえさぁ、性別を間違って生まれてきたんじゃねぇの?
「オイオイ、倉津、あんま酷い事を言ってやるなよ」
「オカマって発言の事か?だとしたら、何言ってやがんだ?そんなもん、どう見たって、ただの事実だろ事実」
「チョ待て、ひょっとして俺は……無視か?」
「そうかぁ?……まぁそう言われれば、そうかもしれんが、少し違うんじゃねぇか」
「なにがだよ?」
「オイ、オマエ等、本気で俺はスルーか?信じられへん」
「あのなぁ、最近じゃあ、有野みたいな奴の事を中性的って言うんだぞ」
「なんだそりゃ。そんなもん言い方を変えてるだけで、結局は、ただのオカマじゃねぇか」
「……もぉえぇわ」
そんなもん『オカマ』を『中性的』って言い変えただけで、本質は何も変わっちゃいネェ。
要は、その中世的って奴も、ナヨナヨした奴の事を指して言うんだろ。
だったら、最終的な意味なんざ、カマじゃねぇかよ。
それにカマの奴、こんな程度で、なに泣きそうになってんだよ?
そう言うところが、カマだって言われる所以だちゅう~んの。
あぁ序に言っとくが、山中は、本人が言った通り無視だ。
現時点で奴を相手にする気はない。
「チッ、ちょっとは、そう言われた有野の気持ちも考えてやれつぅの。このヤクザのド腐れ息子が」
「なっ!!なんだとテメェ」
「ほらな。オマエだって、そんな風に言われたら嫌だろ」
「チッ」
確かに、これは嫌だな。
本質的には、事実そうなんだが。
本質なだけに、言われて気分の良いものではない。
あぁそう言う事な。
崇秀の言いてぇ事は解った。
【人間、自分ではどうにもならねぇ事実を突きつけられるのが一番辛い】って言いたいんだな。
なら、この話も納得だ。
だからまぁ、わざわざ謝ったりはしねぇが、俺なりには心の中で反省はしよう。
「オラ、解ったんなら、さっさと有野に謝れ、このボケナス」
だからよぉ。
そんな事ぐれぇでイチイチ謝るかっつぅの。
確かに、俺も少しは悪いとは思ったけどよぉ。
結局、カマっぽく見せてんのは有野本人じゃねぇか。
いくら形(なり)が女っぽくても、別に男らしくしてりゃあ、誰もカマなんて言わねぇつぅのな。
そんなもん、コイツがそうやってんだから、知・る・か!!
「あぁ?んで、俺が、んなツマンネェ事ぐらいで謝んなきゃいけねぇんだよ?良いじゃねぇか、別によぉ」
「テメェは、まだわかんねぇのか?」
「あぁ?」
オイオイ崇秀、オマエは、何をそんなガン垂れてまで怒ってんだ?
「オイ、俺は、有野に謝れつってんだよ」
「アホらしい。誰が謝るかよ。そんなもん知・る・か、つぅ~~~んだよ」
「あぁ?テメェよぉ、あんま調子ぶっこいてっと……マジでブッ殺すぞ」
「んだとコラ!!」
「その腐り切った脳味噌。ショッカーの戦闘員みたいになんでも命令を実行するように改良してやろうか?って、聞いてやってんだよ」
「あぁ?なんだなんだ?糞クダンネェ事でムキになりやがってよぉ。事実は事実だ。何も変わんねぇんだよ、ボケ。そんな事実の為だけに誰が謝るかつぅ~~~の」
「オイコラ。チーズみてぇにトロトロに解けたテメェの糞脳味噌でも解る様に、もう一回だけ、ゆっくり言ってやんよ。あ・や・ま・れ」
あぁメンドクセェ。
コイツは言い出したら、絶対に後には引かねぇ。
だがなぁ、俺も男だ。
一度言葉で吐いた以上、絶対、後には引けネェな。
だからテメェの意見なんざ聞く気はネェ。
死んでも聞かねぇからな!!
「オイコラ、てめぇ、正義の味方面してカッコ付けも程々にしとけや、真糞野郎。正義の味方ゴッコがしてぇんなら、その辺の幼稚園児とでもやっとけや。ほらほら、その辺のガキ共が楽しそうにやってんじゃねぇか」
「ケッ!!ロダンも知らねぇ幼稚園児並の知能しかねぇテメェが、それを言うなんざ、お笑い種だな。テメェこそ近所のガキ共に遊んで貰ってんのが、お似合いなんじゃネェのか?……まぁテメェの知能指数じゃガキにも劣るから、相手にされねぇか。悪ぃ悪ぃ」
「んだとテメェ!!ブッ殺されてぇのか!!」
ったく、不毛な喧嘩だよな。
脳味噌の中じゃ、一応この状況は理解してんだがな。
体が、俺の意思に反して、勝手に動いてしまうのが不良の運命。
俺はいつの間にか、本能的に馬鹿の胸元に両手を置いて、思い切り捻り上げていた。
しかしまぁ、なんだな。
2人して、何をムキになってんだかな。
こう考えた瞬間、俺はある事を思い出した。
馬鹿秀は、普段は、あまり怒ったりしないんだが、事こう言う差別的な発言に関しては、矢鱈ウルサイと言うか、直ぐにムキになる。
まぁ本質的に、差別的な事が嫌いなんだろうな。
……って事はだ。
終わらねぇな、この喧嘩。
つぅ~~~かよぉ、他のお2人さん。
ぼぉ~っと見てねぇで、ドッチか止めろよな。
此処、罷り也にも繁華街のド真ん中だぞ。
「やめなよ、2人共。喧嘩なんかしちゃダメだよ」
「あぁ?」
漸く、俺の心中を察したのか、有野が、俺達の間に体を入れて止めようとする。
ほぉ……俺と、崇秀の喧嘩の中に入ってくるなんざ、中々良い度胸してやがんじゃねぇか。
ただのオカマかと思って侮っていたが、結構やるな。
……にしてもだな有野、その止め方どうよ?
自分の体を入れた止め方は、さっきも言った様に勇気がある行動だ。
これはマジで賞賛に値する。
だが、その止めに入った台詞が頂けネェ。
それじゃあマンガに出てくるヒロインの止め台詞。
完全に女言葉じゃねぇか。
それ、なんか違わねぇか?
「僕がナヨナヨしてるからいけないんでしょ。僕も、もぅ少し男らしくする様に努力するから、喧嘩なんて辞めなよ」
「あぁ?うっせぇなぁ」
うぉ!!ここが分水嶺だとはわかってはいたのに、不良の本能のせいで引き際を潰してしまった。
ヤベッ、これ、どうすっかな?
「引き際は肝心やで、マコ。今引けへんかったら後悔すんで」
今度は、山中が止めに入った。
よし、なら、今度は外さねぇぞ。
「……っだ、そうだ」
っとまぁ、俺が先に口を開くより、崇秀が先にクールダウン。
まるで何もなかった様な顔をしながら、ニヤニヤして俺を見てやがる。
キッ、キタネェぞ、オマエ!!
これじゃあ、誰がどう見ても、俺だけが完全に悪者じゃねぇかよぉ!!
畜生!!ガッデム!!
「チッ」
「素直なこったな」
「何言とんねん秀(シュウ)。素直なんはええこちゃで。これから遊びに行くちゅう~のに、街中で喧嘩祭りをするなんざ、アホのする事や。喧嘩はアカンで喧嘩は。マコもそう思うやろ?」
「うっせぇよ、山中」
「まぁそう言うこって、先方さんもお待ちな訳だ。そろそろ行きますか?」
「ったくよぉ」
崇秀と喧嘩すると。
こうやって、いつも有耶無耶な感じで、結局は、何も無かった様な感じになるんだよな。
それでもって、案外問題も起きない……なんだこりゃ?
まぁそうは言っても、ツマラネェ諍いを起こしたまま遊びにも行けねぇから……これで良いのか?
ひょっとして俺、コイツ等に騙されてる?
「ところでよぉ、崇秀。今日、どんな奴が来るんだ?」
「んだよ、気付いてねぇのか?」
「はぁ?」
「……そこに来てんじゃん。なぁ千尋」
「はぁ?千尋だと……」
千尋?……千尋って、オイ!!
一昨年、ウチの中学卒業した樫田千尋の事かよ。
俺にとっては記念すべき人生初のコンパなのに、なんでコイツが!!
嫌だぁ~~~~!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
はい、最後までお読みくださって、ありがとうございました<(_ _)>
まぁ今回は、特にどうと言う話ではないんですが。
「相手が傷つく様な事は言っちゃいけない」ってぐらいの話ですかね。
そして、引き際を誤ると、ネタにされてしまうって事ですね(笑)
って事で、続けて投稿頑張ります(*'ω'*)ノ
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