002 不良さん、更に追い打ちを掛けてカツアゲをする

「オイオイ、にぃちゃん、ちょっと待てや。そりゃねぇんじゃねぇのか?そりゃあ、あんまりってもんだろうがよ」

「まっ、まだ何か」


冗談のつもりで呼び止めてみたんだが。

もぉコイツは……止せば良いのに、本気で立ち止まりたがったよ。


普通こんな場面に遭遇したら、俺の声なんぞ無視してシマウマの如くダッシュすりゃあ、そのまま逃げれるものを……

幾ら俺がクズだとは言っても、そんな残り肉にまで、そこまでの興味はないのよぉ。

別に追い駆けてまで、そんなものまで物を取ろうなんて思ってネェのに、本当に馬鹿だなコイツ。


救いがネェ。


まぁ、立ち止まってしまったもんは仕方がねぇ。

声を掛けちまった以上、コチラもカツアゲを再開するしかねぇはな。



「『まだ何か』じゃねぇだろ?何がもう何も無いだ……まだあんだろ」

「なっ、なにも無いですよ」

「テメェよぉ、あんまおもしれぇ事言ってと、首引き千切って街角に晒すぞ」

「えっ?」

「つぅか、その手に持ってる物はなんなんだ?って聞いてんだよ。そいつも置いてくのが筋ってもんじゃねぇのか?」

「なっ!!こっ、これはダメだ」


一度折れた筈の奴の心が、何故か此処に来て復活。

何をムキになってるのか知らないが、この顔の厳つい学生は、必死になって、その楽器が入った様なケースを抱きしめた。


チッ!!わざわざ俺の声に反応して立ち止まっったくせに、今更、なにケチ臭い事を言ってやがんだよコイツは?


つぅかよぉ。

テメェん家は、どうせ大層な金持ちなんだろ。

家に帰れば、たんまり親の稼いだ泡銭があるんだろうしよ。


無駄口叩かずに、そいつも俺にくれよ。


良いじゃねぇか、それぐらいよぉ。

財布の中身からして、そんなもん買うぐれぇ、どうせテメェにとっちゃ端金なんだろうし。


だから、それもよこせ。



「はぁ~?なんですかぁ~?なに言ってんのか、よく聞こえネェなぁ」

「なっ!!」

「俺はな。『くれ』って言ってんだよな。テメェの意見なんか、コレッポッチも聞いちゃいネェよ。それとも俺が、親切にも、そう聞いてる様にでも見えたのか?」

「ふっ、ふざけんな!!コッ、コイツはなぁ、お前みたいな不良に、早々やれるもんじゃないんだ!!」

「あぁ?んだと?」


こんな状況で、なにを考えてるのかは知らないが、大声で反論。

しかも、カツアゲしてる不良に向かって、ワザワザ『不良扱い』って、なに考えてんだ?


んな事を、事細かに、親切丁寧に解説なんざして貰わなくても、みんな知ってるちゅ~うのな。



「おっ、脅してもダメだぞ!!こっ、これはな、お前みたいな不良が持ってても仕方が無いもんなんだからなぁ」

「んだよそれ?そんな大層なもんなのか?」

「とっ、当然だろ!!こっ、これはな、ZEMAITISのベースだぞ。一体、幾らすると思ってるんだよ!!」


あぁ?ZEMAITISだと?

なんじゃ、それ?聞いた事もねぇな。


どうせ高いと言っても、高々ベース。

ベンベンカ云うだけの糞しょうもねぇ楽器なんだろ。


にしても……ここまで『やらねぇ』と意地張られっと、余計欲しくなるのな。


悪ぃが、そいつは絶対貰うぜぇ。


っと、どこまでも屑な俺。



「そんなもん知・る・か・よ……っで、因みに、そいつは幾らすんだ?教えてくれよ」

「なっ、なら、教えてやるよ。このベースはな。1本100万もするんだぞ」

「はぁ?100万?たった100万か?オイオイ、期待させておいて高々100万程度。その程度の金額で、ちょっとギャアギャアとうるさ過ぎやしないか?」

「なっ!!」

「まぁ良いや。渡したくネェなら、それはそれで結構……けどよぉ、俺は素直に渡した方が身の為だと思うぜぇ」

「だっ、誰がオマエなんかに渡すか!!」

「そうかよ。じゃあよぉ、テメェの財布に入ってたクレジットカードで、ソイツと同じ物を買う事にするわ」

「えっ……」

「……んでよぉ。その後も、カードがパンクするまで金を使ってやるから、そのつもりでいろよ」

「えっ……」


俺を、ただの不良中学生だと思って貰ったら困るな。


良いか、良く聞けボンクラ。

……俺の実家はな。

『倉津組』って言う立派なヤクザ稼業を営んでる、裏家業の名門なんだぞ。


勉強や、健全なスポーツの事なら、いざ知らねぇが。

古今東西、世の中に蔓延ってる悪行のやり方ぐらいなら、一通り知ってんだよ、ボケ。


相手見てモノ言えや。



「さぁ、どうすんだよ、テメェはよ?そのナンチャラってベースくれんのか?くれねぇのか?そろそろハッキリしてくんねぇかな?俺も暇じゃねぇんだよ」

「……」

「オイオイ、黙ってちゃわかんねぇだろうに……あぁ、それと序に言っとくがな。お前のカードで買い物してる間は、ずぅ~~っと俺と仲良くする事に成るからな。俺の買い物が終わるか、若しくは、カードがパンクするまで、絶対逃げられないデス・ゲームの開始だ。……さぁさぁ、どうだよ、実に楽しそうなプランだろ?」


いくら金持ちだからと言っても、まぁ所詮は高校生。

この程度の脅しだけで、十分に心が折れるだろ。


解ったら、さぁよこせ。

つぅか、今度下手に反論したら、マジでカードをパンクさせっからな。


マジで覚悟しろよ。



「……」


無言で、泣きそうな顔をしながら、ベースを俺に渡してきた。


いやぁ~、素直だネェ~。

健全な青少年って言うのは、この青い空の様に、そうやって素直であるべきだぞ。



「なんだよ。結局くれんのか?優しいな、オマエ」

「返せ……その代わりカードを返せ」

「あぁ、良いぜぇ。俺も、そこまで鬼じゃねぇからな」


カードを一旦、相手の目の前にまでやって自分の方に戻す。


この行為に、相手は呆気に取られている。



「やっ、約束が違うじゃないか!!返せ!!」

「ケッ、心配すんなよ。俺も、そこまで屑じゃねぇ。カードは、ちゃんと返してやんよ……ただ一筆書いて貰わねぇと交渉は成立しねぇだけの話だ。『ベースは譲渡します』って奴をよ」


カードパンクの恐ろしさを感じて止まないボンボンは、俺の手渡した『譲渡書』にあっさりサインした。


―――んっ?何でそんなもん持ってるかって?


いや、いついかなる状況になっても困らない様に、親父が常備しとけって言われてたから、持ってたに過ぎないんだが……なんか変か?


心の中で1人、勝手に『譲渡書』を持ってる解説をしてる間に、今度はちゃんと『スタコラサッサ』なんて音が鳴りそうな勢いで、学生は逃げていった。


そうそう、そう言う感性が大事なんだぞ。

危険からは、直ぐに遠ざかる……草食動物の基本だ。

財布や、ベースを全部失ってまで、高い授業料納付したんだから、その分、しっかり『不良回避法』って奴を学ばないと、丸損ってもんだもんな。


やれば出来るじゃねぇか。

オマエは、実に出来の良い教え子だよ。


ただよぉ。

お前、自分のクレジットカード持って行くの忘れてんぞ。


そこは大丈夫か?


ダメじゃね?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

クズのお話にお付き合い頂き、ありがとうございました<(_ _)>


ってか、お前が一番クズだろ( ゚Д゚)=〇))Д`)そうかも!!←茶番。


っとまぁ、そんな茶番は置いておいて、此処で1つ解説しておきたいのですが。

一応【更生物】なので、酷いクズを書かせて頂いております。


なので、読んで不快な思いをされる方がおられました、本当に申し訳ありません。


頑張って更生させますので、良かったら、また遊びに来てくださいね。

(*'ω'*)b

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