第6話
5東の若者
次に天使は東の地にいきました。
そこでは一人の若者がたった一人で生きていました。
天使が「ここにはあなたしかいないのですか?」とたずねると
彼は「そうだよ」と答えました。
若者は毎日一人で何の不満もなく暮らしていたので、天使は不思議に思いしばらく若者を見ていました。
若者は毎日朝起きると、その日一日好きなことをしてすごします。散歩をする日もあれば本を読んですごすこともあります。たまにこった料理をつくっていることもあります。
若者のTiMeはすべて、自分のために使われていました。
そして使われたTiMeは、書き物にかわったり、きれいな庭にかわったり、その他いろいろなものに変わっていき、彼のまわりをいろどっていました。
天使の目には、若者は一人でも十分人生を楽しんでいるように見えました。
けれどある日、若者は机の前で悲しそうに写真をながめていました。
「どうしたのですか?」
天使が声をかけると、若者はめずらしく悲しそうな目をして答えました。
「今日は私の大切な友達が事故にあって死んだ日なんだ。
あの人とはめったに会わなかったんだけど、それでもなぜか心がつながっているような、そんな最高の友達だったんだ…」
そして若者はどうして自分は一人なのかを教えてくれました。
「自分は昔から人と会うのが得意じゃなくて、こうやってずっと一人でくらしているんだ。だから街に住むあの人に会おうと誘われても、ほとんどこたえられず、最後の誘いもことわってしまった…今考えると本当に悪かったと思ってる」
これは天国でよく聞く後悔の一つなので、天使は「ああ、また…」と思いました。
大切な人ともっと同じTiMeを過ごしていれば良かったのに……。
天使はこの後悔を何度も聞いてきました。
彼らは、自分か相手が生きている間はすっかりそのことを忘れているのに、死んでしまった瞬間、きまって思い出すようでした。
天使は若者にやさしく声をかけました。
「あなたの友達はもう死んでしまいました。だから同じTIMEをすごすことはできません。
今あなたは自分のTIMEをすべて自分のために使っていますが、もしよければ、他の…今あなたと同じ時間を生きている人たちといっしょに使ってみてはどうですか?」
「自分はどうも人とつきあうのが苦手で…。
だからあの友達以外とは、正直誰ともつきあいたくないんです」
若者はまた写真のほうを見て答えました。
「わかりました。じゃあ、つきあわなくてもいいですよ。
今のままでだいじょうぶです。
かわりにあなたがTIMEを使って得たものをその人達と共有してはどうでしょう」
「え?どうやって?」
若者はおどろいてたずねました。
つづく。
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