第5話

4西の男性


次に天使は西の地へいきました。

そこではとても忙しそうな男性に出会いました。

彼はとても素敵な時計をつけていて、キレイなスーツを着ていました。

でも目の下にはクマがあり、とても神経質そうにちらちらと時計を見ているのです。

天使は、男性に「何をそんなに急いでいるのですか」とたずねました。

すると男性は舌打ちして、「これから会議なんだ。私のTiMeを奪うな」と怒鳴りました。

天使は驚いて、「私と話す時間もないのか…」とだまってしまいました。


天使はびっくりしたものの、その男性のことが気になって、しばらく彼のあとをつけてみました。


男性のTiMeはたしかに一分のムダもなく多くのものに交換され、増えていました。

彼はいくつも会社をもっていて、たくさんの部下もいました。

彼が命令すると、多くの人がいっせいに動いてくれます。

彼のTiMeはたくさんのものに交換されていきましたが、でも彼はあまり笑いませんでした。

そして使われたTiMeは彼のもとへは帰ってきませんでした。


彼の健康は悪そうでした。

彼の親せきや家族は、彼の悪口ばかり言っていました。

友達もあまりいないようでした。


彼のTiMeが一体何に代わったのか、

それを確かめるのはかんたんでした。

彼の口座には使っても使ってもなくならない金額のお金が入っていました。


それで天使は、彼は多くのTiMeをお金に変えたのだとやっとわかりました。


天使は、お金がTiMeと同じような

何かと交換するためのものだと知っていたので、より不思議に思いました。


だから彼の口座の管理人に、

こんなにお金をためて

彼は一体何と交換しようとしているのかたずねました。


管理人は「きっとまた新しい会社でも買ってうんと稼ぐんじゃないでしょうか。

あの人は生きている間はずっと働いてお金をかせいでいないと生きている心地がしないんですよ」

と笑って答えました。


天使はそれを聞いて理解はできたものの、とても悲しくなりました。


TiMeは何かと交換しなければほんとうの価値を生み出しません。

お金も何かと交換しないと、ずっと交換されるのを待つお金のままです。

けれど彼はお金に交換したあと、何にも交換していませんでした。

それはまるで、ずっといつかの未来のために幸せな週末を先のばしにしているようなものです。


天使は口座の管理人に

もし彼が私と話したくなったら、いつでもそう願うといい。

といってカードをわたしました。

そこには、「TiMeはあなたが望むすべてのものに変わります。けれどもし、あなたが望まない形になったらいつでも祈って知らせてください」と書かれていました。



つづく。

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