004 不良さん、謎のロダンに迫る

「ちょっと待てや、馬鹿秀。ロダンってなんだよ?ロダンって?」


話が逸れる事は解っているんだが。

今の話に出て来た『ロダン』って誰だよ?


それが妙に気になった俺は、カツアゲ運用法の話をそっちのけにして、それを尋ねてみた。



「オイオイ、馬鹿キング、それ、マジで言ってのか?」

「あぁ」

「こいつマジかよ……中学生にも成って、ロダンも知らねぇなんざ、呆れた無知っぷりだな」

「オイコラ!!誰が無知で馬鹿キングだ!!つぅか、良いか、糞秀?普通の中学生は、そんなロダンだとか言う奴の事なんぞ、誰も知らねぇの。物知り博士気取ってんじゃねぇぞ」

「オマエさぁ……本気でそう思ってるなら、早急に、幼稚園からやり直した方が身の為だぞ。きょうび、その辺の鼻垂らして遊んでるガキでも知ってる知識だぞ。情けねぇ野郎だなぁ」

「んな訳ねぇだろ。俺程の天才が知らねぇもんを、ガキが知ってる訳ねぇだろが」

「あっそ。そりゃあ、余りにも哀れな天才だな」

「テメェはよぉ……じゃあ、なんなんだよ。その鼻垂れの糞ガキでも知ってるロダンってのはよぉ?」

「今更、それを説明しろってか?御免被るメ・ン・ド・ク・セェんだよ」

「ははぁん、解ったぞ。オマエ、適当に言ったもんだから、回答に困ってんだな」

「チッ……クダンネェ事を言ってんじゃねぇよ。テメェと一緒にすんな」

「じゃあ、教えろよ。知ってるなら、それを自らの口で証明してみせろっての」


いやまぁ一応な。

知らないなら、知らないと言っても別に良いんだぞ。


下手な見栄は、身を滅ぼすだけだからな。



「メンドクセェなぁ、オマエだけは……」

「面倒臭くねぇから」

「あぁっそ。じゃあ、敢えて面倒臭いが言うけどよぉ。フランソワ=オーギュスト=ルネ・ロダン。世界的にも有名な彫刻家だ。まぁ、そうだなぁ~~~。馬鹿でも解る様に例えるならダンテ・アリギエーリが書いた『神曲・地獄編』に登場した『地獄の門』をモチーフにした作品なんかが、その代表格だな……どうだ、これなら解っただろ?」


だれ?



「しらね。誰だよ、それ」


マジで誰だよ、それ?

んな奴、見た事も、聞いた事もねぇ奴だぞ。


フランケンシュタイン=オーギリ・シテマッセ・ロダンだっけか?

マジで全然しらねぇわ。


つぅか、大体にしてだなぁ。

そんな小難しい名前のマイナーな外人を、ガキなんかが知ってる訳がないだろ。


ならコイツは、自分の知識をひけらがして自慢してやがるだけだな。


ホント嫌味な野郎だ。



「知らねぇって、オマエなぁ……あぁじゃあ、ちょっとマイナーだけど、もう一点、有名な作品があるぞ」

「はいはい。どうせ、またなんか訳の解らん事を言うつもりだろ」

「あぁ、確かに地獄の門に比べたらマイナーな作品かもしれんな。なんせ、日本にある様なマイナーな作品だからな」

「おっ!!なんだよ。日本に在るなら知ってるかもしんねぇべや」

「是非、そう願うわ。あぁ因みにだがな。その作品は、京都国立博物館にあんだけどな」


やべっ。

大見え切ったのは良いけど、だったら、多分、解んねぇんな。

俺、そんな所、なにがあっても、絶対に行かねぇからよぉ。


京都国立博物館と聞いて分かった事があるとするならば、京都にある事ぐらいだぞ。



「あっ……あぁ、京都国立博物館な……そっ、そこなら、けっ、結構、日本人ならよく行くよな」

「ほぉ、そいつは良かった。なら、多分、知ってるんじゃねぇか?」

「あっ、あぁ、多分な多分」


イヤイヤ知らねぇって……

それ以前に、んなとこ、行った事もねぇもんよ。


けどよぉ……仮にそうだとしても、なんか、このまま馬鹿にされんのも嫌だしなぁ。

取り敢えず、答えを聞いて、速攻で答えて『知ったか』しとくか。


それで今回は、なんとか誤魔化せるだろう。



「『考える人』……知ってるか?」

「おぉ知ってる、知ってる『考える人』だろ。有名だよな『考える人』……ってオイ!!」

「なんだよ?」

「それを先に言えよ。『考える人』なら、俺だって知ってるぞ」

「あっそ、悪ぃな。世界的に有名なのは『地獄の門』だからな。つい、先にそっちを言っちまった」


絶対に嘘だな。

コイツは、わざと小難しい方の作品を言って、俺を馬鹿にしてやがるだけに違いない。


コイツは、昔からそう言う奴だ。

直ぐに、人をからかって愉しみやがる。

本当の性悪って言うのは、コイツみたいな奴の事を言うんだ。


くっそ~、憶えとけよ。



「ヘイヘイ、そうですか。有名ッスね『地獄の門』」

「んだよ。オマエが説明しろって言ったから、わざわざ説明してやったんだろうに」

「あぁそうだ、そうだ。俺が悪かった。なにもかも全部俺が悪かったよ」

「そうだな。確かに、こんな事すらも知らないオマエが、明らかに悪いな」


フォロー無しかよ……



「チッ……それはそうと、なんで俺がロクデモナイ事を考えてたって解ったんだよ?」

「あのなぁ、倉津、いい加減にしてくれよ。カツアゲなんぞをしてモノを考えてる奴が、世の中に役立つ事を考えてると思うか?普通は思わねぇだろ……もし考えてるとしたら、何を買うかって事ぐらいだ」

「まぁな」

「その様子だと、買う物を考えてたら、変な方向に想いが行ったってところだな」

「あっ……あぁ、まぁな」

「んで?結局、何を思いついたんだ?」

「んっ?……なんだよ、わかんねぇのか?」

「あのなぁ、俺はエスパーじゃねぇぞ。そこまで明確に解るか、そんなもん」


そう……なのか?

俺はテッキリ、オマエの事だから、何でもかんでも、お見通しのエスパーだと思ってたぞ。


意外とそうでもないんだな。



「ほぉ……じゃあ、俺の考えには至らなかったって事か?」

「まぁよ」

「聞きたいか?」

「聞きたい様な、聞きたくない様な……」

「まぁ聞けよ。すげぇ発見だからよ」

「はぁ……聞かにゃあならんのだろうな」


ヒヒヒッ、なんだかんだ言っても、本当は聞きたいんだろ。


俺は長い付き合いだから、お前の性格はよく知ってんだぞ。

『知らなくて良い』なんて言うアヤフヤな言葉は、テメェには存在しねぇよ。


……ッたく、しょうがねぇ奴だな、オマエわ。

素直じゃないオマエには、親切極まりない俺様が、ちゃんと教えてやるよ。



「まぁそう言わずに聞けよ」

「はぁ~」


そうやって俺は、崇秀に、俺の思考の行き着いた顛末を話し始めた。


***


「……っと言う訳だ。どうだ感心したか?」

「なるほどなぁ。そりゃあ、思っていた以上に、よく考え込まれてるな。……基本的な着眼点は悪くはないな」


おっ。

絶対、馬鹿にされると思っていたのに、意外に反応良いな。



「ただなぁ」

「なんだよ」

「多分、それ……あんま上手く行かねぇぞ」

「はぁ?なっ、なんでだよ?」

「いやな。俺が思うに、その金って、絶対に貯まらねぇと思うんだよな」

「そうか?俺は、そうは思わねぇけどなぁ」


いや、貯まるだろ。


だってよぉ。

『カツアゲ』→『銀行』→『貯金』の3つの行動を繰り返すだけで、あっと言う間に大金持ち。

こんな事、カツアゲ出来る奴だったら、誰だって出来るだろし、思いついたらやるだろ。


俗に言う、お気楽貯蓄法だ。



「まぁ、そう思うなら試しにやってみろよ。多分、10万も貯まらねぇ内にアッサリ終了しちまうからよ」

「なんだよ。やけに断言するんだな」

「まぁな」

「なんでだよ?なんか根拠でもあんのか?」

「根拠つぅか。お前さぁ……自分の性格把握してるか?」


俺の性格だと?


なんのこっちゃ?



「はぁ?自分の性格ぐらい、十分に解ってるつもりだが」

「まぁそれなら、何がダメなのかぐらい、直ぐに解りそうなもんだがな」

「なんだよ」

「お前さぁ。自分が酷い飽き性だって事を忘れてないか?」

「あぁ~」


あぁ……確かに俺は、興味がある事ならまだしも、興味が無かったら、直ぐに飽きるな。


って事は何か?

じゃあ、崇秀の言い分が正しいとすれば、あまり金に興味がない俺だと、結論的には貯金が続かないって事か?



「それにだな。最近じゃあ、ネットで、未成年犯罪者の顔も名前も出る。どう考えてもリスクがデカ過ぎんだよ……まぁ着眼点だけは、本当に悪くなかったんだけどな」

「チッ!!なんだよ、なんだよ。世の中そんな簡単には上手くいかねぇって事だな。ツマンネェなぁ」


和製クルーグマンの意外な弱点は、インターネットと、飽き性か。


……しまらねぇなぁ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました(*'ω'*)


意気揚々と崇秀にお気楽貯蓄法を話してみたものの、アッサリ論破されてしまいましたね(笑)

アホですね。


ただ此処で賢明な方なら気付いたとは思うのですが。

この倉津真琴と言う男、実はお金に執着くしてるようで、全然執着はしていないんですよ。


ただ単に、面白い事がないから、カツアゲをしてたんですね。


その面白くない人生を歩んでる理由は後々書いていきますが、そこだけは少し期待してください。

【不良になるのにも、不良になるだけの理由】って物がありますからね。


PS:不快な文章が続くとは思いますが、また良かったら遊びに来てくださいね♪

(*'ω'*)b

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